ストーマ(人工肛門・人口膀胱)の事などを分かりやすく描いた漫画がツイッターで発信されて話題です。(梓川みいな/正看護師)
潰瘍性大腸炎という難病で大腸を全摘出し、人工肛門を造設したというイラストレーターのぐぅぐぅさん。アカウント名に@UCオストメイトと付けているぐぅぐぅさんのUCとは、潰瘍性大腸炎の事。若い人に発症しやすい原因不明の炎症性の疾患です。ぐぅぐぅさんは2013年10月に診断され、2016年9月に大腸全部を摘出。現在はストーマと付き合いながらお仕事をされています。
そんなぐぅぐぅさんが描いた「さてみなさん、ストーマってご存知ですか」という書き出しの漫画にはストーマの事、ストーマに装着するパウチの事、パウチの中身である便の処理方法や「オストメイトマーク」が付いている公衆トイレでストーマを付けている人がどの様な処理をしているか、ストーマのニオイ対策や費用面、ファッションについても分かりやすいイラストで紹介しています。
ストーマって知ってますか?#ストーマ #ストマ #人工肛門 #人工膀胱 #オストメイト pic.twitter.com/4EutF6s0x6
— ぐぅぐぅ@UCオストメイト (@ponpokonyanko) 2017年12月20日
■ストーマとは
ぐぅぐぅさんの漫画にも描かれていますが、病気やけがなどで膀胱や小腸大腸が機能を維持する事が難しくなり人工的に尿や便を排出できる穴をお腹につくったもの。
もっと詳しくしますと、人工肛門の造設は
・大腸がん
・潰瘍性大腸炎
・クローン病
・先天性疾患
など
その他様々な大腸や肛門に影響を及ぼす疾患が原因となり、排泄機能に問題が生じた時にストーマがつくられます。また、泌尿器系に外傷が及んだりがん等の腫瘍による障害、子宮や卵巣などの婦人科系の疾患で排泄機能にまで影響が及んだりする時にもストーマの造設が適応されます。
大腸がんは年齢層が高い人ほどかかりやすい傾向にありますが、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患は若い人に多く先天性の疾患で肛門が閉鎖されている状態で生まれてきた子供にもストーマはつくられます。お腹の横に排泄孔を作るので、肛門や膀胱のように括約筋で排泄をコントロールする事はできません。そこでストーマにはパウチという袋が取り付けられます。
■パウチの処理と多目的トイレ
ストーマに付けられたパウチの中には便や尿が溜まり、ある程度溜まった所でトイレで中身を空けて処理しますがその時に使いやすいのが、オストメイトマークが付いている多目的トイレ。ちなみに「オストメイト」とは「ストーマ(人工肛門・人工膀胱)」を造設した人のことを言います。
その専用トイレには、シャワーの付いたシンクのようなものが取り付けられており、中に中身を空けて処理します。パウチを清潔に扱えたり、取り付けたパウチが取れ貼りなおしたりするときに、シャワーが付いていると服を汚すことも少なく清潔を保って処理できるのでストーマを作っている人にとってオストメイトマークがあるトイレはとても重要な場所です。
■ストーマはなかなか話にしにくい話題だけど……
排泄にまつわる話題はなかなか表に出しにくいもの。今回ぐぅぐぅさんは「これからオストメイトに関わったり実際に病気になったりした人の為にも広く知って欲しい」という事で筆者の質問にも色々と答えてくださいました。
潰瘍性大腸炎を発症し、大腸の摘出となった事に対して「私は病気になって何より頻繁にトイレに行くことがとても嫌で……お腹も常に痛く、お尻も痔瘻になっていて、外出時にはオムツを必ずはいて出かけていました。はいていて必ず漏れるのでそういうことがすごく嫌だったんです。(主治医の)先生から手術を打診され、もうすぐに即決で全摘を決めました。永久になってもいい…痛みから解放されたいの一心でした。なので今、永久人工肛門ですが全く後悔していません。クローズしてまた痛みが出るようなことがあっては意味がないのでこれが最善の策だったと思っています。」と語ってくださいました。
潰瘍性大腸炎は、常に大腸が炎症を起こしただれた状態となってしまうので血液が混じった下痢が絶えず出てしまい常に腹痛が付きまとう状態。薬による治療で炎症を抑えきれない場合は炎症が起きている部分を取り除くという手段があり、ぐぅぐぅさんはその方法を選んだのです。若くしてオムツを着用する苦痛や痛みによる苦痛は計り知れないものがありますが、筆者の質問に答えて下さったぐぅぐぅさんは、「全部オープンにしているしオストメイトの為になるのなら」と快く答えてくださいました。
こうして痛みと精神的な苦痛からは解放されたものの、「替えのパウチやケア用品などを持ち歩く必要があるので荷物が多くなる事、混んでいるトイレでオストメイト専用の設備を使った後にもう一度小用の為にトイレに並びなおす事が煩わしくて普通のトイレで全部済ませてしまう」という別の煩わしさや、水のレジャーや銭湯などはまだ周りの視線が不安となって遠ざかっている事も話してくださいました。
■社会的理解へのみちのり
オストメイトを含め、内部障害の身体障害者はその見た目からは障害があると気づかれない人も多く、実際に「オストメイトで多目的トイレを使った時に時間がかかってしまったら、トイレから出た時に見知らぬ中高年の人から罵声を浴びせられた」という声を聞くことがあります。
こうした障害と付き合いながら生活する当事者からの声はネットを中心に最近になってやっと拡散され始めてきましたが、ネットと縁が薄い層にはその声も届きにくいのが現状。オストメイトマークも見た目にわかりにくい障害を知らせる「ヘルプマーク」も、まだ周知はとても万全とは言えない現状です。
でも、ネットを中心に広い層へ拡散できるメディアに繋げる事や、一人ひとりの口コミなどで草の根的に情報を広げていく事は決して無駄ではないはずです。
様々な障害をそれぞれが抱えながらも自立した生活ができる社会になっていく事を願いながら、今後もこうした話題を取り上げていきたいと思います。
<記事化協力>
ぐぅぐぅ@UCオストメイトさん(@ponpokonyanko)