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日本初開催! レッドブル・エアレース千葉大会(日曜日・決勝レース編)

午後からの決勝レースを控えて、幕張のメディアセンターで開催地である千葉市の熊谷市長、レース用特設飛行場が開設された浦安市の松崎市長、そしてレッドブル・エアレースのウルフGMが出席して記者会見が行われました。

  • 【関連:日本初開催! レッドブル・エアレース千葉大会(日曜日・決勝ハンガー編)】

    レース前に行われた記者会見

    レース前に行われた記者会見

    この記者会見で、観客数がレッドブル・エアレース史上最高となる12万人(予選・決勝各6万人)にのぼったことが発表されました。また、次回以降も千葉開催を継続して行いたい、という希望が、出席者全員から表明されました。国がどう動くか、注目ですね。

    ■「通好み」のチャレンジャーカップ

    マスタークラスの決勝レースに先立ち、2014年シーズンから新たに設定された下部カテゴリー、チャレンジャーカップのレースが行われます。これはレッドブル・エアレースの入門編として、多くのパイロットに参加してもらい、マスタークラスのパイロットを養成するとともに、裾野を広げる役割を果たすもの。出場するパイロットは、全8戦のうち任意の3戦以上に参加し、シーズンの最後にポイント上位の6名によるチャンピオン決定戦を行う仕組み。昨年最多の3勝を挙げた(開幕から3連勝)ルボット選手と、ベラルデ選手が今シーズン(2015年)からマスタークラスにステップアップしました。

    トラックはマスタークラスが使用するものをアレンジし、若干難易度が下がったもので、使用する機体は、主催者が用意したエクストラ330LX。自分で機体を所有する必要がないので、機体やチーム維持に関する金銭的負担が少なく、また事実上機体の性能差が存在しないので、パイロットの技量がそのまま反映されます。単純な「前座レース」ではなく、ある意味非常に通好みなカテゴリーと言えるかもしれません。

    チャレンジャーカップのレース

    チャレンジャーカップのレース

    千葉大会では8人中6人が参戦し、勝ったのはチェコのペトル・コプシュタイン選手。チェコを代表するエアロバティックパイロットであり、経済学修士(数理経済学)でチェコとスロバキアに複数の事務所を構えるビジネスマンでもあります。その飛行を動画でどうぞ。

    ▼動画

     
    ■マスタークラスの緒戦、ラウンド・オブ14

    千葉大会のレーストラック図(画像提供:Red Bull)

    千葉大会のレーストラック図(画像提供:Red Bull)

    直線的レイアウトながら、シケインのライン取りでその後(ゲート3・ゲート4)の展開が左右される難しさがあり、両端部の折り返し(QVCマリンスタジアム側の「千葉マニューバ」と、ゴール側の「幕張ターン」)でのオーバーGに気をつけることがこのコースの特徴(ポール・ボノム選手談)。いよいよ決勝が始まります。

    ヒート1:●ピート・マクロード(50秒785+5秒) 対 ◯マイケル・グーリアン(52秒976)

    カナダのマクロード選手は、グーリアン選手を大きく上回るタイムを記録しましたが、前半の折り返し点手前にあるゲート4でパイロンヒットにより3秒のペナルティ、最後の折り返しとなる「幕張ターン」ことゲート10で姿勢違反(インコレクト・フライトレベル)で2秒のペナルティがそれぞれ加算され、無念の敗退。

    マクロード選手は
    「昔のようにアグレッシブに攻められたんだけど、その代償は高くついたね。でも、ペナルティがなければ全体で2番目のタイムだし、悲観してはいないよ」
    とのレース後コメントを残しています。

    ピート・マクロード選手は5秒加算で敗退

    ピート・マクロード選手は5秒加算で敗退

    ヒート2:●ナイジェル・ラム(51秒826) 対 ◯マット・ホール(50秒888)

