アメリカ太平洋空軍(PACAF)は2020年5月27日、アメリカ本土からグアムに進出したB-1B爆撃機が、日本海で航空自衛隊のF-15、F-2戦闘機と共同訓練を実施したと発表しました。航空自衛隊の戦闘機とアメリカ空軍B-1B爆撃機との共同訓練は、5月12日以来1週間ぶりのこと。4月22日にも日本近海で実施されています。
アメリカ空軍は、B-1BやB-2、B-52といった戦略爆撃機が常に臨戦態勢にあり、いざという時にはどこへも、どこからでも爆撃が可能であることを示すため、定期的に同盟各国の戦闘機と共同訓練を実施しています。訓練の際は、拠点となる基地を離陸したら戻ってくるまで着陸することはなく、空中給油を繰り返して20時間以上飛行し続けるという過酷なもの。
4月22日に実施された訓練では、エルスワース空軍基地から第28爆撃航空団第37爆撃飛行隊所属のB-1Bがグアム島アンダーセン空軍基地に進出。日本海から沖縄周辺の東シナ海で、第6航空団(石川県小松基地)のF-15、第7航空団第3飛行隊(茨城県百里基地)のF-2、第8航空団(福岡県築城基地)のF-2、第9航空団(沖縄県那覇基地)のF-15が、アメリカ空軍第35戦闘航空団(青森県三沢基地)のF-16とともに編隊航法訓練を実施しています。
5月1日からは、入れ替わりにテキサス州ダイエス空軍基地から、第7爆撃航空団第9遠征爆撃飛行隊に所属する4機のB-1Bがグアムに到着。東シナ海や南シナ海での哨戒飛行のほか、5月12日に航空自衛隊第5航空団第305飛行隊(宮崎県新田原基地)のF-15、第6航空団のF-15、第7航空団第3飛行隊のF-2、第8航空団のF-2と日本海から沖縄周辺の東シナ海上空にかけ、編隊航法訓練を実施しました。
今回の訓練も、グアムを離陸した第9遠征爆撃飛行隊のB-1Bが日本周辺を飛行するのに合わせて実施されたもの。参加したのは、第5航空団第305飛行隊と第6航空団のF-15が4機ずつ(計8機)、そして第8航空団のF-2が2機です。
B-1Bは無着陸で飛び続けているため、訓練に参加する航空自衛隊の戦闘機は、訓練空域に接近するタイミングで基地を離陸し、飛行中のB-1Bを空中で集合する形になります。
違う場所からやってきた飛行機同士が決められた場所で集合するには、相手と自分の飛行速度や進路を考慮した航法能力が不可欠。また、この航法能力は、日本の領空に接近しつつある国籍不明機に対するスクランブル(対領空侵犯措置)において、素早く対象機を捕捉して接触する際にも有効です。
訓練について、第9遠征爆撃飛行隊長のライアン・ストールスワース中佐は「この地域においてアメリカが関与するという確固たる姿勢は変わらず、それを内外に示すためのものです。このようなミッションは、地球規模の戦火や広大な戦域における我々の能力を高めてくれます」と語っています。
実際に訓練に参加したパイロットの1人は「アメリカがインド太平洋地域の平和と安定に寄与している、ということを同盟国のパートナーに示す機会を与えられるのは、いつだって光栄なことです。このミッションで飛んでいる間、私たちは同盟国のパートナーたちと音声通信やデータリンクを介して統合した形で訓練し、一体となることで大きな能力となります」と、同盟国との共同訓練の意義についてコメントしています。
今後もアメリカ空軍は定期的に部隊を入れ替えながら、グアムに戦略爆撃機部隊を進出させていく方針のようです。航空自衛隊との訓練も機会が増えていくことでしょう。
<出典・引用>
アメリカ太平洋空軍 ニュースリリース
航空自衛隊 報道発表資料
Image:USAF
(咲村珠樹)