アメリカ海軍は2020年10月19日(現地時間)、ステルス駆逐艦ズムウォルトが初めてSM-2ミサイルの発射を実施したと発表しました。現在多くの艦艇で採用されているミサイル発射システム、Mk.41VLSの改良型であるMk.57を採用するズムウォルト級駆逐艦。この試験で、舷側設置型のMk.57使用時における艦の影響も調査しています。
ステルス性を重視した特異な外観をはじめ、数多くの新機軸を採用したズムウォルト級駆逐艦。このため建造費が高騰して同型艦は3番艦までで調達が打ち切られ、結果として将来装備の実験艦に近い存在になってしまいました。
様々な先進装備を搭載したズムウォルト級ですが、ミサイル発射システムであるVLS(垂直発射システム)についても、従来のMk.41を改良したMk.57を採用しています。Mk.41は艦の中心線に沿った場所に搭載されますが、Mk.57は「Peripheral Vertical Launching System(周辺配置垂直発射システム)」の別名が示す通り、艦の中心線ではなく左右の舷側に近い場所に搭載されています。
アメリカ海軍の発表によると、ズムウォルトのMk.57によるSM-3実射試験は10月13日、カリフォルニア州沖のポイントマグー海上試験場で実施されました。試験では対艦巡航ミサイルに対する迎撃を想定し、飛来する標的ミサイルを探知・追跡し、SM-2ミサイルで撃破するというシナリオで進行しました。
試験において、飛来する標的ミサイルを捕捉したズムウォルトはSM-2を発射し、標的を撃破。SM-2は左右両舷のMk.57から発射され、艦の中心線に搭載される従来のMk.41とは違うミサイル発射法にともなう艦の動揺や、危険性についての調査が実施されました。
アメリカ海軍で、ズムウォルト級開発計画のマネージャを務めるマット・シュローダー大佐は「今回の試験成功はミサイルによる個艦防衛能力を実証しただけでなく、海軍の最も技術的革新に満ちた艦船において、より高度な戦闘システムの試験と運用に向けた重要なステップでもあります。ズムウォルトの乗組員と第1水上開発隊(Surface Development Squadron 1)は、装備開発メーカーと手に手を取って、この船の作戦能力獲得に向けて前進していきます」と、今回のSM-2発射試験成功を受けてコメントしています。
ズムウォルト艦長のゲーリー・ケイブ大佐は、今回のミサイル発射試験について「この素晴らしいズムウォルト級駆逐艦にとって重要なマイルストーンであると同時に、ズムウォルトの才能に恵まれた乗組員と、この船の能力を艦隊にもたらすのに協力してくれた技術者、設計者、そしてプログラマーの多大なる努力とパートナーシップの集大成でもあります」とコメントし、試験に携わったすべての関係者の献身に感謝の意を示しました。
ズムウォルトは今後も作戦能力獲得へ向け、様々なシナリオで試験や訓練を重ねます。アメリカ海軍では、2021年にも駆逐艦ズムウォルトが初度作戦能力を獲得すると見込んでいます。
<出典・引用>
アメリカ海軍 プレスリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)