    ウイングレットを装着したMXS-R同士の対戦となったヒート2。事前に「僅差の争いになるかも」と言っていたホール選手が1秒以上の差をつけて勝利。しかし、ラム選手は敗退した選手の中での最速タイムを記録。「ファステストルーザー」としてラウンド・オブ8に進出しました。

    ファステストルーザーとなったラム選手

    ファステストルーザーとなったラム選手

    ヒート3:◯室屋義秀(50秒779) 対 ●マルティン・ソンカ(52秒753+2秒)

    室屋選手が51秒を切る驚異のタイムで駆け抜けました。これは予選を含む千葉大会のトラックレコード。後攻となったソンカ選手は、前半は室屋選手を上回るタイムを記録したものの、無理がたたったかゲート4で姿勢違反(インコレクト・フライトレベル)を犯して2秒のペナルティ。以降ライン取りが崩れてしまいました。室屋選手のタイムが出た瞬間、会場は大きく沸きました。

    ソンカ選手は
    「前半は速く行けたんだけど、折り返しのバーティカルターンでオーバーGを怖れてしまい、攻めきれなかった」
    とのレース後コメントを残しています。

    ラウンド・オブ14での室屋選手

    ラウンド・オブ14での室屋選手

    トラックレコードをマークした室屋選手

    トラックレコードをマークした室屋選手

    ゲート3に向かうソンカ選手

    ゲート3に向かうソンカ選手

    ヒート4:●ハンネス・アルヒ(52秒837+2秒) 対 ◯ポール・ボノム(51秒560)

    朝からナーバスな様子を見せていた先攻のアルヒ選手。前半は15秒948となかなかの入りを見せたものの、シケイン通過後のゲート3で姿勢違反(インコレクト・フライトレベル)。それが響いて後半は大事に行ったのか、タイムを落としてゴール。ボノム選手は終始安定したフライトでした。

    アルヒ選手は
    「怖れていた訳ではないんだけど、心構えが十分ではなかった。昨日の(トレーニングや予選で記録した)オーバーGを怖れるあまり、ハードに攻めることができなかった。(折り返しの)バーティカルターンで大きく旋回したんだけど、それが高い代償となったね。ハードに攻められなかったのが敗因だと思う」
    とのレース後コメントを残しています。

    ラウンド・オブ14でのアルヒ選手

    ラウンド・オブ14でのアルヒ選手

    なめらかなフライトを見せるボノム選手

    なめらかなフライトを見せるボノム選手

    ヒート5:●フアン・ベラルデ(54秒241) 対 ◯カービー・チャンブリス(54秒106)

    チャンブリス選手がルーキーのベラルデ選手が終始リードし、ゴール。貫禄を見せつけたレースでした。ベラルデ選手は後半タイム差を縮めたものの及ばず。

    ベラルデ選手は
    「全体的には良かったけど、それと同時にガッカリもしているよ。昨日より2秒も遅くなってしまったからね。カービーとはこの週末を通して、我々の方が0.1秒は遅いとみていたから、僅差で負けたことは不思議じゃない。9位は立派な成績だよ」
    とのレース後コメント。

    ベラルデ選手と中継用ヘリ

    ベラルデ選手と中継用ヘリ

    カービー・チャンブリス選手

    カービー・チャンブリス選手

    ヒート6:●ピーター・ベゼネイ(55秒928+4秒) 対 ◯マティアス・ドルダラー(55秒050)

    ベゼネイ選手はゲート3とゲート4で姿勢違反。タイムも振るわぬものでしたが、レース後
    「この週末は、終始燃料供給ライン(フュエルライン)に問題を抱えていた。お陰でターンするごとにエンジンがバラついてしまい、思い通りに飛べなかったんだ。次戦のロヴィニまでにラインを短くして、症状が治まるように改修してみる」
    とコメントしていました。大きなポテンシャルを秘めるコーバス・レーサーですが、開発・熟成に難航しているようです。

    燃料配管にトラブルを抱えていたベゼネイ選手

    燃料配管にトラブルを抱えていたベゼネイ選手

    ヒート7:●フランソワ・ルボット(57秒279+3秒) 対 ◯ニコラス・イワノフ(53秒101+2秒)

