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ひとり食べ歩記~日本橋 路地裏の立ち食いラーメン

出てきたラーメン東京、東西線、日本橋駅。
東西線で日本橋で降りる客の主力は、銀座線に乗り換えるか、タカシマヤへ向かうかだが、いずれも同じ階段になる。また都営浅草線は最も西船橋寄りの改札を出ることになる。

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  • それに比べると、中野よりの端にある、呉服橋方面へ出る改札は、ラッシュ時をはずすととても人が少ない。この改札は最近トイレが格段にきれいに改装され、かつ使う人がいないのでいつも空いているという穴場なのだが、改札を出て地上に出ると、外堀通りと永代通りの交差点があるだけで、商業施設もオフィスもいまひとつなのだ。しかも外堀通りの向こう側には大手町駅からの地下通路が続いていて、いくつかのオフィスビルと繋がっている。雨の日でも安心仕様だ。これではこの改札を使う人は少なくなる。

    しかし、この改札からは、新幹線の東京駅へ出るには大手町よりも行きやすい。近い、ではなく、行きやすい、のだ。そう、あまり人がいないからである。
    大手町から新幹線の日本橋口近くに通路があるのだが、不可解な遠回りになっているので使わない。また、日本橋からは、東京大丸も近い。新幹線に乗る前に弁当などを買うのであれば、東京大丸の地下は弁当も飲み物も充実していて便利だ。

    実は、大丸とも繋がっている八重洲地下街の端と日本橋駅の地下通路の端の距離は200mくらいのものだから、再開発の一部でつないでくれればいいものを、と思うのだが、何か事情があるのだろう。そのおかげで空いているとも言えるのだが。
    しかし、このルートで時々困ることがある。
    昼飯を食べたい時だ。
    特に致命的なのは、大好きなラーメンの店が少ないことだ。
    ラーメンが食べたい時は仕方がないので、中野寄りの出口ではなく、中央の出口から出ることにしている。

    ある日、午前中の会議を終えて会社に戻る折、空腹で日本橋界隈を歩いていた。時間が無いときは「小諸そば」の二枚もりで済ませるが、今日は幸い時間がある。
    思えば日本橋は高島屋から丸善の脇に入り、さくら通りを東京駅へと歩くのがほとんどで、コレドの裏とかには行ったことが殆ど無い。もうちょっと足を伸ばして日本橋川を渡れば飲食店も豊富なのだが、室町砂場で蕎麦が食べたいとか思う日以外は足が向かない。
    そんなことを考えつつコレドの裏を歩いていた。居酒屋の定食営業などがあるが、今日はラーメンが食べたい気分だ。

    しかしここいらにはラーメン屋が少ない。コレドの裏道などにきてしまったらなおさらだ。
    少しふらふら歩いていると、チェーンのラーメン屋があった。嫌いな店ではないが、日本橋でここに入るのもなんとなく気が乗らない。そうしているうちに老舗の洋食屋の前に出た。相変わらず並んでいる。

    洋食屋の前を通り、十字路で左手を見ると、「麺」という一文字の看板が見えた。

    看板

    気になってのぞいてみると、どうも洋食屋がやっているらしい、なんと立ち食いのラーメン屋だ。カウンターは4人も立てば一杯だ。メニューにはラーメン、味噌ラーメンのほか、コールスローやボルシチなんてものもある。これはちょっと食べてみたい。

    並んでいる人はいなかったがカウンターはいっぱいなので外で少し待ったが、立ち食いのラーメンだけに回転は早く、すぐカウンターに立てた。
    そこは、厨房の壁をそのままカウンターにした店だった。中で多くの料理人がいそがしく動いている。そして目の前にラーメン専門の人がいて、注文から調理、食器の下げまで一人でこなしている。

    「ラーメン、と・・・コールスローを」
    「はいどうも。コールスロー一つお願いします!」

    結構な歳の料理人は丼にタレを入れ、高さも直径も1mを超えそうな大鍋からスープを注ぐと、麺を茹で始めた。スープの鍋には様々な野菜や肉類が入り、常にぐつぐつと湧いている。それらを見ている間にウェイトレスさんがどこかからコールスローをもってきて、麺を茹でている料理人に渡した。それはそのまま私の前へ運ばれた。

    「どうぞ」
    「ありがとう」

    コールスローは乱切りキャベツに酢の強めなドレッシングで和えたものだった。ラーメンの前にはちょっといい。
    そうしているうちにラーメンができてきた。

    「おまちどうさまです」
    「どうも」

    盆に乗った丼を受け取った。

    出てきたラーメン

    具はチャーシュー、メンマ、海苔、さやえんどう。チャーシューは周りが赤い。そういえば赤いチャーシューはすっかり見なくなった。久しぶりの対面だ。
    スープをれんげで一口すすってみた。うまい。味の深みがすごい。それはここから見える大鍋の中を見れば納得だ。おそらく洋食のソースの素にもなっているんだろう。

    見える大鍋

    メンマも自家製なのか、独特の味わいだ。かつ太い。いい歯ごたえだ。麺は取り立てて変わったところはないが、スープがよく絡み、手が止まらない。赤いチャーシューは最近では珍しくかたい肉だ。だが昔ラーメンのチャーシューはどこもこんなだったな、と思わせる。

    味噌ラーメンもあるし、煮玉子もあるらしい。次はそれもいいな、と思っているうちに、食べきってしまった。最近は二郎系とかとんこつとか、脂が強く大盛りを売りにしたラーメンばかりでやれやれと思っていたが、この店は古くからの東京のラーメンを出している。

    ようやく日本橋でもいいラーメンが食べられる場所を見つけたが、東京駅へ出る場合にはかなり遠回りになるな、と考えながら、どうして老舗があんな無理につくったような場所でラーメン屋をやってるんだろう、とふと思った。
    そういえば、秋葉原にもひっそりとしたラーメン屋があった。ちょっと気になってきた。

    (文・写真:ひとり食べ歩きの者)

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