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【うちの本棚】第八十一回 竜神伝説/横山光輝

「うちの本棚」、今回は横山光輝の未刊の時代劇コミック『竜神伝説』です。琵琶湖を舞台に水中に潜ることもできる亀甲船をめぐって展開するストーリー…だったはずですが…。

横山光輝はSFと時代物(とくに忍者物)が2本柱の漫画家だったと言っていいだろう。そんな横山作品の中でも掲載誌の休刊のため未刊に終わった本作は長く埋もれていた。


  • 双葉社の少年マンガ誌「少年アクション」に76年5月~9月にわたって連載された作品だが、掲載誌の休刊に伴い未刊、また掲載誌が隔週刊行だったこともあり分量的にも単行本化されなかったのではないかと推察する。とはいえ連載当時に目にしていた読者のひとりとして講談社文庫での初単行本化は嬉しかった。

    時代は応仁の乱の真っ只中、琵琶湖を制する水中戦艦(という言い方をするとSF的になってしまいますが)亀甲船を密かに建造する竜神組に拾われた一太郎を主人公にストーリーは展開していく。竜神組の頭・幻也斉は混乱した世の中を治めようとの信念から亀甲船を作り琵琶湖を征し世の中を征しようとしていた。そしていよいよ亀甲船は完成し琵琶湖にその姿を沈めていくところで作品は終わっている。

    壮大なストーリーの序盤だけといった雰囲気でなんとも残念ではあるが、それだけにその先の展開を想像するとわくわくする。

    正直、連載中はあまり真剣に読んでいなかった作品ではあった。当時は地味な印象の時代劇漫画はあまり興味がなかったので仕方がないが、いま読み返してみると掲載誌が休刊していなければ横山の代表作のひとつになっていたのではないかとさえ思える。同時期には『魔界衆』という代表作も描かれているからだ。

    SF作品を中心に他の漫画家によるリメイクも行われている横山作品だが、本作も描かれなかった部分も含めたリメイクを誰か手がけてくれないだろうか。
     

    書 名/竜神伝説
    著者名/横山光輝
    出版元/講談社
    判 型/文庫版
    定 価/680円
    シリーズ名/講談社漫画文庫
    初版発行日/2007年8月10日
    収録作品/竜神伝説

    (文:猫目ユウ)

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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