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【うちの本棚】150回 シルベスター/板橋しゅうほう 

【うちの本棚】150回 シルベスター/板橋しゅうほう 「うちの本棚」、今回は板橋しゅうほうの作品の中でも目立たない印象のある『シルベスター』をご紹介いたします。
金属生命体シルベスターと融合した主人公が活躍するヒーローコミック、というアメコミ的設定・ビジュアルが特徴の作品です。


  • 【関連:149回 DAVID ディビッド/板橋しゅうほう】

     

    本作は少年画報社の「YOUNG KING」に1989年10号~17号に連載され、単行本化の際、加筆されている。

    ひと言で言うと、板橋しゅうほうの新しいヒーローコミックであり、金属生命体シルベスターと融合した「男爵(バロン)」と呼ばれる主人公が活躍する物語だ。

    ビジュアル的には『ペイルココーン』以来のアメコミ的な描写が目立つが、単にアメコミの模倣ということではなく、板橋流の表現を模索していたのだと思う。ただ、ここではまだその完成には至っておらず、「アメコミ風」という印象になってしまっていたのではないだろうか。

    ヒーローコミックと表現したが、その理由のひとつには主人公がここぞというときに技を出す際「レッツユナイト(結合)」という掛け声が設定されていることでも、その意図が読み取れる。ただ、結果的にこれを効果的に表現できていたかというと、消化不良に終わってしまったようで残念ではある。また、格闘ゲームや格闘コミックの影響を受けてか拳法使いのキャラクターも登場してアクションシーンを派手に盛り上げているが、これも少々中途半端な印象を残してしまったようである。

    本作も『DAVID』と同じように当初の構想を完全に描ききる前に終了してしまった感があるのだが、同じような終わり方をしていてもすっきりと完結している作品は数多くあるので、これは板橋しゅうほうの演出のまずさと言っていいのかもしれない。作品は終わっても、作品の中の物語は終わっていないという「余韻」を残したかったのかもしれないが、どうにも消化不良な印象になってしまっているのが残念だ。

    板橋作品のなかでも「こんなのもあったんだ」という印象の薄い作品になると思うのだが、シンプルな設定でアクションシーンを楽しめるヒーローコミックではあるので、機会があったらぜひお読みいただきたい。

    書 名/シルベスター
    著者名/板橋しゅうほう
    出版元/大都社
    判 型/A5判
    定 価/950円
    シリーズ名/なし
    初版発行日/1991年10月10日
    収録作品/シルベスター(第1話~第8話)

    シルベスター

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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  • 猫目 ユウWriter

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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