突然に遭遇する緊急事態。1分1秒を争う深刻な事態。救急車の中には、一刻も早く救急に搬送しないと命にかかわる状態の人が乗っていることも多くあります。そんな救急車がもし自分の運転している車の後ろから近づいてきたら……。
「この間救急隊の方とお話しする機会があったんですよ。 車運転中に緊急車両が来た場合 【ハザードランプ】を出して安全確認した上で寄せて停車する が助かるそうです。 ハザードランプをつけてくれると「私は緊急車両に気づいてます、道を譲りますね」の意思表示になるそうな」と、Twitterに投稿したのはぬぴ子さん。
このツイートに、「そんなの当たり前にやっている」というコメントが多くついた半面、自動車学校ではハザードを付けるまで習わなかった、という声も。さらに、ハザード付けて左に寄ったらモラルのない車がすぐ横を追い越していった、という声もチラホラと……。また、付き添いとして救急車に乗った人からは、「マナーの悪い車がいて、お願いだからそこを早くどいてって気が気ではなかった」といった声も。
https://twitter.com/mupiko_mupiko/status/1127767277070274560
このマナー、実は地域や年代によって自動車学校で習っていたり習っていなかったりするようです。筆者は名古屋在住で、免許を取得するために名古屋の自動車学校に通いましたが、「ハザードを付けて」とまでは習った記憶がないのです。緊急車両が近づいたときは、徐行しながら左(場合によっては緊急車両が通りやすい方)へ寄せて緊急車両の進路を確保し、通過するのを待つという感じでした。もちろん、交差点付近では交差点に進入しないように、進入しかけていたら速やかに交差点から出て待機する、といった具合です。
緊急車両の接近にともない、走行中のドライバーがしなければいけない行為については、道路交通法 第七節 緊急自動車等 第四十条において次のように書かれています。
第四十条 交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ。)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となつている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあつては、道路の右側。次項において同じ。)に寄つて一時停止しなければならない。
2 前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない。
また、停止の際の合図については第五十三条に規定されています。
第五十三条 車両(自転車以外の軽車両を除く。次項及び第四項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。
なお、緊急車両が接近しているにも関わらず、第四十条の規定(道路の左側に寄って一時停止)に従わなかった場合の罰則については、第百二十条第一項第二号で次のように言及されています。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
二 第二十五条(道路外に出る場合の方法)第三項、第二十六条(車間距離の保持)、第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項、第二十七条(他の車両に追いつかれた車両の義務)、第三十一条の二(乗合自動車の発進の保護)、第三十二条(割込み等の禁止)、第三十四条(左折又は右折)第六項(第三十五条(指定通行区分)第二項において準用する場合を含む。)、第三十六条(交差点における他の車両等との関係等)第一項、第三十七条(交差点における他の車両等との関係等)、第四十条(緊急自動車の優先)、第四十一条の二(消防用車両の優先等)第一項若しくは第二項又は第七十五条の六(本線車道に入る場合等における他の自動車との関係)の規定の違反となるような行為をした者(第二十六条の規定の違反となるような行為をした者にあつては、第百十九条第一項第一号の四に該当する者を除く。)
条文には「一時停止」することと、その際に「手、方向指示器又は灯火により合図」することは書かれていますが、具体的にハザードランプをつけることまでは言及されていません。しかし、ハザードランプは「非常点滅表示灯」とも呼ばれ、路上での緊急停車時に他の車両との衝突を避けるために使用する灯火ですから、他の車両に「停止している(急に発進することはない)」という意思表示をするものです。緊急車両のドライバーにとっては、目の前の車が緊急車両の接近に気づいているかどうかを判断する有効な手がかりといえそうです。
また、聴覚障害者にとっては接近する緊急車両のサイレンが聞こえないこともあり、サイドミラーやルームミラーでもすぐに判別できないことも多いようです。この場合、気が付いた車から徐行してハザードを付けることで、聴覚障害の運転者にも伝わりやすくなる利点があります。
ただ突然ハザードをつけてブレーキを踏むと、後続車両はその後の挙動が読めず、びっくりして急ブレーキを踏んで事故を誘発する可能性もないとは言い切れません。このツイートのリプライにもいくつか指摘がありましたが、左に寄せて緊急車両に道を譲る時には、「まず左ウインカーを2~3回出し『路肩に寄せます』という意思表示をしたのちに、左へ寄せて徐行しながらハザードを付け、道を譲る」のがスムーズということになりそうです。もちろん、緊急車両に道を譲ったのに後続車が追い抜くことは、道路交通法第三十二条で禁止されている「割り込み」に当たり、違反した場合は第百二十条第一項第二号の規定で五万円以下の罰金が課せられます。
第三十二条 車両は、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため、停止し、若しくは停止しようとして徐行している車両等又はこれらに続いて停止し、若しくは徐行している車両等に追いついたときは、その前方にある車両等の側方を通過して当該車両等の前方に割り込み、又はその前方を横切つてはならない。
(罰則 第百二十条第一項第二号)
緊急車両は救急車、消防車、警察車両のほかにも、血液輸送車も含まれます。サイレンを鳴らして赤色灯を付けているものが該当しますので、こういった緊急車両が近づいてきたら、速やかに道を譲れるよう、普段からシミュレーションしておくとよいかもしれませんね。
<参考>
電子政府の総合窓口(e-Gov)e-Gov法令検索 道路交通法
<記事化協力>
ぬぴ子さん(@mupiko_mupiko)
(梓川みいな)