「うちの本棚」、今回は板橋しゅうほうの代表作『アイ・シティ』をご紹介します。本作品自体は連載22回目にも取り上げていましたが、今回は板橋作品を紹介する流れで、改めて最初の単行本であるB6判を取り上げます。
登場人物たちに『ペイルココーン』のキャラクターの影がチラチラ見えたりもしますが、壮大なSF作品として完成度の高いものになっています。
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本作は板橋しゅうほうの代表作。なにしろアニメ化されて劇場公開されているのだから。とはいえそのアニメ版は見逃してしまっていて、残念ではある。監督が真下耕一とのことで、見てみたい作品のひとつだ。
『シルベター』や『DAVID』など、作品完結後もストーリーは続いているという終わり方は板橋作品の特徴とも言えて、本作でもそのラストでは作品内の物語は終わってはいない。ただ他の作品に比べてすっきりと読み終われるのは、もともとの構想がここまでだったからなのかもしれない(他の作品には「もっと描きたかったのに…」という思いがにじんでいる印象が強い)。
時代設定は1983年の夏。これは連載開始の時期でもある。気がつけば30年も昔の作品になるわけだ。しかし、その内容は古さを感じさせないし、なによりも設定上、この年代設定が時間の経過をいとわないものになっているので初めて読むという方も意識しないで読んでいただきたい。というのは、この1983年が、舞台そのものの名称ともなっているのだ。つまり、主人公たちのいるのが「フロア1983」と呼ばれる場所なのだ。
本作の魅力のひとつは、主人公を始めヘッドメーターズと呼ばれる疑似超能力者の存在にある。能力を使うときに額にその能力レベルが表示されるために「ヘッドメーターズ」と呼ばれるのだが、このアイデアはなかなかいい。
ストーリーは、ヘッドメーターズとしてはその能力が極端に小さい主人公・Kが、自分の娘だというアイを連れてヘッドメーターズの組織から逃亡しているところから始まる。
その途中、警察官のライデンと出会い、Kの異性クローン・K2たちの攻撃をかいくぐりながら逃亡を続けるのだが、しだいにその行動は人類の存亡をかけた闘いに発展していく。
アイはヘッドメーターズではないが、Kたちヘッドメーターズに触れることでその能力を引き出す力があったり、なにやら神秘的な少女なのだが、実はこの闘いの行方を左右する存在でもある。
ストーリー的にもキャラクター的にも、板橋の代表作として十分な仕上がりになっているのは確かだ。
ところで、本作に関しては以前、アニメ化の際に刊行されたB5判雑誌サイズの「特別版」を取り上げたことがある。この特別版はトレーシングペーパーのカバーにキャラクター(アニメ版)、本体表紙に背景(板橋版の敵キャラ)というアニメ的な装丁になっていたのだが、オリジナル版であるB6版の本書も、第2巻の表紙イラストに描かれたアイの彩色がアニメを意識したものになっていたことを改めて確認した。
大変残念なことに、現在新刊書店で本作品を購入することはできないようだ。板橋の代表作であると共に、SFコミックとしても名作である本作であるから、再刊行の機会があってほしい。
書 名/アイ・シティ(全2巻)
著者名/板橋しゅうほう
出版元/双葉社
判 型/B6判
定 価/各480円
シリーズ名/ACTION COMICS
初版発行日/第1巻・1984年3月14日、第2巻・1985年1月14日
収録作品/第1巻 ACT-1~7、第2巻 ACT-8~15
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)