こんにちは、匿名掲示板・2ちゃんねる開設者のひろゆき(西村博之氏)に裁判で勝って賠償金60万2525(ニコニコ)円を取った人です。

 先日、僕がひろゆきから初めて賠償金をとったとして報道などされたのですが、今回の件を通して「民事執行法」「財産開示手続」の強化のことをもっと世の中に知ってもらった方がよいと思って記事を書いてみました。

Googleニュースページのスクリーンショットです。

▼FLASH『論破王ひろゆき、ついに賠償金を払う「60万円振り込んできた」当事者が顛末明かす』
https://smart-flash.jp/entame/161383

 また、ひろゆきはなぜ賠償金を払ったのですか、という質問をちょくちょく受けるようになったので、わかりやすくまとめておきます。

【おたくま経済新聞編集部より:執筆者についての説明】
本稿は、メールマガジンサービス「まぐまぐ」の開発・発案者であり、未来検索ブラジル元代表で、ニュースサイト「ガジェット通信」の立ち上げ等をおこなった深水英一郎氏からの寄稿記事です。

■ ひとことでいうと

 昨年法律が変わって、賠償金払わないと刑事罰になったんです。なので、これまでは賠償金を払わずに逃げられてたんですが、そうはいかなくなりました。ひろゆきはこの法律改正を知っていて、刑事罰を受けるのを避けたかったんだと思います。

 私も、賠償金の支払いがなければアクションせざるを得ないかなと考えて準備を進めていました。

 そしてひろゆきも、私が財産開示請求や差し押さえまでやってくるかもしれないと予想して、支払ったんだと思います。

■ もう少し詳しく説明

 のらりくらりと支払わない人から賠償金が取れない問題に対応するため2020年4月1日に改正されたのが「民事執行法」です。この法律改正で、財産開示手続が強化されたのです。

 これまでは、相手がどこにどのような財産を持っているかわからなければ、その財産を差し押さえることはできなかった。でもそれって、相手が隠す気になれば、どこに財産があるかなんて、知りようもないわけです。

 だから、ひろゆきのケースみたいに、払う気がなければ払わずに逃げられたわけですが、その問題に対応するため、財産開示手続が強化されたのです。

 賠償金を払ってもらう人(債権者)が裁判所に申し立てれば、賠償金を払うべき人(債務者)を裁判所に呼び出し、自分が持っている財産について述べさせることができる、というのが財産開示手続なのですが、この罰則が強化されたのです。

 その罰則は、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰。

 つまり、賠償金を払わずに逃げ続けることは、前科のつく立派な犯罪だ、ということになったのです。

 実際、2020年10月には書類送検の事例も発生しています。ひろゆきはその重い罰を避けるため、私に賠償金を支払ったのだろうと思います。

▼カナコロ『裁判所出頭せず…「無視していれば諦めると」 初の書類送検』
https://www.kanaloco.jp/news/social/case/article-274315.html

 要するに、ひろゆきでも無視できないほど強力な制度キター、ということですね。

 この法律の改正はそもそも、ひろゆきの司法に対する挑発的な発言に刺激を受けておこなわれたものだ、とも言われています。真偽はわからないですが、さもありなん、という話ですよね。

 そして、たまたまなんですが、私がその張本人であるひろゆきから賠償金をおそらく初めてゲットした、ということなんです。つまり、私は法律改正の恩恵を受けた、ということになります。

■ これからは、泣き寝入りする必要はありません

 ひろゆきが払った、というのはむしろ些末な出来事で、これはもっと大きな話だな、と私は考えています。

 まだ世の中にたくさんいらっしゃる、勝訴判決を得たものの、賠償金を支払ってもらえない、というみなさんにとって、これは前向きで明るいニュースです。

 これからは勝訴しても賠償金を払ってもらえない、と泣き寝入りせずに、きちんと手続きをして、逃げようとする相手を追い詰め、賠償金を支払ってもらいましょう。

■ 財産開示手続はたったの2000円+切手代でできる

 裁判所のウェブサイトにありますが、申立は2000円+切手代でできます。

 切手はあらかじめ6000円分預ける形となっており、余れば返却されます。

▼裁判所『財産開示手続を利用する方へ』
https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/zaisankaizi/index.html

 よくわからない場合は、裁判所に電話してきいてみると良いと思います。裁判所は、一般人にはわりと丁寧に対応してくれます。

 実際私も、最終的に個人で裁判を進めたのですが、裁判所の方はとてもやさしく親切に対応してくれました。

 費用をかけてもよい方は、改めて弁護士さんに相談するのもよい方法だと思います。

 財産開示手続をしても、4割は顔も出さなかった、というデータを見たことがあります。この数が少しでも少なくなり、勝訴した人が賠償金を受け取れればよいな、と思います。

▼今回の問題について話した動画『「ひろゆき」に損害賠償請求の裁判をして自力で賠償金を回収した漢に話を聞いた』
https://www.youtube.com/watch?v=zJUMXC-9dP0

<執筆・監修>
執筆:深水英一郎(https://twitter.com/fukamie
法律部分監修:藤吉修崇弁護士・税理士

<画像について>
見だし画像は深水氏Twitterアカウントのスクリーンショット/本文掲載はGoogleニュースページのスクリーンショット。モザイク処理は編集部にて行いました。