    イワノフ選手が大差で勝利したものの、ゲート4の姿勢違反(インコレクト・フライトレベル)で2秒加算のペナルティ。先攻のルボット選手はゲート4でパイロンヒットで3秒加算のペナルティ。タイムも振るわずに終わりましたが、レース後
    「EFIS(Electronic Flight Information System=機体のセンサーが計測した進入速度など各種データを表示できるレッドブル・エアレース用統合計器)が不調で、スタート時に制限速度をオーバーしていてDNF(ゴールせず=リタイヤ扱い)だと思ってしまったんだ。お陰でシケインの進入を誤ってしまった。まだこの機体に慣れていないので、違和感が残っている。もっと飛んで慣れていかないといけないね」
    というコメントを残しています。ひょっとしたら、前日に起きたマグネトー(発電機)のトラブルが影響し、電装系の動作が不安定になっていたのかもしれません。

    スタートするルボット選手

    スタートするルボット選手

    ■ラウンド・オブ8

    ラウンド・オブ8の組み合わせとスタート順は以下の通り。いずれも左側が先攻です。

    ヒート8:マイケル・グーリアン 対 マット・ホール
    ヒート9:室屋義秀 対 ポール・ボノム
    ヒート10:カービー・チャンブリス 対 マティアス・ドルダラー
    ヒート11:ナイジェル・ラム 対 ニコラス・イワノフ

    トラックレコードのスーパーラップをたたき出した室屋選手が、無敵(Unbeaten)と称されるボノム選手のプレッシャーに負けず、同じようなタイムをマークできるかに注目が集まりました。

    ヒート8:●マイケル・グーリアン(52秒917) 対 ◯マット・ホール(51秒452)

    ホール選手が1秒465の差を付けて勝利。グーリアン選手は前半からタイムが伸びませんでした。

    ラウンド・オブ8でのグーリアン選手

    ラウンド・オブ8でのグーリアン選手

    ラウンド・オブ8でのホール選手

    ラウンド・オブ8でのホール選手

    グーリアン選手はレース後
    「もっと速く飛べてると思ったんだけど、タイムが遅くてビックリしたよ。ただ、事前のプラン通りの飛行ができたことは収穫だね。アスリートのような情熱で飛べたし、この気持ちを維持して次のロヴィニに向かいたいと思う」
    とのコメントを残しています。

    ヒート9:●室屋義秀(DNF) 対 ◯ポール・ボノム(51秒392)

    ご両親をはじめとする観客の期待を乗せてスタートした室屋選手。

    ラウンド・オブ8、室屋選手コースイン!

    ラウンド・オブ8、室屋選手コースイン!

    シケインを抜け……

    シケインを抜け……

    果敢に攻めるも……

    果敢に攻めるも……

    後ろに控えるボノム選手を意識し過ぎたか、ゴールへ向かう折り返し点であるゲート10「幕張ターン」で無念のオーバーG。DNF(ゴールせず=リタイヤ扱い)となってしまいました。

    無念のオーバーGでフィニッシュ

    無念のオーバーGでフィニッシュ

    オーバーGが伝えられた時、周りのメディアも何が起こったか解らない様子でした。対するボノム選手はミスのないフライトで、ゲート10の手前で室屋選手のタイムを0秒021リードし、自己ベストのタイムをマーク。

    ラウンド・オブ8でのボノム選手

    ラウンド・オブ8でのボノム選手

    ヒート10:●カービー・チャンブリス(53秒631) 対 ◯マティアス・ドルダラー(52秒365)

    後攻のドルダラー選手が前半からチャンブリス選手をリードし、1秒266の差をつけてゴール。

    ラウンド・オブ8でのカービー・チャンブリス選手

    ラウンド・オブ8でのカービー・チャンブリス選手

    ラウンド・オブ8でのマティアス・ドルダラー選手

    ラウンド・オブ8でのマティアス・ドルダラー選手

    チャンブリス選手は
    「ナンバーワンじゃなくてガッカリしてるよ。ただ、アブダビよりは良くなってるね。いい心構えでトラックに向かえたし、それが少しはタイムに反映された。千葉のトラックはチャレンジングだとは思わなかったけど、次のロヴィニは非常にテクニカルなトラックなので、その点については歓迎しているよ」
    とのレース後コメントを残しています。

    ヒート11:●ナイジェル・ラム(52秒448) 対 ◯ニコラス・イワノフ(52秒146)

    ラム選手は前半タイムが伸びず、後半巻き返したものの、イワノフ選手が終始速く、0秒302差で勝利。

    ラウンド・オブ8でのナイジェル・ラム選手

    ラウンド・オブ8でのナイジェル・ラム選手

    ラウンド・オブ8でのイワノフ選手

    ラウンド・オブ8でのイワノフ選手

    ラム選手はレース後
    「週末を終えることができてハッピーだよ。今の時点で、タイトルを獲得した去年より多くのポイントも得ているしね。進歩できててとても幸せだよ!」
    とコメントしていました。昨年シリーズチャンピオンを獲得した実績が、大きなモチベーションとなっているのが判ります。
    ラウンド・オブ8を勝ち抜いたのは

    マット・ホール
    ポール・ボノム
    マティアス・ドルダラー
    ニコラス・イワノフ
    (レース順)

    の4選手です。

    ■最終決戦・ファイナル4

    いよいよ優勝者が決まるファイナル4。まずはマット・ホール選手がスタートし、51秒884のタイムをたたき出します。

    ファイナル4でのマット・ホール選手

    ファイナル4でのマット・ホール選手

    続いて、ポール・ボノム選手がスムーズかつエレガントなフライトで51秒502をマーク。その素晴らしいフライトを動画でどうぞ。

    ▼動画

     

    3番手で登場したマティアス・ドルダラー選手は、途中計時は37秒131とこれまでのトップタイムをマークしながら、ゲート9(最後の折り返し前にあるスタートゲート)で痛恨の姿勢違反(インコレクト・フライトレベル)。ゴール時のタイム51秒903に2秒のペナルティが加算され、53秒903となってしまいました。

    ファイナル4で攻めるドルダラー選手

    ファイナル4で攻めるドルダラー選手

    最後の登場となった予選1位、イワノフ選手。最初の折り返しまでのタイムは16秒185と最も遅いタイム。そこから巻き返しを図りますが、プッシュし過ぎたか最終折り返しとなるゲート10で無念のオーバーG。DNF(ゴールせず=リタイヤ扱い)となってしまいました。

    ファイナル4でのイワノフ選手

    ファイナル4でのイワノフ選手

    イワノフ選手はレース後
    「表彰台に届かなくてイライラしてるよ。いいタイムで行けてると思ったんだけど、オーバーGになってしまって残念だ。今週末を通じていいフライトができたし、ラウンド・オブ8でのナイジェル・ラム選手との対戦は非常にタフだった。いい集中力で自分のフライトができたと思う」
    とのコメントを残しています。

    これにより、優勝はポール・ボノム選手。安定して51秒台半ばのラップを揃え、開幕戦のアブダビに続いて2連勝となりました。2位は同じく開幕戦のアブダビに続いてマット・ホール選手、3位は2度目の表彰台となったマティアス・ドルダラー選手、4位にニコラス・イワノフ選手となりました。ラウンド・オブ8でオーバーGによるDNFとなった室屋選手は8位。

    表彰式中継を見つめる報道陣

    表彰式中継を見つめる報道陣

    レース後、チャレンジャーカップの勝者コプシュタイン選手とマスタークラスのトップ3選手、そして室屋選手が出席した記者会見が幕張のメディアセンターで行われました。会見を前に、表彰台に乗った3選手はリラックスした表情。

    記者会見を前に談笑する選手たち

    記者会見を前に談笑する選手たち

    ■優勝したポール・ボノム選手(イギリス)

