おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

フィンランド次期戦闘機を選定する実地試験「HXチャレンジ」開催中

 フィンランドの次期主力戦闘機を選定する「HX」計画で、実際にフィンランドの地で試験を行う「HXチャレンジ」が2020年1月9日から始まりました。最終候補の5機種が、真冬のフィンランドで運用した場合の比較試験に取り組みます。

  •  フィンランド空軍では、老朽化しつつある現在の主力戦闘機、F/A-18C/Dホーネットを2025年~2030年にかけて退役させる予定。これに代わる主力戦闘機を選定するのが「HX」計画です。

     2019年の最終提案に残った候補は、ユーロファイター・タイフーン(BAEシステムズ)、ラファール(ダッソー・アビアシオン)、グリペン(サーブ)、F/A-18E/Fスーパーホーネット(ボーイング)、F-35(ロッキード・マーティン)の5機種。この中からF/A-18C/Dホーネットの後継機が選定されることになります。

     国土の一部が北極圏にかかるフィンランドでは、厳冬期には厳しい寒さに見舞われます。候補機が提出してきた性能も、凍てつくフィンランドの地で十分に発揮されるかは分かりません。それを実際に冬のフィンランドで飛ばし、実戦の性能を確かめようというのが「HXチャレンジ」です。

     候補機はそれぞれ7日間(設営と撤収の予備日を含めると9日間)、フィンランド南西部サタクンタ県のピルッカラ基地(タンペレ=ピルッカラ空港)での試験(アピール)期間が与えられます。ここを拠点にフィンランド空軍がHXに要求する、防空、空対空戦闘、空対空偵察、監視、地上攻撃の5任務に関するパフォーマンスを訓練空域で実施。

     この間、運用に必要な整備や、補給なども含めた総合的な使い勝手についても評価の対象となります。非常に寒いフィンランドでは、低温や氷結などにより、センサーやシステムの誤作動が発生する恐れも。そんな過酷な環境でも、額面通りの性能を発揮できなければ、フィンランドの防衛には使えないのです。

     HXチャレンジのスケジュールは次の通り。空対空戦闘など、試験には複数機必要な項目があるので、各チームは予備機を含めて2~4機を持ち込むことになります。

    ■ユーロファイター・タイフーン:1月9日~1月17日

    ■ダッソー・ラファール:1月20日~1月28日

    ■サーブ・グリペン:1月29日~2月6日

    ■ロッキード・マーティン F-35:2月7日~2月17日

    ■ボーイング F/A-18スーパーホーネット:2月18日~2月26日

     フィンランド空軍によると、このHXチャレンジの離着陸の様子は、飛行場施設を共用するタンペレ=ピルッカラ空港のターミナル1とターミナル2の間の民間区域に展望台を仮設し、そこから見学することが可能だといいます。原則としてフライトは平日、試験項目に夜間任務も含まれるので、日によって夜間の離着陸も予定されています。

     HXチャレンジ終了後、フィンランド空軍は各社に最終オファーを求める予定。HXチャレンジの結果とファイナルオファーの内容、フィンランド空軍が見込む30年間の就役中にかかるライフサイクルコストなどを総合的に勘案して、次期戦闘機HXの機種決定は2021年に行われることになっています。

    <出典・引用>
    フィンランド空軍 ニュースリリース
    Image:フィンランド空軍/USAF/U.S.Navy/RAF, Crown Copyright

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • ダーウィンに到着した航空自衛隊のF-2A(画像:Commonwealth of Australia)
    宇宙・航空

    空自F-2が初参加 オーストラリアで17か国参加の共同訓練「ピッチ・ブラック」

  • 国際宇宙ステーションから見たスターライナー(画像:NASA)
    宇宙・航空

    ボーイングの有人宇宙船「スターライナー」無人飛行試験から無事帰還

  • ロケット組み立て棟でのスターライナー(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASA 宇宙船「スターライナー」打ち上げ試験でSNSバーチャルイベント開催

