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【無所可用】第41話 最新技術を追いかけた48年前の鉄道模型とそして今、「~ソニーときかんしゃトーマスのネットワーク体験島~」レポート

「~ソニーときかんしゃトーマスのネットワーク体験島~」レポート毎度こまごまとした話題をおとどけしております不定期連載の「無所可用、安所困苦哉」でございます。

今回はご招待を頂いてのスペシャルレポート、東京・銀座ソニービルで2012年4月24日から開催されている『「THOMAS & FRIENDS in GINZA」~ソニーときかんしゃトーマスのネットワーク体験島~』レポートをお送りいたします。


  • 今回ご招待いただいたこちらのイベント。会場には、大変に貴重なものが展示されております。

    1964年にソニーが子会社を設立して販売を計画した、「ソニー マイクロトレーン」という、Nゲージ鉄道模型でございます。

    300セットのみ試作して、結局会社を解散してしまったマイクロトレーンの実物が展示されており、当時デザイナーとして開発に携わった藤尾正明さんのインタビュー映像、そして50年間保管されていた車輛の実際の走行映像なども見ることができます。

    そんな貴重な展示物だらけの今回のイベント。早速ご紹介したいと思います。
    まずは会場となる銀座ソニービル。ここに掲示された幕にも、マイクロトレーンの写真が見えます。

    ソニービル広告幕

    マイクロトレーンの展示会場は8階。メイン展示のトーマスのレイアウトとともに、アクリルケースに囲われたマイクロトレーンの模型がありました。

    さて、まずは車輛を見てみましょう。
    機関車1台、客車2台というセットになっていました。機関車はED75。1963年から製造が開始された交流用電気機関車ですから、当時の最新鋭機と言えます。客車はスハ43という急行用の標準型ですが、長さ方向を短縮したショーティーモデルとなっています。
    機関車本体は金属製、屋根はプラスティック、パンタグラフは金属製です。ナンバーにはED75 1が刻印されています。

    ED75(1)
    ED75(2) ED75(3)

    面白いのは駆動方式です。当時、台車の首を振りながら動力を伝達することが困難であったのか、車体中央寄りの2軸にギアをかませていますが、この2軸は固定されており首を振りません。車体前後の各軸は首を振ってカーブに対処する構造になっています。この構造は海外のNゲージの古い製品で時折見かけた構造です。ED75は最新鋭とはいえ当時は東北地方の一部で使われていただけで、知名度等ではもうひとつであったかと思われます。それでもこの機関車を選択したのは、東海道・山陽線というメインラインで使われる機関車は、動力機構的に実現が困難であったのかもしれない(直流の電気機関車は3台車6軸駆動が主流、交流は2台車4軸駆動が主流でした)、とちょっと邪推をしてしまいます。
    さすがに実物を裏返して頂くわけには参りませんでしたが、パネル展示に裏側の写真がありました。独特の動力伝達構造がわかります。

    車両の裏側

    客車は全体がプラスティック製です。なぜ車体を短縮して再現したのかはわかりませんが、出来は当時としてはなかなかのものだと思われます。しかし残念ながら塗装がされてなく、プラスティックの地色のままです。
    床下は大きく省略されていますが、当時は16番(HO)でも床下を省略した例は多かったので、このくらいが標準だったのではないかと思われます。
    刻印されているナンバーは「スハ43 3109」。スハ43系には2000番台はありましたが3000番台は存在しません。なぜこんな番号になってしまったのでしょうか。

    スハ43

    車輛をつなぐ連結器はマイクロトレーン独自のものです。床下に線バネを入れた独特の構造で、自動連結が出来ます。同時期にNゲージ車両を開発していた関水金属(現在のKATOブランド)が西独・アーノルト社の連結器を採用したのと対照的です。
    連結器もパネル展示されておりました。

    連結器

    鉄道模型を運転するには、パワーパックと呼ばれる「電源装置」が必要ですが、マイクロトレーンはここにもかなり力を入れていたようです。円形と曲線を多用したそのデザインは、これ以後も類例を見ない独自のデザインです。また、コンセントから取り入れた電気を変圧器のタップ切り替えで電圧制御する「タップ式」が多かった当時において、整流した直流の電圧を調製する構造を取っていたようです。20年以上前に読んだソニー・マイクロトレーンの記事で、「今でも良いパワーパックと言える」と書かれていました。電器メーカーだけに、電気部品にはこと気を使ったのかもしれません。

    パワーパック

    マイクロトレーンの試作セットには、これら車両とレールのほか、レールを上に敷く「レイアウトマップ」と、車輛を線路に乗せるためのリレーラーという用具がセットになっていました。
    マイクロトレーン解散後、金型は破棄されましたが、リレーラーだけはそのまま同じ形で関水金属に引き継がれ、今でもあまり変わらない姿で販売されています。マクロトレーン最後の名残です。

    リレーラー レイアウトマップ

    さて、会場のメインは「きかんしゃトーマス」。こちらはHOゲージのレイアウトが作られており、輸入物のトーマス達が走っております。機関庫にはトーマスファミリーが集結しています。機関庫の入り口のアーチの上部が煙で汚れているのを再現していたりと細かいところに手が込んでいます。

    機関庫

    よく見るとレイアウト(ジオラマ)の中に携帯電話が置かれていたり、小型液晶画面があったり、3D動画カメラがあったりとなかなか多彩です。

    レイアウト概要

    携帯電話は、自分がレイアウトの中にいるような写真を取ることが出来ます。3D動画カメラでは、トーマスと一緒に3Dの撮影をすることができます。最近は増えてきた3Dカメラですが、実際にやってみるとなかなか面白いものでした。

    3Dカメラと映像

    『「THOMAS & FRIENDS in GINZA」~ソニーときかんしゃトーマスのネットワーク体験島~』は、5月20日まで開催中です。貴重なソニーマイクロトレーンの実物見学とソニーの最新製品の体験にお出かけになってはいかがでしょうか。

    ●「THOMAS & FRIENDS in GINZA」~ソニーときかんしゃトーマスのネットワーク体験島~
    ・開催期間:2012年4月24日(火)~5月20日(日)
    ・開催時間:11:00 ~ 19:00
    ・開催場所:東京・銀座ソニービル(東京都中央区銀座5-3-1)
    ・イベント詳細URL :

    (文・写真:エドガー)

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