2017年8月30日から11月17日にかけて、航空自衛隊のペトリオット部隊が、アメリカで恒例の平成29年度・年次実弾射撃訓練を実施しました。

 ニューメキシコ州にあるアメリカ陸軍マクレガー射場で、ペトリオット地対空ミサイルの平成29年度年次実弾射撃訓練を実施したのは、高射教導群(静岡県浜松基地)ほか、全国に配備された6個の高射群、総勢約370名。

 国内でも訓練を重ねてはいますが、国土の狭い日本国内では、射程距離の長いペトリオットを安全に発射できる演習場がありません。このため、実弾射撃を伴う重要な訓練は、毎年アメリカ陸軍の広大な射場を借りて訓練を行っています。

 アメリカ陸軍のマクレガー射場は、テキサス州エルパソからニューメキシコ州に入ってすぐの場所にある、約4000平方km(滋賀県とほぼ同じくらい)の面積を持つ広大な射場。いわゆる砂漠地帯で、周りには刑務所(オテロカントリー刑務所)以外、人家はありません。北には世界初の核実験が行われた「トリニティ・サイト」がある、陸軍ホワイトサンズ・ミサイル実験場(南北約160km、東西約64kmあり、面積は兵庫県とほぼ同じくらい)が隣接しており、これと合わせて非常に広大な敷地を有しています。

 このため、アメリカ陸軍の各種地対空ミサイルの実射訓練が行われており、国土面積の関係で広大な射場を確保することができない国も、ここを借りてミサイルの実弾射撃訓練を行っています。日本の航空自衛隊もそのひとつというわけです。

 訓練部隊は、砂漠の中に作られた訓練用の道路を走行して、射点へ移動します。

 到着したら速やかに射撃準備に入ります。目標を捉えるフェイズドアレイレーダーを展開し、発射機も発射姿勢に。



 砂漠の太陽が照つける中、レーダー等に電源を投入。ターゲットスキャンモードに入ります。


 そして模擬標的に向かってミサイルを発射。国内では模擬的にスイッチを操作するだけですが、ここでは轟音とともにミサイルが発射されます。年に1度の訓練なので、初めて自分が担当するミサイルが飛んでいく姿を見る隊員もいます。

 高射教導群司令の山田敬1佐は「実弾射撃訓練の目的は、部隊の任務遂行能力を高めることにあります。我が国周辺の安全保障状況は複雑化しており、対処しなければならない脅威は増大傾向にあります。装備運用に関する全ての練度を向上し、能力を高めることは重要です」と実弾射撃訓練の意義について語っています。

 およそ2ヶ月半に渡る貴重な実弾射撃訓練を通じて、、隊員はペトリオット運用に関する練度を向上させています。もちろん、この訓練期間中でも日本国内では、留守を守る6個高射群が毎日24時間、不測の事態に備えて、いつでも展開できるよう待機任務についていることは忘れてはいけません。

Photo:Raytheon

(咲村珠樹)