梅雨明け宣言が出ても週明けまで晴れ間はお預け、梅雨が明けても暑さでスッキリしないしぐっすり眠れないという人、多いと思います。夏に向けて出回るデオドラント商品にはミント・ハッカ・メントールの文字が踊りますが、実は猫を飼っている人は特に気を付けてもらいたいポイントが。上手なアロマの使い方を解説します。
■ 猫は肝臓で毒素が分解できない物質がある
天然物質から採取できるアロマオイルはエッセンシャルオイルと呼ばれ、植物の香りとなる成分だけを抽出した、非常に濃厚なものです。このエッセンシャルオイル、化学式で表す事ができるいくつかの物質が複雑に混ざり合ってその香りを発しているのですが、この物質の殆どが猫にとって肝臓で分解できない成分なのです。これは何故なのか。
もともと猫は完全な肉食動物。植物を消化する酵素も能力もないのです。猫が好んで食べるという猫草も、実は全く消化されておらず、毛玉を吐き出すために胃を刺激したり、噛んだ食感を楽しむという理由がほとんどの様です。実際、猫草を全く与えていなくても猫は普通に長生きできます。
植物由来の成分を代謝できない猫がエッセンシャルオイルを吸い込んでしまうと、吸気から一緒に入り込んだエッセンシャルオイルの香り物質が肺を通して血液内へと流れ込み、肝臓に行きつくのですがそこで代謝されず毒素として肝臓にため込まれてしまいます。これが猫にとって危険と言われる理由。
■ エッセンシャルオイルの殆どに猫が代謝できない物質が
猫が肝臓で代謝できない物質で良く知られているのは、柑橘系の香りに含まれる「モノテルペン炭化水素類」、香辛料としても良く使われるクローブ・シナモン・オレガノ・バジルなどに含まれる「フェノール類」、スペアミント・セージ・キャラウェイといったハーブに含まれる「ケトン類」など。こういった植物から抽出されるオイルはたまに香りにあたる程度なら「猫が嫌がる」で済むのですが、アロマディフューザーやお香などで空気中に充満させるといった事を続けていると、肝臓の毒素が排出される前に溜まり続けてしまい、結果的に肝機能障害で命に関わる事となります。
虫よけや清涼ミストにも使われる「ハッカ油」も、ケトン類が含まれるので猫が近くにいる場合に常時使用するのは禁忌。でも、清涼感が強いので使いたいという人も多いハズ。
■ 猫とアロマ、両立できる?
これはかなり難しいのですが、結論から言えば、「たまに、ごく限定的に程度になら何とかなるかも」。肝臓の毒素が代謝されずに溜まるのは危険である事はここまでの話でお分かり頂けたかと思います。要は猫が直接アロマを吸い込んだり舐めたりしなければいいのです。これを実現させるためには、エタノールにごく少量溶かしたハッカ油を猫のいない場所で服に吹き付ける、エッセンシャルオイルの瓶は猫の前では開けず、ティッシュなどに1滴だけ垂らしたものを顔のそばに置く、蓋つきの瓶などにコットンなどを入れ、そこにエッセンシャルオイルを垂らして好きな香りを楽しんで蓋を閉める、など、「猫がいない場所で限定的に」香りを楽しむ事を守れば大丈夫です。ただしこの場合、つけた場所を後に猫にかがれないよう注意することが大切です。
■ ついでに聞くけど、猫飼っててもハーブ植えても大丈夫?
これについては、“注意すれば”大丈夫です。例えばバジルやミントは猫が好まない香りですが、エッセンシャルオイルの様に濃縮されたものではなく素材そのままの状態の香り。多少ハーブの香りがベランダに漂ったとしてもすぐに外気に散るので心配はありません。ただしこれも守るべきことがあり、猫が口にいれないよう注意すること。ハーブの種類によっては猫が中毒症状をおこすことがあります。
植える種類と、猫が口にいれないよう注意すれば、食卓を彩るハーブを庭やベランダで栽培しても大丈夫です。猫が大好きというキャットニップは、ペパーミントと違ってケトン類も少なく猫にも安心なハーブですよ。
■ 香りの話ついでに、たばこの煙は?
いうまでもなくアウトです。紙巻きたばこでも加熱式でも水タバコであっても、副流煙が出る以上、呼気とともに吸い込んだ化学物質が肺や肺から血液に乗ってたどり着く臓器の至る所に害を及ぼします。人間でも副流煙の害が大きく報じられているのですから当然といえば当然ですよね。
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今回は特に肝臓での毒素の分解能力が限られている猫にスポットを当ててみました。筆者もアロマオイルは実は好きで、アロマテラピー検定も受けた事があります。今回執筆するにあたって過去の検定の教科書や、以前話を聞いたアロマセラピストからの話に基づいて書いてみましたが、知っているアロマセラピストは全員、「猫にアロマはNG」と口を揃えていました。しかし、自然のままの香りにちょっと当たるくらいの濃度であればたまになら大丈夫、とも。安眠に効くラベンダーや気持ちをすっきりさせるミントなど、生活にも役立つアロマは上手に使えば暮らしも快適になります。猫と暮らしている人も、ほんのりちょっとだけ、たまに取り入れてみるのもいいかも知れません。ただし、あくまでも自己責任でお願いしますね。
(梓川みいな / 正看護師)