    開幕から2連勝、完璧な出だしとなっているが、今後どのようにシーズンを進めていくか
    「基本的に、やることは変わらないと考えている。具体的に言えば、今日の勝利を一旦忘れて、次戦のクロアチアではまた新たな気持ちで向かっていくことだね。連勝したことで慢心してしまいがちだけれども、これからも厳しいレースが続くので、気を引き締めていきたい」

    台風に見舞われてトレーニングができないなど、日本・千葉でのレースについて
    「そうだね、日本の天候は(母国)イギリスと同じで、非常に変わりやすいんだ(これはブリティッシュ・エアウェイズのB747機長として、よく成田空港を発着しているから熟知していると言えます)。今日はいいコンディションだったけれども、今週始めの時点ではこうなるとは予想だにしなかった。レースへ向けての準備が実質2日間(通常なら一週間ほど使える)に圧縮されて混乱した面もあったけど、我々のチームは準備もちゃんとできて、フラットな状態でレースを迎えたと言えるんじゃないかな。しかし、このように日程が圧縮されても運営ができると証明されたのは、将来とても役立つんじゃないだろうか。水曜日の早朝に『OKみんな、(設営を含めて)4日間でやるぞ』と言って、本当にやり遂げたスタッフ達には本当に頭が下がるよ。ビールでもおごらなきゃね」

    過去2度のシリーズチャンピオンに輝き、今回で41度目の表彰台、そして通算17勝目となったが、この千葉での勝利はどのような位置を占めるのか、という質問には
    「これはどのパイロットも思っていることかもしれないが、ここでレースをするのはとても楽しかったよ。これまで日本で、様々なエアショウなどの航空行事に参加してきたけれども、ここの人々は航空(アビエーション)を愛している。そんな多くの人が詰めかけて、非常に良かったんじゃないだろうか。そして個人的なことを言えば、今日は自分にとって60回目のレッドブル・エアレースだったんだ。千葉のような良いホスピタリティの場所で、記念すべきレースをできたのは、非常に良かったと思っているよ」

    質問に答えるボノム選手

    質問に答えるボノム選手

    ■2位のマット・ホール選手(オーストラリア)

    戦連続で2位となり、非常に幸先の良いシーズンになっているが
    「日本でレースができて喜ばしいし、再び表彰台に立てたことは、僕個人だけでなく、チームのお陰だと思う。早く隣の彼(ボノム選手)の場所に立ちたいけどね(笑)。スムーズにレースができたし、スタッフの働きもあって2位になることができた。本当にハッピーだし、今回は家族も一緒に来たんだけど、ここは本当にいい場所だね。家族の前でいいところも見せられたし」

    今回のトラックはちょっと楽(イージー)なんじゃないかという話については
    「とてもユニークなトラックだったと思う。レース前はイージーじゃないかと思ったんだけども、実際に飛んでみるとゲートは微妙に位置がずらしてあるし、特に(シケインを抜けた後に待ち構える)ゲート3からゲート4へとまっすぐ駆け抜けようとすると、非常にチャレンジングなコーナーリングを要求される。そして大きく(180度)旋回するトラックで大きなGがかかり、簡単に(制限の)10Gに達してしまう。それが大きなポイントだね。我々のチームも色々攻略法を探ったけれども、自分の判断で(折り返しでは)速度を調整してターンするようにしていた。レッドブル・エアレースにとっては、速度が要求され、そしてGに注意して旋回しなければならないという、新たな様相(アスペクト)ができたんじゃないか、その最初の例だと思っているよ」

    2位のマット・ホール選手

    2位のマット・ホール選手

    ■3位のマティアス・ドルダラー選手(ドイツ)

    自己ベストタイとなる3位表彰台(2度目)、予選でも過去最高のパフォーマンスとなったが、どのような形でレースに臨んだか
    「まずは日本、そして千葉にありがとうと言いたい。結構プレッシャーもあったんだけども、最終的に確信の持てる状態になり、いい結果となったことは嬉しい。できればこれからもシーズン通してこのようなパフォーマンスができるといいな、と思っているよ。今回は1秒ほどの間に8人がひしめく激戦となったけれど、多くの選手がこの(上位3選手しか座れない)テーブルにつきたいと思っている中、アブダビでは恵まれなかった運によって、この場所にいられることはよかったと思う」

