自動車メーカーのルノーは2019年10月14日(現地時間)、パリの大学構内で自動運転の電気自動車によるオンデマンドタクシーの実証実験を始めると発表しました。11月8日までの期間、約100人の利用者を対象に実施されます。
実験が行われるのは、パリ=サクレー大学。フランスの「パリ=サクレー計画」の一環で開設された大学で、先端科学技術の研究で知られています。パリ=サクレーは、日本でいう茨城県の筑波研究学園都市のような場所で、官民の研究機関が集中しています。
パリ=サクレー大学は日本の筑波研究学園都市にある筑波大学同様、広大なキャンパスを有しており、校舎が1km以上離れている場合もあります。このため学生や教職員の移動は一苦労。
このキャンパス内での移動手段として、オンデマンドタクシーが使えないかと考えられたわけです。しかも移動範囲はキャンパス内に限られますから、市街地の一般交通に影響を及ぼすこともありません。自動運転車の実験にも最適な条件が整っているのです。
ルノーと大学の自動制御研究所(Paris-Saclay Autonomous Lab)が共同で実施する実験で使用されるのは、ルノーの小型電気自動車ゾエ(ZOE)のタクシー仕様「ゾエ・キャブ(ZOE Cab)」。通常5ドアハッチバックのところ、助手席側(車体右側)を大きな1枚のドアとし、昇降性を高めています。
すでに2019年5月から、パリ=サクレー大学構内でのオンデマンド・カーシェアリング実験に使用されているゾエ・キャブですが、これを一歩進めて自動運転でのサービス実験を行おうというわけです。
実験に参加するのは約100人。2台のゾエ・キャブが提供され、専用のスマートフォンアプリで利用予約を行います。アプリ内では車の走行位置や行き先、そして予約人数が分かるようになっています。
もしアプリ内でゾエ・キャブが近くを通りがかり、しかも目的地の方向が同じならば、利用予約を入れるとユーザーが指定した場所で一旦停止し、定員に余裕があれば便乗することができます。このあたりは、停留所にかかわらず乗り降りができるオンデマンドバスと似たような使い方といえるでしょう。
実験サービスが行われるのは10月14日から11月8日までの月曜から金曜日。時間は11時~18時となっています。実験のため、スマホアプリのデータ通信料をのぞいて利用料金はかかりません。
自動運転車のオンデマンドサービスは、まずこのような限られた広い敷地を持つ施設で行うのが最適といえます。ここで得られた知見をもとに、予期せぬ出来事が起きやすい市街地で、一般の交通と一緒に走るための制御技術を磨いていくことになるでしょう。
<出典・引用>
ルノー プレスリリース
Image:Renault
(咲村珠樹)