ノースロップ・グラマンは2019年7月17日(アメリカ西部時間)、無人偵察機ファイアバードの有人オプション装備付きでアメリカの民間企業2社から発注され、契約に合意したと発表しました。この有人オプション装備は、訓練などに利用される予定だといいます。

 ノースロップ・グラマンの無人偵察機ファイアバードは、中高度長時間滞空型に分類されるモデル。運用高度は最高で2万5000フィート(7500m)、30時間以上の飛行が可能です。各種レーダーやセンサーを装備しており、地平線(LoS)およびそれ以遠の地平線下(BLoS)へのデータリンクシステムで情報を送信可能となっています。

 無人機だけでなく、有人機版も存在するのがファイアバードの特徴。無人操縦に必要なデータ通信を行う部分を人間が操縦するコクピットユニットに換装することで、無人機を有人操縦の機体に模様替えすることが可能なのです。実際に試作機(登録記号:N326JG)は、無人飛行ユニットを装着した状態と、コクピットで人間が操縦する形態で試験飛行を行っています。


 今回ファイアバードの発注契約に合意した民間企業は、テナックス・エアロスペース(Tenax Aerospace)とグランドスカイ(Grand Sky)。グランドスカイはアメリカ初の民間無人機試験・訓練センターを運営する企業。ノースロップ・グラマンのノースダコタ州にある事業所に本社を置いています。

 グランドスカイのトーマス・ソーヤーJr.代表は「ファイアバードを導入し、その長時間滞空性と幅広い搭載機器の能力を民間の顧客に提供できることを楽しみにしています。私たちのゴールは、ファイアバードの高度な滞空性能を生かし、エネルギーインフラの監視や災害、人道支援における復旧活動に資することです」とコメントしています。

 テナックス・エアロスペースは特殊用途の航空機を使って、アメリカ政府や民間企業の業務を請け負う企業。2001年に創業し、ミシシッピー州に本社を置いています。

 テナックス・エアロスペースのトム・フォーリー代表は「ファイアバードは私たちテナックス・エアロスペースにとって、工業界をリードする適応性と柔軟性のあるデータ収集能力を非常に手頃な価格で、私たちの洗練された顧客であるアメリカ政府や、世界のセキュリティ関連企業に提供する存在です」と語り、現在、そして未来における重要な任務へ適応する能力を評価するコメントを発表しています。

 無人偵察機というと、どうしても軍事目的というイメージが先行してしまいますが、送電線や石油パイプラインなど、長距離におよぶインフラの点検業務や、海洋や土地の調査・測量などの省力化を図れる便利な道具でもあります。

 また、大規模な自然災害の発生時には、上空から広範囲の被害状況を長時間観測することができ、より正確な被害の把握と行方不明者の捜索にも役立ちます。これからはもっと、非軍事目的にも無人機の進出が加速していくことでしょう。

<出典・引用>
ノースロップ・グラマン プレスリリース
Image:Northrop Grumman

(咲村珠樹)