ウルトラセブン「うちの本棚」、今回取り上げるのは「ウルトラシリーズ」の中でも傑作といわれる『ウルトラセブン』のコミカライズ、桑田次郎版です。コミカライズ版としても傑作と言っていいでしょう。

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ウルトラセブン上 ウルトラセブン中


本作は『ウルトラマン』に続く、円谷プロ制作の巨大ヒーロー特撮テレビ番組のコミカライズ作品である(実際の放映では『ウルトラマン』と本作の間には、東映制作の『キャプテンウルトラ』が入る)。

映像作品本編では『ウルトラマン』との関連は、同じ「光の国」出身ということだけだったが、桑田次郎のコミカライズ版では、ウルトラマンからセブンに、地球を見守ることを委任されるシーンが冒頭に描かれている。ウルトラヒーローが共演するのはこれが最初なのではないかと思う。

『ウルトラマン』に比べ、地球防衛の組織も軍隊的で、内容的にもハードな印象があり、セブンのデザインも、ウルトラマンに比べ戦闘的なイメージが強くなっているが、桑田次郎のシャープな描線はそんなセブンの世界観を見事に表現していた。
特にセブンのスピーディでパワフルな印象は、桑田の描写では映像作品以上に強調されていたのではないかと思う。

映像作品放映当初は、初出誌と平行して雑誌版の総集編が刊行されるなどもしていたようだが、連載終了後は単行本化されることなく、朝日ソノラマの「サンコミックス」が楳図かずおの『ウルトラマン』を刊行したのに続いて、桑田版を全4巻、一峰大二版を全2巻で刊行するまで埋もれてしまっていた。

「サンコミックス」刊行後は「サン・ワイド・コミックス」で全2巻、A5版などが刊行されたが、短編作品など未収録もあった。その後パンローリングの「マンガショップシリーズ」で一峰大二版と併せ上中下の全3巻で刊行された際、未収録作品も追加された。

『ウルトラマン』と違い、主人公であるモロボシダンとセブンが同じ意識を持っていることから、コミカライズ版でセブンがセリフをしゃべるシーンもあまり違和感を感じない。また『ウルトラセブン』の魅力の一つでもある「ウルトラ警備隊」の超兵器(ウルトラホークなど)の描写も映像作品を彷彿とさせるもので、コミカライズの神髄という印象すらある。

『ウルトラセブン』では「超兵器R1号」や「ノンマルトの使者」また「第四惑星の悪夢」「狙われた街」などの名作があるが、それらを桑田版はすべて取り上げている。映像作品も素晴らしいが、桑田版のコミカライズもそれぞれ素晴らしい仕上がりになっているので、まだ読んだことがないという方にはぜひお読みいただきたい。

初出:講談社「週刊少年マガジン」昭和42年38号~昭和43年38号、「別冊少年マガジン」昭和42年秋のおたのしみ特大号~昭和43年夏休みおたのしみ特大号まで不定期掲載。「流星人間ゾーン」昭和48年テレビしんばんぐみ特別号

書 名/ウルトラセブン(上・中)
著者名/桑田次郎
出版元/パンローリング
判 型/B6判
定 価/1890円(2巻とも)
シリーズ名/マンガショップシリーズ
初版発行日/2004年12月25日(2巻とも)
収録作品/上・姿なき挑戦者、湖の秘密、金色の龍、海底基地を追え、北へ帰れ、第四惑星の悪夢、下・ウルトラ警備隊西へ、水中からの挑戦、狙われた街、栄光は誰のために、超兵器R1号、セブン暗殺計画、K団地の怪、闇に光る目、ノンマルトの使者、たおせ!アイアンロック

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/