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空母セオドア・ルーズベルトが7か月ぶりに母港サンディエゴへ帰着

 アメリカ海軍第3艦隊は2020年7月9日(アメリカ西部時間)、遠征航海に出ていた空母セオドア・ルーズベルトが母港サンディエゴに帰着したと発表しました。途中、艦内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、乗組員が死亡するという予期せぬ事態に見舞われましたが、およそ7か月におよぶ遠征任務を完遂しています。

  •  第3艦隊に属する空母セオドア・ルーズベルトが、定期的な遠征航海のため母港サンディエゴを後にしたのは2020年1月17日のこと。太平洋を西進し、第7艦隊の管轄エリアに入った空母セオドア・ルーズベルトとその空母打撃群は、2月7日にグアム島に寄港して地域との交流プログラムを実施しました。

     グアムを後にしたセオドア・ルーズベルト空母打撃群は、2月15日に強襲揚陸艦アメリカとの共同訓練に臨みます。アメリカが搭載するMV-22Bオスプレイがセオドア・ルーズベルトに着艦するなど、水陸両用部隊と一体となった訓練は、3月5日のベトナム訪問を挟み、3月15日には南シナ海で再度実施されています。


     順調に訓練を重ねていた空母セオドア・ルーズベルトの状況が暗転したのは、その直後でした。3月20日、乗組員が新型コロナウイルスに感染していることが判明。翌日にはさらなる感染者が明らかになりました。

     洋上の船は外界から隔絶した閉鎖環境であり、伝染性の感染症が蔓延すると大変なことになります。空母セオドア・ルーズベルトはスケジュールを変更し、3月27日にグアム島に寄港。新型コロナウイルス感染者をグアム海軍病院に入院させるとともに、乗組員の隔離・艦内の消毒作業が実施されました。


     4月13日には、新型コロナウイルス感染症でグアム海軍病院に入院していた41歳の男性上等兵曹が死亡。アメリカ海軍は、空母打撃群司令官や艦長を含む乗組員の一部を交代させる決定をしました。

     乗組員の隔離措置が終わり、補充の乗組員を加えて空母セオドア・ルーズベルトがグアムを出発したのは6月4日。6月8日には、セオドア・ルーズベルトと交代して任務に就く空母ニミッツが母港サンディエゴを後にしています。

     セオドア・ルーズベルトとニミッツの空母打撃群が、太平洋上で会合したのは6月21日。23日にかけて、2つの空母打撃群は連携しての共同訓練を実施しました。


     帰途についた空母セオドア・ルーズベルトですが、サンディエゴへ入港するのに先立ち、戦闘機部隊のVFA-31とVFA-87に所属するF/A-18Eは一足早く艦を離れました。実はこの両飛行隊のホームは西海岸ではなく、東海岸バージニア州のオシアナ海軍航空基地。アメリカ大陸を横断する必要があったのです。VFA-31とVFA-87は7月7日にオシアナへと帰着しました。


     空母セオドア・ルーズベルトの艦載機部隊(CVW-11)に加わるため、VFA-31とVFA-87がオシアナを発ったのは2019年の7月。およそ1年ぶりの帰着となりました。この間1047回もの飛行をこなしたVFA-31「トムキャッターズ」隊長のデーモン・ラブレス中佐は「飛行隊それぞれのメンバーは、この遠征を通じて誇りとプロ意識に満ちた献身的な態度を示してくれました。これほど素晴らしい男女を率いる機会を得られたのは、非常に光栄なことです」とコメントしています。

     VFA-87「ゴールデン・ウォリアーズ」隊長のジェイソン・A・ダルビー中佐は「グアムで2か月間隔離されたため、遠征期間中にもかかわらずパイロットは空母での運用資格(期限は60日)を失い、グアムのアンダーセン基地で着艦訓練をすることになりました。私の知る限り、海軍航空史上例のない記念碑的な経験です」と、新型コロナウイルスの影響で発生した予期せぬ事態に言及しています。

     サンディエゴ海軍基地へ7月9日に到着した空母セオドア・ルーズベルト。途中からセオドア・ルーズベルト空母打撃群の司令官となったダグ・ベリッシモ少将は、上陸後「セオドア・ルーズベルト空母打撃群と、今回の遠征で達成したすべてについて、これ以上ないほど誇りに思っています。世界的な新型コロナウイルス感染拡大への対応をはじめとする様々な環境において、南シナ海を含むインド太平洋地域での任務を安全にこなしてくれました」と、困難に見舞われた今回の遠征任務における部下の働きをたたえています。


     同じく途中から空母セオドア・ルーズベルト艦長に着任したカルロス・サルディエロ大佐は「乗組員たちは予期せぬ危機に直面しても、不屈の強さを見せてくれました。今回の新型コロナウイルス禍からの復帰は、ともすれば士気を低下させてしまうスパイラルに陥ってしまうところを、逆境を克服する希望とインスピレーションの象徴へと変えた、若い乗組員たちのプロ意識を証明するものです」との談話を発表しています。



     艦内での新型コロナウイルス感染拡大、という予期せぬ事態を乗り越え、母港サンディエゴで家族と再会した空母セオドア・ルーズベルトの乗組員たち。まだまだ新型コロナウイルスの感染拡大は続いており、乗組員たちはアメリカ疾病対策センター(CDC)の助言をもとに海軍が定めた感染防止マニュアルに沿って、これからの日々を過ごすことになります。

    <出典・引用>
    アメリカ海軍 ニュースリリース
    アメリカ太平洋艦隊 ニュースリリース
    Image:U.S.Navy

    (咲村珠樹)

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