「うちの本棚」、今回は矢口高雄の『幻の怪蛇 バチヘビ』です。個人的には矢口の代表作のひとつととらえていますし、本作によって「バチヘビ(ツチノコ)ブーム」が日本中を沸かせたという印象も強い作品です。

本書は昭和48年「少年マガジン」に掲載され、その後4話まで断続的にシリーズ作品として描かれ、KCコミックスとしても刊行された『幻の怪蛇 バチヘビ』に、作者・矢口高雄自身の経験談『バチヘビ始末』をプラスして刊行された雑誌版の作品集である。


表紙には「連載後初のB5判大型サイズで迫力ある画面!」とのコピーも入っている。

最初の単行本で読んだのは、すでに『釣りキチ三平』で人気作家になっていた時期だったのだが、雑誌の初出では未見だったため、B5サイズでは本書が初めてということになる。相当なブランクを置いての再読ということもあり記憶にあったシーンが印象とは違っていたりもしたのだが、作品そのものの面白さは変わっていなかった。

この作品によってバチヘビ(いやツチノコと言った方が通りがいいと思うが)ブームが起きたのは間違いがないだろう。その前後にもネッシーなどのUMAが話題になったりはしていたが、なんといっても国内で、自分たちの身近に謎の生物が存在しているという感覚がわくわくする気持ちにさせた。
『釣りキチ三平』でもそうだったが、本作でも舞台のほとんどは矢口の故郷である秋田の山間部であり、自然描写がふんだんに盛り込まれている。

バチヘビ自体は現在でも捕獲されていないので客観的で正確な描写というのはできないわけだが、本作では矢口が目撃した記憶と過去の目撃例から推測したバチヘビが描かれている。個人的にはバチヘビ(ツチノコ)の外見的特徴というのは本作のイメージが強くなっている。
『バチヘビ始末』という作品は本書が初読だったのだが、『バチヘビ』執筆に至る経緯や矢口自身の目撃談など興味深い内容の作品だった。

正直言って矢口高雄の作品はあまり読んではいない。『釣りキチ三平』も10巻ほどまで読んだだけじゃなかったかと思う。しかし本作品に関しては好きな作品であり、矢口高雄の代表作のひとつとしていいのではないかと思っている。

書 名/幻の怪蛇 バチヘビ
著者名/矢口高雄
出版元/講談社
判 型/B5判
定 価/370円
シリーズ名/少年マガジン名作コレクション
初版発行日/2004年9月19日
収録作品/幻の怪蛇 バチヘビ(1~4話)、バチヘビ始末、最新ツチノコ情報局(記事)

(文:猫目ユウ)