レイセオンは2020年7月26日(現地時間)、アメリカミサイル防衛局から7基のAN/TPY-2レーダーを総額23億ドル(約2430億円)で受注したと発表しました。AN/TPY-2は弾道ミサイル迎撃システムTHAADのレーダーとしても知られ、今回の契約はサウジアラビア向けの有償軍事供与の一部となっています。

 AN/TPY-2は、Xバンド(8~12GHz帯)を使用した移動式フェイズドアレイレーダー。次世代パワー半導体の窒化ガリウム(GaN)を素子に採用したことで、従来よりコンパクトで高出力となっています。

 特徴は2つのモードで動作できること。前方配置モードでは弾道ミサイルの発射時点から捕捉・追跡が可能で、THAADミサイルランチャーと連携したターミナルモードでは、THAADミサイルを目標まで誘導します。複数のレーダーをモードを変えて配置することで、きめ細かな弾道ミサイル防衛網が構築できます。

 レイセオンのミサイル&ディフェンス部門で、戦略ミサイル防衛を担当するブライアン・ロッセリ副社長は「これらの高性能なXバンドレーダーは、世界規模のミサイル防衛システムにおいて最も鋭い目となります。窒化ガリウムの採用により、信頼性の高いレーダー性能に脅威を捕捉・追跡・識別する能力が付加されました」とAN/TPY-2の性能を評しています。

 中東地域へのTHAAD配備は、2019年3月にアメリカ陸軍がイスラエルへ1個中隊を派遣した実績があります。しかし、SLAM-ER巡航ミサイル650発に続き、最新鋭のレーダーをサウジアラビアに売却する決定を下したことは、この地域におけるアメリカのプレゼンスをより明確にする意図もありそうです。

<出典・引用>
レイセオン ニュースリリース
Image:Raytheon/U.S.Army

(咲村珠樹)