「うちの本棚」、今回も単行本未収録作品から、蛭田 充がコミカライズを担当した「別冊少年サンデー」版『シルバー仮面』をご紹介します。
連載はドラマの放映途中から始まったため、全3回と短かいものでしたが、蛭田 充のオリジナル色の強い作品となっています。
本作は特撮テレビドラマ『シルバー仮面』のコミカライズ作品である。小学館の「別冊少年サンデー」で全3回、テレビドラマ放映途中からの掲載となった。従って、連載2回目で早くもシルバー仮面は巨大化している。3回中、1、2回は巻頭カラーだった。
登場する星人はテレビドラマに登場した、チグリス星人やサザン星人などだが、内容的にはテレビドラマを踏まえて、蛭田が独自に構成したものとなっている。
本作のテレビドラマは『ウルトラQ』『ウルトラマン』と同じTBS日曜19時という放送枠だったが、裏ではフジテレビで『ミラーマン』が放送されたこともあり、当初等身大だったシルバー仮面は視聴率で苦戦を強いられ、シリーズ半ばで巨大化、『シルバー仮面ジャイアント』とタイトルも変更された。
もっとも、等身大ヒーローは同時期に『仮面ライダー』の放送も始まっており、必ずしも間違った選択ではなかったし、のちのちシリーズ前半の内容が高評価されてもいる。怪獣(本作では星人)が登場する特撮ドラマはヒーローも巨大でなければ、という子供を中心にした視聴者の感覚がまだ強かった、ちょっと早かった作品だったといえる。
コミカライズ版を担当した蛭田 充はダイナミック・プロにも所属していたこともあり、アクションシーンはわりと得意としている印象がある。代表作であるコミカライズ版『デビルマン』でも、それは確認できるだろう。
とはいえ、原作となるドラマやアニメと印象の異なるキャラクターを描くということも蛭田の特徴で、本作の場合原作となるものが実写ドラマなので、コミカライズ版に登場するキャラクターが、主人公を演じた柴 俊夫に似ていなくても仕方ないとはいえ、ベツモノすぎる気がしないでもない。さらにいえば、星人はまだしも、シルバー仮面自体も微妙にドラマ版のマスクと違っていたりする。また、ドラマ版ではシルバー仮面に変身する次男よりも、兄弟たちをまとめる長男が主人公的な活躍を見せていたが、本コミカライズ版ではあくまでも次男・光二が活躍し、兄弟たちは脇役となっている。さらにいえばドラマ版では印象的だった長女も、全くと言っていいほど登場しない。
「ウルトラシリーズ」や「仮面ライダー」シリーズが、放映当時はもちろん、その後復刻や復刊され、コミカライズ版が読める状況にあったのと対照的に『シルバー仮面』に関してはそういったものがない。本作も初出以来単行本化されることがなく埋もれている状態であり、単行本化が待たれる作品といえるだろう。
初出/小学館「別冊少年サンデー」(昭和47年3月号~5月号)
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)