    レッドブル・エアレースのパイロットとして、どのような努力をしているのか
    「(英語の元質問より日本語訳された質問が短かったので)君(英語のメインインタビュアー)よりも、彼女(日本語通訳)の方が早口だね(笑)。いくつかのコンビネーションが必要だ。まずいい飛行機、そして優秀なチームスタッフ、そして一番重要なのは『自信』だね。『自分は誰よりも速く飛べる』と信じることが重要で、誰もが思っていることだけれど、表彰台の常連を目指しているし……(隣にいる)マットとポールは違うかもだけど(笑)、ヨシ(室屋選手)や僕は、そう思っているよ。とにかく自信を持つことだね」

    決勝の朝にハンガーで行ったジャグリングについて、何かいい影響があったか質問しましたが
    「そうだね、わずかでもいい影響をもたらしたとすれば、ジャグリングで脳の活性化が図れたことによって、トラックに出た際、研ぎすまされた感覚で行けたんじゃないかな」

    自己ベストタイの3位となったドルダラー選手

    自己ベストタイの3位となったドルダラー選手

    ■チャレンジャーカップの勝者、ペトル・コプシュタイン選手

    2014年チャレンジャーカップのシリーズチャンピオンでもあるコプシュタイン選手。チャレンジャーカップについて
    「まず、マスタークラスの勝者と表彰台に上った選手達におめでとうを言いたい。また、この大会実現に携わった関係者の尽力にも感謝したい。日本は僕にとって訪れたい国のトップリストに載っている国だから、こうやって来られてとても嬉しい。チャレンジャーカップは、レッドブル・エアレースのパイロットを選抜する重要なもので、マスタークラスのパイロットになる為に、非常に良い養成シリーズ(インキュベーター)になっているんだ。マスタークラスのレースを見て、同じようなコンディションで競われる……使用する機体は多少違うけれども、そのレースを通じて(マスタークラスに)必要なものを得ていくようになっているんだ」

    チャレンジャーカップに参戦している全てのパイロットが思っていることだと思うが、マスタークラスにステップアップする為に、どれくらいの努力が必要だと思うか、そして今度はマスタークラスのパイロットとして再び千葉に来たいと思うか
    「チャレンジャーカップに参戦しているパイロットにとって、マスタークラスに昇格するのは夢だよ。僕にとっても、目をキラキラさせて(big eyes)夢見ていることなんだ。チャレンジャーカップのレースで頑張って、将来そういう(マスタークラスのパイロットとして千葉でレースをする)ことになるといいな、と思っているよ」

    チャレンジャーカップの勝者ペトル・コプシュタイン選手

    チャレンジャーカップの勝者ペトル・コプシュタイン選手

    ■8位となった室屋選手

    優勝はならなかったもののトラックレコードをマークし、この千葉で「最速の男」となった室屋選手。ラウンド・オブ8でのポール・ボノム選手との対戦について
    「そうですね……ラウンド・オブ8に勝ち上がった時、ポール・ボノム選手と飛ぶことが判っていたので、チームとしては、もう全開も全開、100%で行くという作戦で臨みました。フライトは……いい感じで行ってたんですけど、101%くらい力が入ったもんですから、少し、オーバーGするという結果になりました」

    過去最高となった観客数を記録した千葉、そして新しい機体、トラック最速となったことについて、そして2015年シーズンの展望について
    「まずこの千葉の空で我々レースさせていただいたことに、感謝をします。日本でレッドブル・エアレースを開催するにあたって、非常に障害が……障害っていうかね、壁が色々あったんですけども、それを乗り越えた日本のチームに感謝したいと思います。そういった努力があって我々レースをさせていただいて、こういった多くの、メディアを含めファンの方々に見ていただいた結果、我々チームはスポンサーをいただいたりして、すごく強くなることができました。今年のシーズン、まだあと6戦ありますけど、非常にチームはここで大きなステップを踏んだと思っています。フライトの結果、非常にいい結果が出てきていますので、ここは大きなステップ、チームの準備の結果としてはいいものが得られたので、これから次に繋がっていく手応えが掴めています」