  • スペイン陸軍のCH-47(画像:Boeing)
    宇宙・航空

    スペイン陸軍 アップグレード版CH-47Fヘリコプターの1号機を受領

  • ギリシャへと飛び立つラファール(画像:DASSAULT AVIATION)
    宇宙・航空

    ギリシャ空軍ラファール 最初の6機が訓練を終え本国へ移動

  • 空母ジョージ・H・W・ブッシュ艦上のMQ-25(画像:U.S.Navy)
    宇宙・航空

    アメリカ海軍の無人空中給油機MQ-25 初めての空母運用試験終了

  • カタール向けのF-15QA(Image:Boeing)
    宇宙・航空

    カタール向けF-15最新モデル「F-15QA」正式公開 パイロットの訓練も開始予…

  • 僚機のKC-46Aに空中給油する航空自衛隊向けKC-46A(Image:Boeing)
    宇宙・航空

    航空自衛隊向けKC-46A 1号機が初の空中給油試験を実施

  • スイス空軍の次期戦闘機に採用されたF-35A(Image:スイス連邦防衛・国民保護・スポーツ省)
    宇宙・航空

    スイス空軍次期戦闘機にF-35Aを36機調達 ペトリオット対空ミサイルも5セット…

  • ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられるGPS IIIの5号機(Image:SpaceX)
    宇宙・航空

    測位精度が3倍に向上 次世代GPS衛星「GPS III」5号機の打ち上げ成功

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

  • ミライ人間洗濯機
    企業・サービス, 経済

    ミナミのホテルで「人間洗濯機」稼働開始 大阪・関西万博で注目の装置

  • ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念
    社会, 経済

    ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

  • KADOKAWAの「PressWalker」、2026年2月25日でサービス終了を発表 開始から約4年で幕
    企業・サービス, 経済

    KADOKAWAの「PressWalker」、2026年2月25日でサービス終了…

  • YouTube Premiumアドオン、日本を含む5か国で新たに提供へ Google Oneとセットで割安に
    インターネット, サービス・テクノロジー

    YouTube Premiumアドオン、日本を含む5か国で新たに提供へ Goog…

  • 「ローストビーフ丼」再登場
    商品・物販, 経済

    2週間で品薄になった話題の「ローストビーフ丼」再登場 すき家が販売再開を発表

  • トピックス

    1. ミライ人間洗濯機

      ミナミのホテルで「人間洗濯機」稼働開始 大阪・関西万博で注目の装置

      大阪・関西万博で注目を集めた「人間洗濯機」が、ついに大阪・ミナミのホテルで稼働を始めました。導入した…
    2. ティーバッグ使用時の悩みを解決「二番煎じ待機スタンド」 デザインを学ぶ大学院生が製作

      ティーバッグ使用時の悩みを解決「二番煎じ待機スタンド」 デザインを学ぶ大学院生が製作

      ティーバッグ、一度だけ使って捨てるのはもったいなくて、何度も繰り返し使ってしまいますよね。でも、浸し…
    3. 運営者の終活で老舗CGIサイトが終了へ 1995年開設「CGI RESCUE」、2026年3月に幕

      運営者の終活で老舗CGIサイトが終了へ 1995年開設「CGI RESCUE」、2026年3月に幕

      1995年から続く老舗CGI配布サイト「CGI RESCUE」が2026年3月末での終了を発表しまし…

    編集部おすすめ

    1. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    2. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    3. パラマウントのプレスリリース

      まるで三角関係?Netflixと“婚約発表”したワーナーにパラマウントが求婚 関係を分かりやすく解説

      アメリカの映画製作・配給会社であるパラマウントが12月8日、同じくアメリカのメディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)を1株…
    4. 「美味しい」じゃない、“非日常の食べ物”をめぐる5冊

      「美味しい」じゃない、“非日常の食べ物”をめぐる5冊

      「刑務所メシ」「くさい食べ物」「辺境メシ」「イスラム圏の飲酒」「殺し屋のダイナー」など、日常を外れた“食べ物”をテーマにした5冊を紹介します…
    5. 快活フロンティアの発表

      快活CLUB不正アクセスと“天才ハッカー美談”の危うさ──真面目な技術者を傷つける誤った称賛

      快活CLUB公式アプリへの不正アクセスで会員情報700万件超が漏えいした事件で、高校2年の男子生徒が逮捕された。ネットでは「将来有望なホワイ…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト