<コラム>

 芸能界を引退した成宮寛貴さん。ファンからは多くの嘆き悲しむ声が上がっていますが、直筆で綴られた悲痛なメッセージに「可哀想すぎる……」「アウティングはひどい」「ゆっくり休んでほしい」という反応がほとんどでした。

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■アウティングとは……

 成宮さんは引退発表のコメントの中で「この仕事をする上で人には絶対知られたくないセクシャリティな部分もクローズアップされてしまい」「今後これ以上自分のプライバシーが人の悪意により世間に暴露され続けるとおもうと、自分にはもう耐えられそうにありません」と、極々プライベートなことを友人に暴露されてしまった辛さを綴っています。

 自分の性的指向を、自分の意志に反し他人から暴露されてしまうことを「アウティング」と言います。逆を「カミングアウト」。カミングアウトは自ら公にすることなのでその段階に行き着くまでに様々な心の整理が行われた上でのこと。しかしアウティングはそれら一切ないままに行われるため、時に残酷な結果を招くこともあります。つい最近にはある男子大学生が同級生から周囲にアウティングをされてしまい、気に病んで自殺してしまうという悲しい事件が起きています。他人から性的指向を暴露されるということは、本人にとってどんなことより耐えがたい苦痛を受けることもあるのです。

 成宮さんの性的指向はこれまで噂的に報じられることはあっても、本人が公言することはありませんでした。しかし今回の報道では「知人の暴露」ということで本人の意に反し公の場に引きずり出されてしまったのです。

■暴露されたら引退する覚悟をずっと前から決めていたのでは……

 アウティングについて、それをしたと言われる友人A氏に対しての批判の中で印象的だったのは「成宮さんは、いつか自分の性的指向が暴露されたら、すぐさま引退するようずっと前から準備していたのではないか」というもの。たしかに今回、週刊誌の報道の第一報からわずか1週間ほどで引退の声明を用意したところを見ると、その覚悟のほどが窺えます。

 メディアでは著名人の性的指向をいとも簡単にゴシップとして掲載する傾向があります。例え嘘であっても「噂がある」というだけで簡単に書かれることもあるのです。時にそれは事件本質と関わりなく注目されることがしばしば。

 成宮さんの薬物疑惑については、著名人ということもあり報じられるのはいたしかたないと思う部分もありますが、事件本質と関わりない本人にとってデリケートな部分までこうして公に引きずり出すのは果たして正義なのでしょうか。 特にLGBTに対する理解を社会全体で共有しようという動きもある昨今。今後社会全体で考え、見直していかなければならない部分に思われてしかたありません。

▼参考
引退発表文・日刊スポーツ記事より

(文:貴崎ダリア/元クラブ女王。引退後は性問題や性的指向への理解について本やコラムを多数執筆し発表している。)