おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【特撮映像館】Act.32 ゴジラ「VSシリーズ」考察

update:

「特撮映像館」、今回は「VSシリーズ」について考察してみます。

’84年『ゴジラ』から『ゴジラVSデストロイア』までの「VSシリーズ」について考えてみたい。


  • 「昭和ゴジラシリーズ」の後半で低年齢層向けの作品になってしまったシリーズを、大人の鑑賞にも耐えるものとして再スタートしたのが「VSシリーズ」の基本だと思う。またスタッフ的にも「昭和ゴジラシリーズ」で育った若い世代が参加し、「新しいゴジラ」を創出したのも事実だと思う。とはいえ「昭和ゴジラシリーズ」で育ったスタッフによる制作だったがために、はじめにバトルありきの展開になってしまったのではないかという気がしないでもない。

    また「VSシリーズ」では薩摩剣八郎氏がゴジラのスーツアクターとして演じていたわけだが、これは薩摩以外にも、特技監督の演出、造形などいろいろな要因があるとしても、恐竜や爬虫類よりは人間に近いアクションも「昭和ゴジラシリーズ」から抜け出せなかったのではないかと思う。本シリーズの特徴として、シリーズを通して連続したドラマというつながりが挙げられるだろう。小高恵美が演じた三枝美希など、シリーズを通して同じキャラクターが登場することでもそれは顕著ではある(「昭和ゴジラシリーズ」では同じ俳優が出演しても役柄は全く別だった)。それもあってか、ゴジラの造形も「昭和ゴジラシリーズ」のような作品ごとのバラつきは少ない。
    「昭和ゴジラシリーズ」では人類の味方としてヒーロー的な存在になってしまったゴジラも、この「VSシリーズ」では終始人類の驚異、敵としてあり「怖いゴジラ」像が追求された。そして対ゴジラ兵器が開発されるという展開になるわけだが、シリーズ化したことでゴジラを殺すことができなくなってしまった。結果として生物を超えた生物というような「特別な存在」になってしまうわけである。

    もちろんゴジラに対して感じる印象や期待としてその方向自体は間違っていないとは思うが、古生代の生物が核実験の影響で目覚め、核のエネルギーを浴びて変異した、という出発点に立ってみれば飛躍しすぎてしまった感は否めないように思う。シリーズを観ながら、期待していたゴジラから離れていくような気持ちになっていったのは、まさにこの点だったのだろう。スタッフもそれはわかっていたのか、最後には自滅という形でゴジラの最後を描くことになる。強すぎるゴジラは人類には倒せなかったわけである。

    ハリウッド版『ゴジラ』のためにシリーズが終了しなければ、さらに何作か作られていたとは思うが(実際『モスラ』三部作が制作されてもいる)、ドラマとしてはしおどきだったようにも思う。強いて言えばゴジラと三枝美希の関わりをもう少し見たかったというところだが。

    批判めいたことばかりを並べ立ててしまったが、まがりなりにも「VSシリーズ」として毎年制作・公開されたことで怪獣映画の復権という功績はあったと思うし、ガメラの復活、「ウルトラマンシリーズ」の復活にも影響を与えたととられることもできるだろう。

    (文:猫目ユウ)

    あわせて読みたい関連記事
  • ゴジラ 大咆哮かるた
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    鳴き声で怪獣を当てろ!難易度MAX「ゴジラ 大咆哮かるた」がツタヤ限定発売

  • ヘドラ卓上モップ
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    ゴジラと戦った公害怪獣「へドラ」のお掃除グッズ襲来 卓上のホコリを吸収

  • 「ゴジラ対ヘドラ」公開50 周年記念フレーム切手セット
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    「ゴジラ対ヘドラ」公開50周年記念グッズ 郵便局のネットショップ限定で販売

  • ゴジラと京都のコラボイベント「ゴジラVS京都」が初開催
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    「ゴジラVS京都」 京を巡る回遊型イベント開催

  • アニメ/マンガ, ニュース・話題

    淡路島に全長約120mの実物大「ゴジラ」出現 体感型アトラクション「ゴジラ迎撃作…

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.39 ゴジラ2000シリーズ考察

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.38 ゴジラファイナルウォーズ

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.37 ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.36 ゴジラ×メカゴジラ

  • コラム, 雑学

    【特撮映像館】Act.35 ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    2. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…
    3. Shuffle Town

      キーボードを叩くと家が出現!文書に「町」を作るフォント「Shuffle Town」が面白い

      手書き風の文字だったり、ホラー風の文字だったり、一風変わった文字を簡単に使用することができるデジタル…

    編集部おすすめ

    1. 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業中に「猫」と「たき火」の癒やしを感じながら集中できる……そんな新感覚のゲーム「たき火と猫」のSteamストアページが公開されました。本作…
    2. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    3. ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

      ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

      ヤマト運輸株式会社は、11月10日から「宅急便当日配送サービス」の提供を開始し、併せて新たに「同一都道府県内運賃」を導入すると発表した。午前…
    4. 1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      株式会社KARATZが、カバヤ食品の玩具菓子「セボンスター」45周年を記念したジュエリー企画「大人のセボンスター」第3弾を発表。11月5日に…
    5. 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」

      嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現時点なし」

      人気グループ「嵐」の公式SNSをめぐり、偽アカウントの出現が相次いでいることを受け、所属する株式会社嵐の四宮隆史社長が11月4日、自身のX(…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト