おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

ネットの話題をきっかけにまさかの展開…聴覚過敏への理解と周知のためのシンボルマークができるまで

先日、聴覚過敏のある息子と電車に乗っていたら息子がつけていたイヤーマフを「ヘッドホンで音楽を聴かせている」と勘違いされたというツイートを紹介するとともに、感覚過敏について考える記事を執筆しました。

そしてこの記事を書きながら思ったことを、かねて親交のあった図記号のプロである石井マーク株式会社の社長に話を振ってみたところ、更なる展開へと繋がって行くことになりました。普段記事は書いて終わりがほとんど。まれに「その後」を書くことはあっても、自らその後へ繋げてしまったのはこれが初めてです。

  • 事の発端は筆者の個人アカウントでのツイート。「いしいしゃっちょ、何かいいマークあります?」と記事を執筆した時に思った旨を、記事へのリンクつけで実に軽いノリで石井マーク社長に振ってしまっています。

    俳優の石井マークさんとは違う、安全や社会福祉、防犯防災などの話題をユニークなイラストを交えてツイートされている大阪の石井マーク株式会社の社長です。以前から視覚障害の啓発活動にも積極的で福祉面の話題で交流がありましたので多少のおふざけも許される間柄なのですが、こんなに話題になるならもっとちゃんとした文章で振れば良かったと盛大に今更後悔。

    それはさて置き、このツイートに反応して下さった石井社長、数時間後には3つの図案を提案してくれました。「図記号だけでは伝えるのは難しいですね」と生意気にも返す筆者に対し、更に石井社長は図案を提案。最初に1番目の「うさぴん」に説明の文言を入れた図案を提案して下さいました。

    この文字入りのシンボルマーク「苦手な音を防いでいます」が同じく聴覚過敏を持ったツイッターユーザに次々と支持され、さらにはまとめサービスtogetterでもまとめられ大きく反響が広がりました。

    第2案


    第3案

    更に、小学生にも分かりやすいシンボルマークがあるといいかもという意見も出され、これを受けて更に文字の表記を改良したものを提案されています。

    小学生にも分かりやすいシンボルマークとして考案

    「試作しながら精査の重要性を感じた事は、決して大人の言葉をカナにするのではなく子供に何を最も優先して伝え、そのための言葉を選ぶという点ですね。 『ちょうかくかびん』という言葉。誰かに『とても苦手なもの』がある事。友達を『守る盾』となる道具の事。」という石井社長の言葉に添えられていたのが、3種類のシンボルマーク。

    「にがてなおとからまもるためのものです」という文字とウサギが耳を保護する物を耳につけているイラストが入った丸いシンボルマークと、盾の形の中に同じくウサギが耳を保護しているイラストと一緒にそれぞれ「にがてなおとからまもっています」「(ちょうかくかびん)とてもにがてなおとがあります」という説明が入った2種類のシンボルマーク。

    このシンボルマークがツイートされると「個人差が大きい聴覚過敏でも端的に分かりやすい」と大きな反響が。聴覚過敏の当事者や家族などから「こんなマークを待っていた」「ぜひ使いたい」「ステッカーなどがあれば購入したい」という反応が続々と寄せられています。

    シンボルマークを考案した石井社長は、「著作者である私が『本来の目的通りなら自由に使用してよい』という方針ですから、要はその点が明確に伝われば使いやすいでしょうね。費用が掛かる事によって『共通のシンボル』の支障となるのは望みません。何かオフィシャルな共通マークとして採用される形が最良と存じます。」と明言されており福祉に広く繋がるのであれば著作権は問わないという考えを示しています。このマークを使うことが「聴覚過敏」という症状そのものへの理解に繋がるきっかけとなれば嬉しい事である、というのが考案者である石井社長と筆者の共通の認識です。

    感覚というものは受けている本人しか分からないものであり、他人に共有されにくい側面があります。服のタグがチクチクするなどの触覚の過敏はタグを排除するなどの工夫ができますし、光に対する過敏でやたらと眩しさを感じる人はサングラスを装着することで自衛することができます。しかし、イヤーマフは音楽を聴くためのヘッドホンとよく似ている事もありサングラスのように保護を目的としている事が分かりにくいのが難点。自衛のための大切な防具、イヤホンタイプの物もありますがイヤホンタイプが何らかの事情で使えない人もいます。この様に「誰がぱっと見てもある程度理由が把握できる」シンボルマークを分かりやすい状態に身に付けておくのは自衛の手段として非常に有効であると考えられます。
    石井社長の発案であるこのシンボルマークが車椅子マークやヘルプマークの様に、内閣府の「障害に関するマーク」に認定されより広く知られるようになれば、更に周知も進み誰でもマークが使いやすくなるかと思います。

    <記事化協力>
    株式会社石井マーク‏さん (@ishiimark_sign)

    <参考>
    内閣府 障害者に関するマークについて

    (看護師ライター・梓川みいな)

    あわせて読みたい関連記事
  • ピクトグラムでパパママリンピック開催!パパママみんな金メダリスト
    インターネット, おもしろ

    ピクトグラムでパパママリンピック開催!パパママみんな金メダリスト

  • インターネット, 雑学・コラム

    札幌市の「発達障害虎の巻」 雇う側も雇われる側も救われる内容ぎっしり

  • インターネット, 雑学・コラム

    布マスクに「自分の見えないカベ」をプリント 誰もが目に付くアイデア

  • インターネット, 社会・物議

    倒れそうだった私を助けてくれた学生の男の子達へ 「拡散希望」に託された感謝の言葉…

  • インターネット, 雑学・コラム

    「聴覚過敏マークをもっと知って欲しい!」一人のクリエイターが目指すもの

  • インターネット, 社会・物議

    ヘルプマークを付けていたら親戚ににらまれた 必要だから付けているんです!

  • インターネット, 社会・物議

    知ってほしい エスカレーターの「わけあってこちら側で止まっています」

  • インターネット, 社会・物議

    知ってほしい!ライブでも「イヤーマフ」 音に過敏な人や子供の耳を保護するために使…

  • インターネット, サービス・テクノロジー

    「聴覚過敏」の救世主? 口コミで広がる「デジタル耳せん」とは

  • エンタメ, 芸能人

    ライブでの子供の耳を保護を!アジカンが「子供向けにイヤーマフを貸し出し」

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    2. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…
    3. 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前にリリースされたMMORPG「Dark Ages」をご存じでしょうか。年月とともに人口は減少…

    編集部おすすめ

    1. たこばさんの「糸こんにゃく炒飯」

      えっ…これ糸こんにゃく!?目も舌も騙される“ヘルシー炒飯”を実際に作ってみた

      「糸こんにゃくで作った炒飯が本物そっくりに仕上がる」と聞いたら、信じられるでしょうか。大阪市のたこ焼き店「たこ焼たこば」の店主がSNSに投稿…
    2. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    3. あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      子どもにとってかくれんぼは、ハラハラドキドキのスリリングな遊び。自分だけにしか分からないであろう隠れ場所を見つけて「ここなら大丈夫」「絶対見…
    4. プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      アニメ映画「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」公式は9月12日、「キミプリ♪ぬりえコンテスト」において…
    5. 短編ホラーゲーム「夜勤事件」、実写映画化決定 2026年全国公開へ

      短編ホラーゲーム「夜勤事件」、実写映画化決定 2026年全国公開へ

      コンビニを舞台にした短編ホラーゲーム「夜勤事件(The Convenience Store)」が、実写映画としてスクリーンに登場へ。開発元の…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト