「うちの本棚」、今回よりあまり知られていないヒーロー作品を取り上げます。貝塚ひろしのSFヒーローマンガ『SBCディ』です。

「ABC」の掛け声でヒーローに変身する貝塚ひろしのSF作品。
ヒーローの乗り物に円盤を設定したのはこの時代としてはけっこう先駆けていたのではないだろうか。

また地球空洞説、その空洞の中に地上の人類とは別の人類が、地上の人類よりも発達した科学文明を持っているなど、70年代にはいって多く描かれたSF漫画の設定もみられる。もっともその空洞世界やヒーローの力をなぜ地上の少年たちが与えられたのか、ということは詳しく触れられてはない。

ちなみに空洞世界がリュウ王国、そこを治めているのがオート王女と、龍宮城、乙姫につなげているアイデアはなかなか面白い。このあたりをもっと掘り下げていたら、また違った展開もあったのでは、とちょっともったいない気もした。

主人公は天文学の星島博士の子供、英二とその妹で静子、英二のクラスメイトのビー助の3人。それぞれA、B、Cに当てはめられたネーミングではあるが、なぜこの3人がヒーローとして選ばれたかということもあやふやなままだった。

リュウ王国から3人のお守り役として犬が地上に派遣されてくるのだが、もうひとつ活躍がなかったのも惜しい。

貝塚にはほかにも『1、2作戦』というヒーロー作品があるが、本作のABCといい、ちょっと勢いを感じるネーミングが好みなのかもしれない。

初出/まんが王・1968年1月号~8月号(秋田書店刊)
書誌/パンローリング・マンガショップシリーズ(全1巻)

■ライター紹介
【猫目ユウ】

ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。