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【うちの本棚】第八十九回 仮面の忍者 赤影/横山光輝

「うちの本棚」、今回は特撮テレビドラマとしても有名な『仮面の忍者 赤影』です。横山光輝原作コミックは、忍者モノとしてもそのスピーディーな展開が魅力です。

テレビドラマでもお馴染みの、横山光輝による忍者コミックのひとつ。
当初のタイトルが『飛騨の赤影』であったことはファンには知られていると思うが、テレビドラマ化決定によって連載途中から『仮面の忍者 赤影』に変更された。


  • 当初の「飛騨の」というタイトルは、連載誌が横山の代表作のひとつ『伊賀の影丸』と同じ「少年サンデー」であったことからつけられたと推察する。「伊賀の影丸」「飛騨の赤影」と並ぶとわかりやすいと思うが、単独でテレビドラマ化するにあたっては「仮面の忍者」とした方がインパクトがあったのは間違いない。

    横山作品の場合、ドラマ化、アニメ化される際に大胆といっていいほどの改変がなされることが多い。横山自身が原作を基に自由にしてもらってかまわないというスタンスだったように記憶するが、本作も第一部の「金目教の巻」の大筋で原作に沿ったドラマ化が行われたほかは、登場人物の名称だけがドラマで使われたという印象で、ストーリー自体は別物となっている。またドラマで印象的な活躍をした白影などは、むしろ原作コミックがドラマから持ち込んだという印象すらある。
    『伊賀の影丸』がそうであったように、本作でも赤影ら飛騨忍者と敵対する霞谷七人衆、うつぼ忍群といった個性ある忍者集団との対決となっている。もっとも赤影側飛騨忍者は、赤影と青影がメインとなっていてほかの影の名を持つ忍者の活躍はそれほど描かれていない(登場するのは白影、黒影、紅影らでそれぞれに得意の技も披露している)。とくに第一部では赤影対七人衆という印象である。

    赤影がなぜ仮面を着けているかという説明は最後まで語られなかったが、第一部では仮面自体が切り札の武器になるシーンがある。

    本作は連載後、「少年サンデー」の別冊としてまとめられたほか、秋田書店の「サンデーコミックス」からも刊行された。講談社のハードカバー判上下巻は「原作完全版」という名目で、連載中の「あらすじ」部分も含めての収録である。初出当時の印象をそのままに読むことができるのはいいことだ。

    さきにも触れたが原作コミックとテレビドラマは別物といっていい。原作は原作で十分楽しめる作品なのだが、テレビドラマの印象が強すぎるというのも正直なところ。原作コミックを読んでいても、ドラマ版を観たくなってしまう。

    書 名/仮面の忍者 赤影
    著者名/横山光輝
    出版元/講談社
    判 型/四六判
    定 価/各1800円(上下巻)
    シリーズ名/なし
    初版発行日/上巻・2007年4月28日、下巻・2007年5月28日
    収録作品/上巻・第一部 金目教の巻、下巻・第二部 うつぼ忍群の巻、第三部 決戦うつぼ砦の巻

    (文:猫目ユウ)

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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