イギリス空軍は2019年10月31日(現地時間)、新しい対潜哨戒機ポセイドンMRA Mk.1(ボーイングP-8A)の1号機をアメリカで受領したと発表しました。ポセイドンはその日のうちに工場のあるシアトルからアメリカ大陸を横断し、乗員訓練が行われているフロリダ州ジャクソンビル海軍航空基地へ移動しています。

 イギリスは老朽化したニムロッド対潜哨戒機を2011年に退役させ、その後継としてボーイングP-8AをポセイドンMRA Mk.1の名称で導入することを2015年に決定。9機を約30億ポンド(約4200億円)でボーイングに発注していました。

 ポセイドンMRA Mk.1の1号機(ZP801)がアメリカ、ワシントン州にあるボーイングの工場で完成し、初飛行を行なったのは2019年7月13日のこと。この機体には運用先となるロジーマス空軍基地の所在地である、スコットランドのマレーにちなんで「プライド・オブ・マレー」という名前もつけられています。

 ボーイングでの完成試験を経て、ようやく引き渡されたポセイドン。ベン・ワレス国防次官は「ワールドクラスの機体であるポセイドンは、イギリスの海洋哨戒能力を1段上のレベルに引き上げてくれるでしょう。最先端のセンサーを使い、長時間の哨戒が可能になることで、我が国の情報収集能力が向上し、(核ミサイルを搭載した潜水艦を発見しやすくなることで)核抑止の重要な要素となります」と、ポセイドンに期待を寄せています。

 ポセイドンを運用するイギリス空軍の制服組トップ、マイク・ウィグストン参謀長は「ポセイドンはゲームチェンジャーとなる哨戒機です。最も先進的な潜水艦でも探知・追跡可能であることはもちろん、必要とあれば撃沈することができます。ポセイドンMRA Mk.1が配備され、我々空軍が海軍と再び共に祖国の海を守る任務につけることを喜ばしく、そして光栄に思っています」と、2011年のニムロッドMRA4退役以来途絶えていた、海洋哨戒任務の復活に向けての意気込みをコメントしています。

 2019年8月、イギリスはノルウェーと防衛会合を行い、共同で北大西洋、北海の海洋哨戒に当たることで合意。イギリスが導入する9機のポセイドンMRA Mk.1のうち、5機分についてノルウェーからも調達費用を出資することが決まっています。

 およそ4000海里(7200km)の行動半径を持つポセイドンは、北大西洋のヨーロッパ側をカバーするには十分。対岸のアメリカともポセイドン運用についての協定を締結しており、北大西洋をカバーする対戦哨戒網が出来上がる見込みです。

 ポセイドンを運用する第120飛行隊の乗員は、すでにアメリカのジャクソンビル海軍航空基地をはじめ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのポセイドン(P-8A)飛行隊に派遣され、訓練を行なっています。今回受領したポセイドンMRA Mk.1の1号機は、ジャクソンビル海軍航空基地で訓練に使用されたのち、2020年の初めにはスコットランドのロジーマス空軍基地へ移動する予定。全9機の引き渡しが完了するのは、2021年11月の見込みです。

<出典・引用>
イギリス空軍 プレスリリース
Image:RAF Crown Copyright 2019

(咲村珠樹)