おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【特撮映像館】Act.45 吸血鬼ゴケミドロ

update:

「特撮映像館」、第43回は1968年「吸血鬼ゴケミドロ」を取り上げます。

日本製の吸血鬼映画はたびたび作られているけれど、本作はタイトルから受ける印象とは違ってSF的な作品。
血のように真赤に染まった空を、羽田から伊丹に向かって飛ぶ旅客機から始まる本作は、未確認飛行物体の出現により墜落し、生き残った乗客たちの極限状態のサバイバルへと展開し、やがて未確認飛行物体に乗って地球にやって来たゴケミドロという生物によって乗客のひとりが体を乗っ取られ、ほかの乗客の生き血を吸うという状況に発展する。


  • 旅客機が落ちた場所はどこかの山の中でラジオによれば捜索隊もその場所がわからないといい、ある意味密室劇的な環境にある。

    主な登場人物はパイロットにCA、乗客である精神分析医、宇宙生物学者、政治家と懇意にしている会社社長とその妻、そしてベトナムで戦死した夫のもとに向かう途中の外国人女性、機内で爆弾を爆発させ自殺すると予告した青年、そしてゴケミドロに体を乗っ取られることになるスナイパー…。

    ゴケミドロが登場しなくても充分にパニック映画として進められるような要素を含めながら、それ以上の恐怖と混乱によって生き残った人々が追い込まれていくようすを描いていく。登場人物のひとりである精神分析医は、いたずらにみなの不安をあおり極限状態に陥った人々の心理を観察してみたり、冷静だと思われた宇宙生物学者がゴケミドロの存在を知るとその吸血の現場を見たいと、生き残ったメンバーから犠牲を出すことに賛成したりする。
     
    ところで本作の特撮は『マグマ大使』や『スペクトルマン』を制作したピープロが担当している。とはいえ完全に特撮部分を請け負ったということではなく、スタッフや撮影技術の提供ということのようである。しかしながら「ゴケミドロ」というタイトルや企画案はピープロの鷺素氏がもともと持っていたもののようだ(テレビ作品として企画されパイロットフィルムも作られたらしい)。
    額に大きな傷をつけた人間というゴケミドロの造形(?)はインパクトが強く、演じた高 英夫のイメージとしても印象づけられている。

    また本作のラストも衝撃的なものであるが、制作された当時には案外このようなラストを用意した作品が、小説や漫画などでもチラホラみられるのは確かだろう。
    時代なのか、監督のスタイルなのか、いわゆる「行間を読む」映画だったような気がする。
     
    監督/佐藤 肇
    キャスト/吉田輝雄、佐藤友美、高橋昌也、金子信雄、キャシー・ホーラン、高 英夫、ほか。
    1968年/84分/日本

    (文:猫目ユウ)

    あわせて読みたい関連記事
  • 新特撮シリーズ【PROJECT R.E.D.】始動へ 第1弾は「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    新特撮シリーズ【PROJECT R.E.D.】始動へ 第1弾は「超宇宙刑事ギャバ…

  • 「パンパカパ〜ン」ラッキューロ誕生日ポストに例年以上の反響 シリーズ終了報道でファンの感情爆発?
    TV・ドラマ, エンタメ

    「パンパカパ〜ン」ラッキューロ誕生日ポストに例年以上の反響 シリーズ終了報道でフ…

  • サムシングフォーってそういう……偶然にもモデルガンが揃ってしまった奇跡のウェディングフォト
    インターネット, びっくり・驚き

    サムシングフォーってそういう……偶然にもモデルガンが揃ってしまった奇跡のウェディ…

  • 画像提供:架空昭和史作家 西川真周さん(@mashunishikawa)
    インターネット, おもしろ

    家のトイレが巨大ロボのコクピットに!昭和とSFが融合した「架空昭和史」の世界に夢…

  • 劇中セリフやBGMを収録!バンダイから大人向けなりきり玩具「ブンブンチェンジアックス」発売
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    劇中セリフやBGMを収録!バンダイから大人向けなりきり玩具「ブンブンチェンジアッ…

  • シャリバン役の渡洋史も登壇!宇宙刑事シリーズ40周年記念の上映会が開催
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    シャリバン役の渡洋史も登壇!宇宙刑事シリーズ40周年記念の上映会が開催

  • 「特捜戦隊デカレンジャー」20周年記念ファンミ開催!主要キャスト6人が勢揃い
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    「特捜戦隊デカレンジャー」20周年記念ファンミ開催!主要キャスト6人が勢揃い

  • 「獣電戦隊キョウリュウジャー ガブリボルバー -MEMORIAL EDITION-」
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    聞いて驚けぇぇぇ!獣電戦隊キョウリュウジャー「ガブリボルバー」がメモリアル仕様に…

  • これが私たちのアオハル。朋優学院・アトラクション部の華麗なアクションに刮目せよ!
    エンタメ, サブカル

    これが私たちのアオハル 「朋優学院・アトラクション部」の華麗なアクションに刮目せ…

  • 特撮文化発展のため日夜活動する「特撮クラブ」。これで君たちもヒーローになれるぞ!
    TV・ドラマ, エンタメ

    戦闘員の貸し出しも可 ヒーローのためのオールインワン「特撮クラブ」とは?

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      善意の通報が“誤報”に変わるAI時代 女川町のクマ騒動が示した危険性

      宮城県女川町が11月26日、公式Xで発信した「クマ出没情報」が、後に「生成AIによるフェイク画像」に…
    2. 派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      派手なピンクに「マヂでアゲ」……道端に突如現れた「ギャルすぎる工事看板」が話題

      「とても茨城県」というつぶやきとともに、Xに投稿された一枚の写真。そこには、一般的な工事現場のイメー…
    3. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…

    編集部おすすめ

    1. ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

      ホロアースNPCに「事件に関係した実在人物想起」と指摘 運営が謝罪し削除対応

      バーチャルタレント事務所「ホロライブプロダクション」を展開するカバー株式会社は公式Xにて11月25日、同社のバーチャル空間プロジェクト「ホロ…
    2. エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      エビの代わりに「パイの実」投入!ロッテ公式が送るエビチリアレンジに目を疑う

      ロッテは自社商品の各ブランドサイトで、アレンジレシピを公開しています。その中に「パイの実」をエビチリソースと卵で炒め合わせた「チリ玉パイの実…
    3. 100tハンマー

      伝説のコンビを追体験 40周年「シティーハンター大原画展」上野で12月28日まで開催

      「シティーハンター」連載開始40周年を記念した原画展「シティーハンター大原画展~FOREVER, CITY HUNTER!!~」が、11月2…
    4. 宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      11月22日午前、X(旧Twitter)のトレンドに「宙組公演特別メニュー」が一時浮上し、ファンの間で大きな話題となりました。きっかけとなっ…
    5. ミラノで開催「IQOS Curious X Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      ミラノで開催IQOS X SELETTI「Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      フィリップ モリスが、イタリアでイベント「Sensorium Worlds」を開催。今回は、この壮大なイベントの模様とともに「IQOS To…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト