「特撮映像館」、今回は江戸川乱歩の原作を塚本晋也監督が映画化した『双生児』です。全編にわたる特殊メイクがある意味見どころの作品です。
江戸川乱歩の原作を塚本晋也が監督した作品。とりわけ特撮映画というジャンルはないが、特殊メイクは全編に渡ってふんだんに使われている。
主演の本木は主人公とその双子の二役。いい役者だとは思っていたがここまでとは思わなかった。気品ある主人公と野蛮な双子の演じ分けもよくできている。また、りょうの演技もよかった。ほかに浅野忠信、竹中直人らの出演シーンも必見。
明治の末期という時代設定を、ほとんど室内で淡々とした雰囲気の中に表現している塚本監督の手腕も見事。ただ貧民窟などが登場してくると作品世界自体がどこか別次元の話なのではないかという印象も出てきてしまうのではあるが。
映画は光(映像)と音(音楽)とセリフの融合した表現世界だと思うが、本作ではそのどれもが計算された効果を上げている。とくに音楽はここぞという場面で流れ、それ以外は流れない。音楽は感情を左右するものなので、場面に合わせた音楽が常に流れている作品は多いが、それをしないのは演出に自信がある証拠なのかもしれない。
原作のある作品の場合、古い宣伝文句ではないが「読んでから観るか、観てから読むか」ということになると思うが、本作に限って言えば予備知識なしで観ることをオススメする。したがってここでもあらすじの紹介はしない。それでも映画が始まって少しすれば作品世界にどっぷりとハマッて目をそらせなくなるだろう。また2回、3回と見直してみたくなる作品でもある。
監督/塚本晋也
キャスト/本木雅弘、りょう、筒井康隆、もたいまさこ、麿 赤児、浅野忠信、竹中直人、ほか。
1999年/84分/日本
(文:猫目ユウ / https://suzukaze-ya.jimdo.com/)