「特撮映像館」、今回は巨大化する仮面ライダーとして知られる『仮面ライダーJ』です。巨大化するということ以外にも注目したいポイントがあり、シリーズの原点を見据えたテーマ設定など、ライダーシリーズのターニングポイントだったようにも感じられます。
『仮面ライダーZO』に次いで制作された劇場用作品が本作『仮面ライダーJ』である。
前作『ZO』が原点回帰をひとつのテーマにしていたというが、本作はよりシリーズの原点に立ち返った作品といってもいいかもしれない。それは「大自然の使者」としてのライダーの存在である。またライダーシリーズでは人間の科学力によって人体を改造、サイボーグ化して超人が誕生するが、本作では地空人なる、地底に住む人類とは別の知的生命体の力で誕生する。また地空人と大自然の力(Jパワー)によって仮面ライダーJは巨大化する。
本作も『ZO』同様、悪の組織というものは登場しないが、宇宙から来たフォッグと名乗る生命体と闘う。フォッグは自分の産んだ大量の卵から孵った子供たちの食料を必要としていて、人類をその食料にしようとしているのだ。かつて恐竜が絶滅したのも、過去にフォッグが地球を訪れ、恐竜を食料にしたためだという。人類の絶滅と地球環境の破壊に対して、Jはフォッグと対決することになる。また卵が孵るための儀式に必要だとしてJの知り合いの少女が捕らわれたことも戦いの理由となっている。
地空人との意思の疎通のためにペリーというバッタが登場する。じつは『ZO』にも要所要所でバッタが登場していたが本作ほどには積極的に関わってはきていなかった。
本作においてはライダーが巨大化するというのがなんといってもセールスポイントであり興味の対象といえる。そして対決する相手も巨大化した怪人なのでは、と想像させるわけだが、じつは巨大化して闘う相手はフォッグの巨大戦艦である。もっとも巨大化したもの同士が闘っても、それはウルトラマンなどの巨大ヒーローと差がなくなってしまうので意味のないことだったかもしれないが、戦艦を相手に闘うというのも少々物足りなさを感じるところではある。
それよりもフォッグの配下として登場するトカゲ男、ハチ女といった怪人の造形に目を引かれた。とくにトカゲ男はそれまでの雨宮デザインには見られないタイプの造形でなかなかいい。ハチ女は鼻から顎にかけて演者の素顔を活かしたマスクになっており、初期ライダーシリーズのハチ女を意識していると思われる。また配下のリーダー格はコブラ男であり、それぞれ初期ライダーシリーズに登場した怪人から選ばれていることはわかるだろう。
ライダーが巨大化するということについては賛否があるだろうし、原作者も監督もなかなか了承しなかったようだ。また結果的に本作のほかは『ウルトラマン対仮面ライダー』というバラエティー的な企画でしか実現していない事を考えれば、やはり巨大化するライダーにはライダー本来の魅力は感じられないのかもしれない。それはそれとして、ライダーの原点に帰ったテーマや魅力的な怪人が登場するという点で、本作の存在意義はあり、単に「巨大化するライダー」というだけで語られるのは惜しい作品という気がしている。
監督/雨宮慶太
キャスト/望月祐多、野村佑香、万里洋子、神威杏次、栗原 敏、ほか。
1994年/46分/日本
(文:猫目ユウ / https://suzukaze-ya.jimdo.com/)