大阪府にある食品関連資材メーカー「旭創業」が製造しているたれ瓶「ランチャーム」。

 弁当で目にする機会が多く、特に魚の形のランチャームは「醤油が入った魚の形したアレ」などの“別名”でも浸透しています。

 調味料が入らなければ無色透明となっていますが、実は一定数の割合で「金のランチャーム」が存在しているんです。

 ガラスないし陶器の容器に弁当用の調味料が入っていた背景もあり、安全性の確保に加えて、「ランチをチャーミングにする」という理念から生まれたのがランチャーム。発売開始から60年以上が経過している、「ロングセラー」商品です。

登場から半世紀以上。実はロングセラー商品な「ランチャーム」。

 ランチャームは、ボトルや、豚、ひょうたん型のものも販売されていますが、中でもやはり知られているのが魚タイプ。魚のモチーフは「鯛」とのことで、縁起の良い場面では特に重宝されています。

もっとも周知されている魚タイプは鯛がモチーフ。

 ただ、「ランチャーム」の名称こそ旭創業の登録商標ですが、他社でも競合品を製造しており、「製品としての差別化ができないか?」という課題を抱えていました。ちなみに「ランチャーム」には「旭創業製」である「目印」が存在します。それは、丸囲いで「旭」と記された刻印。魚タイプだと、尾ひれに刻まれています。

尾びれには「ランチャーム」そして「旭創業」の印である「旭」の刻印。

 こうした背景もあり、「お祝い事に使ってもらえたら」という想いのもと、新たに開発されたのが2001年10月に誕生した「金のランチャーム」。

 重厚感のある色合いが高級感を醸し出し、おせちやオードブルなど、高価格帯かつ、いわゆる「ハレの日」での使用を想定。形は魚とひょうたんの2タイプで展開されています。

おせちやオードブルなど、高級料理での使用を想定しています。

 旭創業の担当者にうかがうと、この金のランチャームを完成させるまでには大変な試行錯誤があったそうです。

 まず問題だったのが「金色」。ただ単に「ありものの金色」を塗った商品にはせず、「重厚感ある理想の金色」を出すために試行錯誤。使用されるシーンを考え、料理に添えたときになじみ、料理の邪魔をしすぎない「金色」であることも条件でした。

 結果たどりついたのが、しょうゆを入れた状態で色が完成する今の「金色」だったそうです。ちなみに「空容器の状態だと、明るい金色をしています」と担当者。

 さらに、ここまでこだわったならさらにとことん!と中身のしょうゆもこだわり抜いて「特選丸大豆しょうゆ」を使用。他にも「内袋にエージレスを入れたり、内箱のデザインも定番商品とは違ったものにしたりと梱包資材も特別な商品です」とのこと。

魚にくわえて、ひょうたん型でも展開しています。

 こうしてこだわりすぎたがゆえに、定番商品よりも「価格がやや割高」になってしまったそうですが、逆に定番タイプの1割にも満たない数量で製造されている希少さからか、SNSではしばしば発見報告が話題になっているそうです。

 確かに筆者も「金のランチャーム」を見かけたことはありません。もし見つけたら思わず喜んでしまいそう。生産数がすくないため出会う機会は滅多になさそうですが、もし見つけられたら自分にとっての「ラッキーチャーム」になる……かもしれませんね。

<取材協力>
株式会社旭創業

(向山純平)