昨今世界において、大きな課題となっているテーマのひとつが、AI(人工知能)による作業の自動化。

 どれくらいの「代替」が可能になっているかが注目されていますが、こと「アート」に関しては、既にかなりのレベルまで進化しているようです。Twitterユーザーのカニウムさんの投稿に、注目が集まっています。

 「『MidjourneyAI』がTwitterで流行っていて、それを大喜利的な感じで楽しんでいたのですが、『もっと面白い使い方をしてみたいな~』と思ったのが、元々のきっかけでしたね」

 そう語るカニウムさんは、グラフィックデザインを勉強しながら、VRchat内で遊ぶものの制作(モデリング)を趣味にしている人物。その中で出会ったのが、AIアート「Midjourney(ミッドジャーニー)」といいます。通信プラットフォーム「Discord(ディスコード)」内にあるサーバーにサインインし、招待を受けた後、各ユーザーがテキストに記載した内容をもとに、AIが画像を自動生成するというサービスです。

 実にシンプルな手順なのですが、AIたちによって生み出されたアートが今、世界中で大きな話題になっています。SNS上でも、「#Midjourney」「#MidjourneyAI」のタグをつけて多くの作品が投稿されているのですが、いずれも「指示出し」だけでこんなものができるのか!と驚愕するクオリティ。カニウムさんも、タイムライン上に流れてくる画像や、友人とのやり取りでMidjourneyにのめり込むようになったそうです。

 その特性を生かして制作したのが、今回Twitterに投稿した「酒瓶」。アルファベットのロゴから見て洋酒をイメージしたものとなっていますが、これもテキストによる指示出しで生まれています。AIってここまでできるようになっているのか……ゴクリ。

Midjourneyを用いて制作した「酒瓶」。

 一方で、本作は全てAI任せというわけではありません。カニウムさんのつぶやきにもある通り、モデリングや画像を切り抜くなどの「調整」は人間側が担っていますが、これは友人とのやり取りから着想を得たとのこと。

 「『設計図やデザイン画も頼めば、それらしいものも作ってくれる』という話を聞いて、『じゃあ“にぎやかし用”の小物のデザインやテクスチャといった、意外とめんどくさいものも頼めるのかな?』と考えたんです。それができれば、もっと(作業が)楽にできるかなというのも理由でしたね」

 「今回は酒瓶の形や配色といった造詣面のデザインに、そこから派生するロゴやラベルなどのテクスチャ素材の生成の大部分をAIに任せました。そして、AIが出してくれた複数の案を、私が整合性や補完性があるようにモデリングしています。具体的にいうと、蓋部分のカラーリングや瓶底のふくらみ、裏面の成分表といった部分ですね」

Midjourneyの特性を生かし、デザインはAI側が担当。

ロゴやラベル部分もAI側が起こしています。

モデリングなどの細かい部分は人間担当。

 どちらかといえば、これまで人間が担当した部分をAIに任せ、逆にAIが担っていた部分を人間が担当したというのが本作。斬新な発想にも感じますが、筆者のようなライター業で考えると、ライティングはAIに任せ、編集は人間がやるということで「要所は抑えている」という見方もでき、存外理に適った分担なのかもしれません。実際にカニウムさんも、本作には一定の手ごたえを感じ、今後の展望も描いています。

 「例えば部屋のモデリングをする際に、床に落ちている雑誌や新聞などの、作品としての『メイン』は張らないけど、あったら良くなるような『情報』を多く作るような“めんどくさいもの”を作るとなると、効果を発揮して作業効率化してくれるかなと想定していますね」

 昨今では「AIの発達で人間が仕事を奪われる」などと、技術発展をネガティブな方向で見られがちですが、そうでもないですよという「アンサー」を示したのがカニウムさんの作品。「Midjourney」という最先端AIが見せた「可能性」でもありますが、AIにも独特の「特徴」もあると、最後にカニウムさんは教えてくれました。

 「AIって、意外と『気分屋』で、こちらが上手いこと指示を出すコツを知っておかないと、そこの試行錯誤の段階で余計に手間取ってしまうこともあるんです。もう少しAIの『対話』の研究も必要だなあと感じましたね」

<記事化協力>
カニウムさん(@feo601ku)

(向山純平)