スペースXの有人宇宙船クルードラゴンが、2020年5月27日(アメリカ東部時間)の打ち上げを前に、発射施設でのエンジン燃焼試験や打ち上げリハーサルなど、事前の準備を完了しました。いよいよ27日、およそ9年ぶりにアメリカから宇宙飛行士が宇宙に向かいます。

 民間企業が開発、運用する再利用型宇宙船で、国際宇宙ステーションへの人員輸送を担当するアメリカの「コマーシャルクルー」計画。スペースXのクルードラゴンとボーイングのCST-100スターライナーが選定され、クルードラゴンは2019年に国際宇宙ステーションへの無人飛行に成功しています。



 無人の試験飛行が成功したことを受け、スペースXとNASAはクルードラゴンに実際に宇宙飛行士を乗せて国際宇宙ステーションへ向かう、2回目の試験飛行「デモ2(DM-2)」へ進むことを決定。打ち上げの日付は2020年5月27日に設定されました。

 クルードラゴンは、国際宇宙ステーションへの物資輸送で実績を積み重ねた、ドラゴン補給船を基礎に発展させて開発された有人宇宙船。トランクと呼ばれる非与圧貨物室と各種機器を搭載したモジュールと、最大7人乗りの有人居住カプセルを合わせた全長は8.1mで、総重量は6000kgです。

 カプセル部は帰還後再利用可能な設計となっており、自動制御で着陸する打ち上げロケット、ファルコン9の1段目を含めて、全体のおよそ半分が複数回の使用に対応しています。

 初の有人飛行となるデモ2ミッションに登場するのは、元海兵隊テストパイロット(大佐)のダグラス(ダグ)・ハーレイ宇宙飛行士と、空軍テストパイロット出身(大佐)のロバート(ボブ)・ベンケン宇宙飛行士。2000年に選抜された、NASA第18期宇宙飛行士候補生「The Bugs」の同期生です。

 両宇宙飛行士は訓練地のヒューストンから、5月20日に打ち上げ地のフロリダ州ケネディ宇宙センターに到着。NASAのブライデンスタイン長官(元アメリカ海軍トップガン・パイロット)らの出迎えを受けました。

 2人の乗るクルードラゴンを搭載したファルコン9ロケットは、5月21日に組み立て棟よりロールアウト。ロケットの1段目には、スペースシャトル計画前半の1975年〜1992年に使われた懐かしい「NASA」ロゴが書き込まれています。

 スペースX仕様に改修された、ケネディ宇宙センター39A発射施設に据え付けられたロケットは、推進剤と酸化剤を注入されてエンジン燃焼試験を22日に実施。9基あるエンジンが問題なく動作することが確認されました。

 翌23日には、宇宙飛行士を迎えてのドレスリハーサルを実施。打ち上げまでの手順を実際に模擬し、発射施設や発射管制室との連携状況を確認しました。

 スペースXのデザインしたクルードラゴン用船内宇宙服は、従来のものに比べてスマートで、どことなくガンダムのモビルスーツパイロット用ノーマルスーツ(宇宙服)にも似ています。発射施設までの道のりは、スペースXと同じくイーロン・マスク氏が創業したテスラ製の電気自動車に乗車します。


 ドレスリハーサルには、NASA宇宙飛行士室長のパトリック・フォレスター宇宙飛行士も姿を見せ、2011年7月8日のスペースシャトル最後のミッション(アトランティスによるSTS-135)以来となる、有人宇宙船の打ち上げリハーサルを見守りました。

 打ち上げ前の準備を整えたクルードラゴンとファルコン9ロケットは、アメリカ東部時間の5月27日16時33分(日本時間28日5時33分)に設定されたデモ2ミッションの打ち上げ本番を待ちます。「LAUNCH AMERICA」と題された、アメリカからの有人宇宙船の打ち上げ復活は、YouTubeなどのNASA TVでネット生配信される予定。このミッションが成功すると、次はJAXAの野口聡一宇宙飛行士が搭乗する第1回フライト「クルー1(USCV-1)」ミッションです。

<出典・引用>
NASA ニュースリリース
Image:NASA/スペースX

(咲村珠樹)