アメリカ海軍のバージニア級攻撃型原子力潜水艦22番艦、ハイマン・G・リッコーヴァー(SSN-795)の命名式が2021年7月31日(現地時間)、コネチカット州にある造船所で行われました。
原則として州の名が付けられるバージニア級原潜で、人名が採用されるのは2例目。由来は原子力潜水艦の開発・配備を推進した「原子力海軍の父」リッコーヴァー提督です。
艦名の由来となったハイマン・ジョージ・リッコーヴァー提督(1900年~1986年)は、1918年に海軍兵学校へ入学してから1982年の退役まで、実に63年もの間アメリカ海軍に勤務した人物。最終階級は海軍大将で、第二次世界大戦後すぐの段階から、原子力を艦船の推進に用いるプロジェクトに参加しました。
リッコーヴァー提督は、世界初の原子力潜水艦ノーチラス(SSN-571)開発・建造に主導的な役割を果たし、当時のジョン・サリバン海軍長官から「原子力海軍の父」と称せられました。その当時の部下にはジミー・カーター元大統領がおり、同じく潜水艦の艦名(シーウルフ級攻撃型原潜3番艦)となっています。
リッコーヴァー提督の名が付けられた原子力潜水艦は今回が2代目で、初代は1984年に就役し2007年に退役したロサンゼルス級原潜の22番艦。命名式には退役したリッコーヴァー提督も夫妻で参列し、エレノア夫人が艦のスポンサー(命名役)となっています。
先代と同じく、バージニア級攻撃型原子力潜水艦の22番艦となるハイマン・G・リッコーヴァー命名式は、コネチカット州グロトンにあるゼネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートの造船所で行われました。
式典で、アメリカ海軍で原子力推進プログラムを統括するジェームズ・コールドウェル大将は「この潜水艦は、私たち海軍に変革をもたらしたリッコーヴァー提督をトリビュートするのに最適な存在です」と発言。リッコーヴァー提督の伝説的な功績や任務に対する態度などを賞賛し、その精神は海軍全体に浸透していると述べました。
また、初代艦長となるトーマス・ニーベル中佐は「ここに集まった乗組員と船を目にするのと同時に、潜水艦ハイマン・G・リッコーヴァーの命名を祝福し、ハイマン・G・リッコーヴァー提督の業績を顕彰するために多くの人が集まったのは、とても素晴らしいことです」と語りました。
今回、船のスポンサーとなったのはダーリーン・グリーナート氏。元海軍作戦部長のジョナサン・グリーナート氏の配偶者で、自身も海軍の軍人でした。
ダーリーン・グリーナート氏は、先代のスポンサーであった故エレノア・リッコーヴァー氏に言及し「彼女は潜水艦リッコーヴァーの乗組員たちを愛していました」と語っています。エレノア夫人は2018年の起工式に、グリーナート氏とともに参列していました。
スパークリングワインのボトルを割る役を務めたのは、ダーリーン・グリーナート氏の娘であるサラ・グリーナート・マクニコル氏でした。このセレモニーには、将来のハイマン・G・リッコーヴァー乗組員の家族も立会人として参加しています。
潜水艦ハイマン・G・リッコーヴァーは就役すると、第4潜水戦隊(SUBRON 4)に配属され、造船所にほど近いコネチカット州のニューロンドン海軍潜水艦基地を拠点に運用される予定。ここにはリッコーヴァー提督が開発に尽力した世界初の原子力潜水艦、ノーチラスが記念艦として保存されています。
<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
アメリカ国防総省 プレスリリース
ゼネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボート プレスリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)