    千葉大会実現までの年月を振り返って
    「こういったレースとか、飛行機、小型飛行機による航空スポーツは日本で少ないので、(自分が飛び始めた)20年前はほとんど誰も知らないという世界から始まったのが大変でした。今、今日は(2日間合わせて)12万人という観客に見ていただいて、これだけ(メディアで)紹介していただいて、かなり知っていただいたと思うんですけど、今までやってきた成果として、ものすごい観客の前で飛べた、という今日が、人生で一番いい日だったと思います」

    福島に拠点を置く室屋選手、福島への思いについて
    「我々はこうやって飛行機で世界中飛んでますけど、飛行機は滑走路と基地が必要です。我々は福島のふくしまスカイパークに(東日本大震災の前から)ホームベースを置いて、そこを拠点に活動させてもらって、そこでトレーニングを日々積むことで世界の強豪達と戦っています。福島の空を飛ばせてもらって……空はみんなのものなんですけど、勝手に使わせてもらって飛んでる訳で、県民の理解と支援があって、はじめて世界のバケモノたちと戦える訳なんですよね。ですから本当に感謝を申し上げるところなんですけども、私としてはね、勝手に福島の総力を挙げて戦ってると思ってます。……けど(会場のここは)千葉県なんで、あまり言いにくかったですけどね(笑)」

    また、別の機会(金曜日の単独会見)では
    「福島に関してですが、国内ではもう『終わったこと』みたいに思われてて、海外では福島に拠点を置いていると言うと『そんなところにいて大丈夫なの?』と言われる」
    ということも語っていました。

    ライバルを「バケモノ」と表現したことで、隣のドルダラー選手らからは「バケモノって誰だ? そんなことないだろ(おまえも十分……)」という感じでちょっかいを出されて、笑い合う場面もありました。

    大会の感想を語る室屋選手

    大会の感想を語る室屋選手

    室屋選手はこの後、単独で囲み取材が行われ、オーバーGについて
    「(新型の)V3.5ではスピードが出ていたのでオーバーGになってしまいました。多分今までのV2ではオーバーGにはならなかったと思います」
    とのコメントを残していました。4月に機体が完成したばかりで、まだ感覚が機体と一致しきっていないのかもしれません。

    報道陣に囲まれる室屋選手

    報道陣に囲まれる室屋選手

    史上最高の観客数となったレッドブル・エアレース千葉大会。始まった当時からチェックし続け、魅力を語るたび「レッドブル・エアレースって何? アメリカのリノ・エアレースじゃなくて?」と言われてきた筆者にとっては、これだけの観客が詰めかけたということは感慨無量でした。個人的には、記者会見終了後に選手が退場する際、ボノム、ホール、ドルダラーの各選手から笑顔で握手を求められたことが非常に印象に残っています。

    できるなら継続して開催され、日本から参戦するパイロットが続くことを祈っています。航空自衛隊の戦闘機パイロットの中には「自分の技術がどれだけ通用するか試してみたい」と語る人もいることですし……。

    レッドブル・エアレース、次戦は舞台をクロアチアの古都、ロヴィニに移して5月30日(予選)、31日(決勝)に開催されます。NHKによるテレビ放送は6月14日(録画ダイジェスト)ですが、レッドブル・エアレース公式サイトでは生中継します。今回レースの魅力を知った方は、できればぜひネットでの生中継で、あの興奮を再び味わってほしいと思います。

    レッドブル・エアレース公式サイト(ネットでの生中継はトップページ右上にある「WATCH LIVE」から見られます)

    (取材:咲村珠樹)

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