2020年に開幕が予定されている、電動飛行機による世界初のエアレース「エアレースE」。そのエントリーチームの第1弾が2019年6月17日(現地時間)、フランスのル・ブルジェ空港で開催中のパリ・エアショウにおいてエアレースEと、パートナー企業であるエアバスから発表されました。その顔ぶれはアメリカ、イギリス、オランダの3か国から参戦する4チーム。アメリカを代表するリノ・エアレースに参戦経験のあるパイロットの名前もあります。

 世界で初めて電動飛行機のみで競われるエアレース、それがエアレースEです。レース機については、既存のエアレースにおける「フォーミュラ1(F1)」クラス(本当の「空のF1」レース)の規定をもとに、オフィシャル・ファウンディング・パートナーであるエアバスと、イギリスのノッティンガム大学などが試作機の共同開発を続けています。

 固定式のパイロンで設定された1周5kmの周回コースを最大8機が飛行し、順位を競います。FAI(国際航空連盟)公認世界選手権のレッドブル・エアレースがジムカーナ競技と同じような単走のタイムアタック形式に対し、周回しながら抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げるエアレースEは「空のフォーミュラE」、もしくはインディカーやNASCARに近いもの。

 今回発表された4チームをご紹介しましょう。まずアメリカの「オールウェイズ・エアレーシング(AllWays Air Racing)」は、カリフォルニア州に拠点を置くチーム。チームキャプテンとパイロットを務めるケーシー・エリクソンさんは、リノ・エアレースの複葉機クラスに参戦するエアレーサーであり、国際エアロバティック・クラブの役員を務めた経験を持っています。すでにチームではオリジナルの電動レース機の開発が半ばを迎えており、エリクソンさんは「未来によりクリーンな星を残す、環境に優しい最先端技術で競うというのはワクワクします」とコメントしています。

 同じくアメリカから参戦する「ブルー・ベータ・レーシング(Blue-BETA Racing)」は、2018年に電動のVTOL(eVTOL)や当時世界最大級の電動航空機を開発し、飛行に成功させたバーモント州のベータ・テクノロジーと、複合材料メーカーのブルーフォース・テクノロジー(ノースカロライナ州)がパートナー関係を結んで誕生したチーム。ベータ・テクノロジーズのCEO兼チーフ・テストパイロットを務めるカイル・クラークさんは「エアレースEは、電動航空機の分野における先進的なコンセプト開発を加速させる場だと感じており、素晴らしいエンジニアたちの活動を見た人々が、この世界で働きたいと思わせるものになるでしょう」と、エアレースE参戦の意義について語っています。

 イギリスの航空関連会社、コンドル・アビエーション・インターナショナルを母体としたチーム「コンドル(Condor)」は、ティーサイド大学とハル大学の協力を受け、レース機を開発中です。チーム代表のマーティン・ワイズマンさんは「エアレースEは、航空機の可能性を最もエキサイティングな形で提供してくれる、またとない機会です。地上10mを450km以上の速度で飛ぶというのは鳥肌ものです。レースが待ちきれませんよ」と、レースの開幕を心から望んでいるようです。

 オランダの「チームNL(Team NL)」は大学生によるチームが母体。現在、既存の飛行機をベースにしたオリジナルのエアレース機を開発中です。チームのリック・ボエルマ代表は「来年のエアレースEに向けて新しい機体を設計・製作しテストするというのは、非常に難しい挑戦です。でも、前向きに行きますよ。時計の針は進んでいきますが、この挑戦にワクワクしています」と語っています。

 エアレースEを統括するジェフ・ザルトマンさんによれば、最初のレース開催地については検討中で、2019年12月には正式なアナウンスができるだろうとのこと。レース開催には少なくとも8機の参加を目標としているそうですが、現在のところ16チームがエントリーする見込みだそうです。6月18日にはザルトマン代表がパリ・エアショウに来場し、エアバスのブースでエアレースEに関して興味を示している組織の人々と会談が予定されています。2020年に始まる電動飛行機による世界初のエアレース。これからもエアレースE公式サイトなどで情報が発信される予定です。

<出典・引用>
エアバス プレスリリース
Image:AIR RACE E/Airbus

(咲村珠樹)