海上自衛隊の輸送艦くにさき(LST-4003)と陸上自衛隊の第15旅団・第15ヘリコプター隊が、アメリカ海軍の強襲揚陸艦ワスプ(LHD-1)とドック型輸送揚陸艦グリーン・ベイ(LPD-20)とともに九州沖の東シナ海において、2019年1月11日から14日にかけて、相次いで共同訓練を行いました。これはアメリカ軍との間で定期的に行われる、部隊同士における相互連携の強化と戦術技量を向上させる訓練の一環です。

 長崎県の佐世保基地に配備されている強襲揚陸艦ワスプとドック型輸送揚陸艦グリーン・ベイは、同じく佐世保に配備されているドック型揚陸艦アシュランド(LSD-48)とともに、第11水陸両用部隊(PHIBRON 11)を形成しています。海兵隊の航空機(F-35B、MV-22、AH-1Zなど)や水陸両用車AAV7、そして海兵隊員を乗せ、アメリカ海兵隊を派遣先へと輸送するのが主な任務。特にこのPHIBRON 11は、インド太平洋地域における台風や地震による津波、火山の噴火など、自然災害の救援活動に派遣される機会が多くなっています。

 定期的な訓練と担当地域への巡回を行うため、佐世保基地を出港したワスプとグリーン・ベイを中心とする部隊。その途上となる九州沖の海域で、海上自衛隊の輸送艦くにさきと2019年1月11日・12日にわたって、共同巡航訓練を行いました。


 共同作戦で連携して行動することを念頭に、様々な隊形で航行するくにさきとワスプ、グリーン・ベイ。それぞれ艦の大きさや航行能力が異なるため、相互に無線を使ってコミュニケーションをとりながら、緊密な連携運動を行います。この巡航訓練においてワスプで航法評価を行うホセ・ゴンザレス電測/通信員は「相互における無線通信については、非常にはっきりと理解できるものであり、素早く的確な応答ができたと思います。我々が普段アメリカの艦艇と行っている訓練のような、スムーズなやりとりと連携ができました」と、くにさきとの無線を通じたコミュニケーションと連携について語っています。

 1月12日には、くにさきにPHIBRON 11の司令官であるジム・マクゴバーン大佐らが表敬訪問。幹部やヘリコプター搭乗員、飛行甲板要員などがそれぞれに交流し、相互理解を深めました。マクゴバーン大佐は「くにさきを訪問し、その乗組員の皆さんが我々ワスプ両用即応グループと素晴らしい連携を行う様子を見ることができて、とても光栄です」と語り「海上自衛隊とともに訓練していくということは、インド太平洋地域の平和と安定を確保する重要な鍵です」と、海上自衛隊とアメリカ海軍の共同訓練における重要性を強調しました。

 またこの訪問において、アメリカ海軍からくにさきへ、前日に撮影した3隻の編隊航行の写真パネルの贈呈も行われています。


 変わって1月14日、東シナ海へと進んだグリーン・ベイは、今度は陸上自衛隊第15ヘリコプター隊との共同訓練に臨みました。陸上自衛隊のヘリコプターがアメリカ海軍の艦艇に着艦する訓練です。

 陸上自衛隊からは、沖縄県の那覇駐屯地に所在する第15旅団・第15ヘリコプター隊第1飛行隊のUH-60JAと、第2飛行隊のCH-47JAが参加。ドック型輸送揚陸艦グリーン・ベイの後部飛行甲板を使って発着艦訓練を行いました。

 普段は動かない陸上で発着している陸上自衛隊のヘリコプター。このため、絶えず移動するだけでなく、波によって揺れる(水平でない)場所に降りるという訓練が必要になります。そして大規模な災害救援活動など、日米が連携して対処する場合、海上自衛隊の艦船だけでなく、活動地域の近くにいるアメリカ海軍の艦船に一時お世話になる事も考えられます。これはそういう事態を想定した訓練なのです。

 くにさきなど、海上自衛隊のおおすみ型輸送艦はヘリコプターの発着ができるような全通式の飛行甲板を備えていますが、あくまでも「輸送艦」なので航空機を管制・誘導する要員は乗り組んでいません。しかしアメリカ海軍の揚陸艦は、水陸両用作戦で航空支援を行う関係上、常に飛行甲板要員が乗り組んでいます。見かけは同じように見えても、艦種が違うため、実際の運用には違いがあるのです。第15ヘリコプター隊長の坂本貴宏一佐は、グリーン・ベイの航空艦橋から訓練の様子を見守りました。

 これらの共同訓練を通じ、海上自衛隊と陸上自衛隊はより多くの経験を積んで練度を向上し、即応性を高めるとともに日米の連携を深めました。

Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)