アメリカ陸軍とノースロップ・グラマンは2020年8月20日(現地時間)、次期ミサイル迎撃システムの中心となる統合戦闘指揮システム(IBCS)のミサイル捕捉追跡試験を成功裏に終了させたと発表しました。試験は2回にわたって実施され、高速な弾道ミサイルと巡航ミサイルの双方とも難なく捕捉・追跡に成功したといいます。
アメリカ陸軍が導入を進める次期ミサイル迎撃システムは、弾道ミサイルと巡航ミサイルの双方に対応し、適切なタイミングで迎撃することを目的としています。
1つのシステムで対応できれば装備も単純化され、配備するにも便利なのですが、超音速で落下する弾道ミサイルと、複雑な経路を水平飛行する巡航ミサイルでは特性が違うため、技術的なチャレンジが必要となります。
ニューメキシコ州のホワイトサンズミサイル試験場で実施された試験では、8月13日と20日の2回にわたり、実際に弾道ミサイルと巡航ミサイルを発射して、捕捉・追跡から迎撃までが可能かテストされました。
アメリカ陸軍第43防空砲兵連隊の第3大隊が参加し、レーダーはペトリオットのものとセンチネル・レーダーが2つずつ、そして迎撃ミサイルはペトリオットPAC-2、PAC-3、PAC-3MSEを混合した発射機を4基使用しています。
標的用のミサイルは様々な場所から、それぞれ異なった高度、速度で発射されます。レーダーで探知された情報は、テント内に設置された統合戦闘指揮システム(IBCS)が受信。目標の種別を判定し、射撃管制システムが巡航ミサイルであればPAC-2、弾道ミサイルであればPAC-3と、最適な迎撃ミサイルを選択し発射される仕組みです。
試験が成功に終わり、アメリカ陸軍のミサイル・宇宙部門におけるプログラムを統括するロブ・ラッシュ少将は「まず、素晴らしい働きをしてくれた第43防空砲兵連隊第3大隊の諸君に、最大級の賛辞を贈りたいと思います。彼らは、昨年から始まった新装備の運用訓練から今回のミサイル迎撃試験に至るまで、レーザービームのように真っ直ぐかつ確固たる献身を貫いてくれました。お陰で我々の航空機・ミサイル防衛における統合化を前に押し進めることができます」と、実施部隊に感謝するコメントを発表しています。
また、今回の試験結果についてラッシュ少将は「非常に複雑なミサイル迎撃試験でしたが、複数の目標を兵士たちが的確に捕捉・判別して追跡し、撃破に成功する様子は目を見張るものがあり、航空機ミサイル統合迎撃システムの優れた技術を見事に実証してくれました。さらにシステムを磨き上げ、2022年に予定されている初度運用開発試験を完遂できるようにしていきますが、最初の対応部隊となった第43防空砲兵連隊第3大隊の諸君ならば大丈夫だろうと、私は全幅の信頼を置いています」と語り、非常に満足のいくものであったことを示唆しました。
この統合航空機・ミサイル防衛システムは、アメリカ陸軍の将来防空システムの中心的存在になります。ライアン・マッカーシー陸軍長官は「将来における技術的優位性を確保するためには、このシステムが必要です。そこにたどり着けるか疑問を挟む余地はなく、達成しなければいけない目標なのです」と、この開発計画の重要性を強調しています。
今回の試験成功を受け、アメリカ陸軍は次の段階へ計画を進めるべく、システムの製造と実地試験を重ねるとしています。
<出典・引用>
アメリカ陸軍 ニュースリリース
ノースロップ・グラマン ニュースリリース
Image:U.S.Army
(咲村珠樹)