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大流行中の「手足口病」 実際にかかってしまった人の体験に戦慄

 口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症「手足口病」。夏に子どもがかかりやすい感染症として毎年この時期に流行していますが、今年は感染者する人が特に多くでており、全国各地で警報が出ています。

 そんな、手足口病が子どもから感染してしまった人の症状がかなり悲惨なことになっており、ツイッターに投稿されたその症状の強さに驚きの声が上がっています。

  •  「奇数年に流行するらしい手足口病、夫が子からピンポン感染した時は、39度の熱の後に口内炎が40個できて何も飲み食いできない、やっと病気を忘れ始めた1ヶ月後に爪が剥がれ始めるという、手を替え品を替え苦しめてくるヤバイ病気だったので、どうかみんな感染対策を怠らずに生き抜いて欲しい」と、その大変さを身近に体験したのは、ネットユーザーのきよ耳さん。

     このツイートが投稿されると、同様に「私も地獄見ました」「うちの職場の人は、手足口病で入院しました」「完治までは半年ぐらいかかった記憶があります」などなど、体験者の人々から壮絶な体験の数々がリプライに寄せられています。

    https://twitter.com/kiyomi_nomimi/status/1148152170274906112

    ■ そもそも「手足口病」ってどういうヤツなの?

     手足口病は、コクサッキーA16(CA16)、CA6、エンテロウイルス71(EV71)などのエンテロウイルスが原因ウイルスの伝染性の疾患。複数のウイルスが原因となっているので、手足口病を狙い撃ちできる抗ウイルス薬は今のところはなく、細菌性の合併症がある場合には抗生物質も処方される可能性もありますが、基本的に手足口病には抗生物質は効果がありません。

     このため、症状が出て辛い状態に対処するだけの「対症療法」にとどまり、手足口病自体に対する治療というものがないのが現状。風邪を引いたときに、症状を抑えるための薬が出されるにとどまるのと同じ状態なわけです。

    ■ 手足口病の子どもと大人のかかりやすさの違いと主な感染経路

     この感染症は、4歳位までの幼児を中心に夏季に流行が見られる疾患であり、2歳以下が半数を占めますが、学童でも流行的発生がみられることがあります。ウイルスが体内に入っても症状が出ない「不顕性感染」という状態もありますが、学童期以上を過ぎると大半はウイルスに晒されることによる抗体ができるため、大人での発症は子どもよりも多くありません。

     しかし、ウイルスに対する抗体がない場合は大人でも感染源に触れてしまうと、手足口病にかかってしまう確率が上がります。成人の場合、女性よりも男性に感染が多くみられる傾向があるという疫学研究もあります。

     感染経路としては、咽頭から排泄されるウイルスによる飛沫感染が主な経路。便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などもあり、ウイルスに感染している状態の人の体から出るものが、うっかり口に入り込んでしまうと感染が成立してしまうことが主な感染経路となります。

    ■ 手足口病は大人が重症化しやすい

     先述のツイートやリプライでもあったように、子どもの感染症と言われているウイルス性の感染症は、大人になると重症化しやすくなります。この重症化しやすい理由というのは、はっきりしていないのが現状。しかし、これまでにも子どもから移った感染症での入院というのは、実は珍しいものではないのです。

     筆者が病棟で勤務していたころに衝撃を受けたのが、20代後半の男性で、おたふく風邪による重症化での入院。大人の男性がかかると生殖機能に影響を及ぼすというのは知っていましたが、下がらない高熱とともに睾丸があり得ないほどに腫れてしまっていた状態に、(今後子どもが欲しい時、この患者さん大丈夫だろうか……)と、思わず余計なことを思ってしまったくらいには重症でした。

     おたふく風邪は後天性感音性難聴の原因として最多の感染症。幸い、ワクチンが開発されているので、ワクチンでこのようなことを防ぐ事ができますが、まだまだウイルス性の疾患でワクチンが開発されていないものもあります。

     また、手足口病に限って言えば、口の中の水疱が多くできてしまったがために、食事どころか水分もまともにとれず、脱水気味となって点滴を受ける人もいました。自宅に帰ってもこのまままともに物が食べられない、ということでそのまま入院の運びに。痛み止めの投与とともに、ペースト食から徐々に食べられるようになっていき、1週間ほどで退院となりました。

     手足口病も、重症例が多く報告されている台湾および中国を中心としたアジア諸国では、実用化を目指したEV71(手足口病)ワクチン開発が進められていますが、先述の通り、複数のウイルスが原因となっているので、それらのウイルスに対抗できるワクチンが開発されるにはまだ時間がかかると思ってもいいでしょう。

    ■ 手足口病を防ぐためには

     一般的な感染対策は、接触感染を予防するために手洗いをしっかりとすることと、排泄物を適切に処理することです。特に、保育施設などの乳幼児の集団生活では、感染を広げないために、職員とこども達が、しっかりと手洗いをすることが大切です。しかし、乳児・年少クラスだと指しゃぶりやおもちゃを口に持って行ってしまうことによる感染もしばしば出てしまいます。

     手足口病は、治った後も比較的長い期間便の中にウイルスが排泄されますし、また、感染しても発病しないままウイルスを排泄している場合もあると考えられることから、日頃からのしっかりとした手洗いが大切。手洗い後のタオルを共用してしまうと、せっかくきれいになった手に、他の人が付着させたウイルスが再び手についてしまう恐れもあるので、この時期のタオルの共用はやめましょう。

     また、手足口病のウイルスは、消毒薬に対する抵抗性が非常に高いのも厄介なところ。ウイルスが付着した物に対する消毒としては、80度以上の熱湯に10分以上浸ける、次亜塩素酸ナトリウム液に浸けておく、といった方法があります。酸性アルコール消毒液も効果があると言われていますが、基本はしっかりとした手洗い。爪の中や手首、指の股の間など、洗い残しが多くなりやすいところは特に重点的に洗うようにし、爪は短くしておくのが一番です。

     流行している時期のマスク着用も効果があります。飛沫を吸い込むことを防ぎ、感染した子どもと接触した場合にもウイルスの侵入をブロックしてくれます。

     毎年流行している、夏のウイルス性感染症。プールなどで一気に広まってしまう傾向もありますが、子どもがいる家庭では特に気を付けていきたいですね。

    <引用・参考>
    国立感染症研究所感染症 手足口病とは
    厚生労働省 手足口病に関するQ&A
    Y’s Square:病院感染、院内感染対策学術情報 | 手足口病について

    <記事化協力>
    きよ耳さん(@kiyomi_nomimi)

    (梓川みいな/正看護師)

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  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

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    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

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