おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

「水害後の汚泥の片付けを子どもにさせないで」美談では済まない危険性とは

 台風や大雨の後、自宅の外溝や庭に溜まった汚泥を掃除する方は多いと思いますが、その作業、子どもと一緒にやってしまってはいませんか?

 「小中学生には水害後の片付けをさせないで」と、長野県佐久市及び佐久医師会によるプロジェクト「教えて!ドクター佐久」がSNS上で呼び掛けています。

  • 「台風後、水害の片付けをされるご家庭もあるかと思いますが、汚泥には多くの有害物質が含まれており、除去は大人の仕事。子どもの汚泥掃除のお手伝いは美談ではなく、米国小児科学会は「10代までの子どもは水害後の清掃に関わるべきではない」としています。それ以外でも子どもが手伝えることはあります」
    (引用:教えてドクター佐久さん投稿より)

    ■ 水害後の汚泥に潜むリスク

     注意喚起とともに投稿された画像によると、「水害後の汚泥には、農薬、化学肥料、下水(大腸菌やサルモネラ菌などの細菌)、工業用化学物質等多くの有害物質が含まれている」とのこと。これらにさらされると、皮膚の湿疹や感染性胃腸炎にかかる可能性があります。

    小中学生には水害後の片付けをさせないで

     言われてみればたしかに、砂場で泥遊びをする時の泥とは訳が違い、どこから流れ着いた泥であるかわからないため、こうした見解にも納得感があります。加えて、割れたガラスやクギ等、ケガをする危険物が含まれている可能性も。こう聞くととてもではありませんが、子どもには触らせられませんよね。

     また、川の付近の清掃を行う際には、大人が清掃に集中している間に子どもがおぼれたり、流されたりしてしまう可能性も。

    ■ 大人も対策は万全に

     もちろん、注意が必要なのは子どもだけではありません。我々大人も、汚泥の清掃にあたる際は十分な対策が必要です。

     まずは清掃時の格好。有害物質で汚染された水に触れないよう、長袖長ズボンの服装に、マスクとゴーグル、ゴム手袋、長靴で完全防備して臨みましょう。作業中は暑くなることが予測されますので、帽子やタオルを身に着けつつ、適宜水分補給を行うのが良いでしょう。

     また、「破傷風トキソイドワクチン」の接種も、推奨されています。これは1968年以降出生の方であれば、11歳時に二種混合(DT)ワクチンとして接種していますが、接種後10年で効果が切れてしまうので、22歳以降の方は1回の追加接種が必要です。

    破傷風予防注射証明書

     1968年以前出生の方は、定期接種していないので基礎免疫がありません。感染症を防ぐためには、3回接種しておきましょう。これは災害時の被災地ボランティアでも推奨されていることです。

    破傷風予防注射証明書 中ページ

    破傷風予防注射証明書 注意書き

    ■ 水害後の片付けの手伝いは美談ではない

      報道等にて、こうした作業を子どもたちが手伝うことは、何かと美談として取り上げられがちですが、前述の通り衛生面の問題が多く、とても薦められるべきことではありません。

     一緒に清掃をして、家庭や地域に貢献したい……という思いは尊重すべきですが、そこは気持ちだけで十分。大人が冷静になって止めてあげる必要があります。

     汚泥の清掃は大人に任せて、子どもたちには家の中の危険でない場所の片付けや、より小さな子どもの遊び相手をしてもらうなど、子どもが安全に行える手伝いを探してあげるようにしましょう。

    <記事化協力>
    教えてドクター佐久さん(@oshietedoctor

    ※本文掲載の「破傷風予防注射証明書」は編集部にて撮影(編集部員の私物です)。

    (山口弘剛)

    あわせて読みたい関連記事
  • フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造
    インターネット, 社会・物議

    フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウント…

  • 「携帯見せてください」令和の子どもが遊ぶ“進化したお店屋さんごっこ”が話題
    インターネット, おもしろ

    「携帯見せてください」令和の子どもが遊ぶ“進化したお店屋さんごっこ”が話題

  • これは完璧に隠れているね……2歳児の“本気のかくれんぼ”が可愛すぎる
    インターネット, おもしろ

    これは完璧に隠れているね……2歳児の“本気のかくれんぼ”が可愛すぎる

  • あなたならどうする?3歳とのババ抜きで丸見えのジョーカーに母、葛藤
    インターネット, おもしろ

    あなたならどうする?3歳とのババ抜きで丸見えのジョーカーに母、葛藤

  • エレコム、モバイルバッテリーの「PSEマーク」確認を呼びかけ 特にネット購入時は注意
    インターネット, 社会・物議

    エレコム、モバイルバッテリーの「PSEマーク」確認を呼びかけ 特にネット購入時は…

  • 「カクヨム」短期間の大量投稿に注意喚起 背景にAI生成作品の急増か
    インターネット, 社会・物議

    「カクヨム」短期間の大量投稿に注意喚起 背景にAI生成作品の急増か

  • 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」
    エンタメ, 芸能人

    嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現…

  • 北海道の人気アナ・斉藤こずゑさん、Xアカウントが乗っ取り被害 番組公式が注意呼びかけ
    インターネット, 社会・物議

    北海道の人気アナ・斉藤こずゑさん、Xアカウントが乗っ取り被害 番組公式が注意呼び…

  • 大好きな粉薬が切れて泣く3歳児 悩んだ親が与えた食材に「健康的」
    インターネット, おもしろ

    大好きな粉薬が切れて泣く3歳児 悩んだ親が与えた食材に「健康的」

  • 「あっ!来年ですね~」 ホテル予約の日付を1年間違えた投稿に共感と笑い
    インターネット, びっくり・驚き

    「あっ!来年ですね~」 ホテル予約の日付を1年間違えた投稿に共感と笑い

  • 山口 弘剛‌Writer

    記事一覧

    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 白菜の黒い斑点はポリフェノールだった 農林水産省が「捨てないで」と呼びかけ
    ライフ, 雑学

    白菜の黒い斑点はポリフェノールだった 農林水産省が「捨てないで」と呼びかけ

  • クッピーラムネがまさかのSwitch2用ワイヤレスコントローラーに レトロかわいさ全開&機能盛り盛りの本格派で登場
    ゲーム, ニュース・話題

    クッピーラムネがまさかのSwitch2用ワイヤレスコントローラーに レトロかわい…

  • フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造
    インターネット, 社会・物議

    フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウント…

  • 俳優・坂東龍汰さんがナレーション ダスキンの新WEBCM「想い愛、ずっと。」が公開
    エンタメ, 芸能人

    俳優・坂東龍汰さんがナレーション ダスキンの新WEBCM「想い愛、ずっと。」が公…

  • 犬生初の床暖房に出会ったハスキー 喜びを全身で表現
    インターネット, おもしろ

    犬生初の床暖房に出会ったハスキー 喜びを全身で表現

  • 「とんがりコーン」にまさかのロイヤルミルクティー味爆誕 女子栄養大生が考案した新提案
    商品・物販, 経済

    「とんがりコーン」にまさかのロイヤルミルクティー味爆誕 女子栄養大生が考案した新…

  • トピックス

    1. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…
    2. フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造

      フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造

      SNS上には今日も、「○○が当たる!」といったプレゼント告知があふれています。いまや日常の景色と言っ…
    3. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      11月22日午前、X(旧Twitter)のトレンドに「宙組公演特別メニュー」が一時浮上し、ファンの間で大きな話題となりました。きっかけとなっ…
    2. ミラノで開催「IQOS Curious X Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      ミラノで開催IQOS X SELETTI「Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      フィリップ モリスが、イタリアでイベント「Sensorium Worlds」を開催。今回は、この壮大なイベントの模様とともに「IQOS To…
    3. 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月18日18時、新たな投稿を…
    4. 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      俳優の松山ケンイチさんが11月17日、自身のXアカウント「松山ケンイチ(@K_Matsuyama2023)」でユーモア企画「誰も傷つけない悪…
    5. 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月17日、作品の掲載順に関す…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト