インターネットを徘徊していたある日。ちょっとした噂を目にしました。
どんな流行エクササイズより『海上自衛隊体操』に勝るものなし――
インターネットの口コミによると、どうもエクササイズの一つとして海上自衛隊伝統の『海上自衛隊体操』が一部で流行しはじめているようです。色々調べてみると、『海上自衛隊体操』とは、狭い艦内での運動不足解消を目的にプログラムされているそうで、効率的かつ効果的な内容になっているんだとか。
そこで真偽を確かめるべく、海上自衛隊に取材申請。全面協力のもと、『海上自衛隊体操』の謎に迫ってみました。取材に応じてくださったのは、近代5種競技の元選手であり、自衛隊体育学校の教官をつとめたこともある上村 准海尉。
話によると、『海上自衛隊体操』と呼ばれるものは、全てで5段階あり総称してそう呼ばれているそうです。
『海上自衛隊体操』の第1から第5は次のような構成になっています
▼海上自衛隊体操
第1体操 保険体操(ラジオ体操のようなもの)
第2体操 柔軟性の向上(ダイナミックストレッチ)
第3体操 筋持久力、呼吸循環機能の向上(サーキットトレーニング)
第4体操 筋力向上(筋力トレーニング)
第5体操 俊敏性向上(前後5mを移動する運動)
※実施順序:第1(一部省略)→第5→第2→第4→第3→第1(一部省略)
これら全てをこなすと2時間程はかかるそうです。冬場の野外で行っても汗びっしょりになる運動量だそうですよ。
元々は海軍も陸軍体操が主流だったそうですが、狭い艦上、艦内での生活及び兵員の健康と戦闘能力向上の体操を模索していたところ、昭和6年、堀内豊秋大尉がデンマーク体操を自身の部隊に独自に取り入れ効果が得られたことから研究が始められ、昭和17年9月に『海軍体操教範』として設定。そして、終戦を経て更に研究はすすめられ現在の『海上自衛隊体操』になったそうです。
ただ、2~5については、狭い艦内で器具を使わずトレーニングすることを想定しプログラムされているため、近年の艦内ジム設置などの影響もあり、やる機会はめっきり減ってきているそう。
そのため、現在流行の兆しがある『海上自衛隊体操』とは第1を指しているのではないか?というお話でした。
そしていよいよ、流行の兆しがある海上自衛隊伝統のエクササイズ?『海上自衛隊体操』の紹介です。
今回の取材では、海上自衛隊 第3術科学校の皆さんに第1体操を披露していただきました。
上村 准海尉のお話によると、狭い艦内を想定し作られたもののため、足場はわずかの小スペース。(記者がみたところ大体半畳程度)そして飛んだり跳ねたりという激しい運動は、船への影響を考え本当に少なくされているものの(場合によっては飛ぶ項目は行わないそうです)、反面全身くまなく使用するため運動効率は非常に高いそう。
実際に見ての感想ですが、当初伺っていた『ラジオ体操』というよりは『太極拳』に近い印象でした。
全ての動きが緩やかで、飛び跳ねたとしてもつま先は地に残すような感じ。そのため、上村 准海尉のお話どおり、足の先から指の先まで全身くまなく使用しているようでした。
ちなみに「テンポを下げてゆっくりやると更に運動量があがります」という話も。もしこの記事をみて挑戦される方は、スローバージョンもぜひお試し下さい。
▼海上自衛隊第一体操
1:膝を曲げ伸ばせ
2:背伸びの運動
3:頭の運動
4:肩を回せ
5:その場飛び
6:斜上振もも上げ
7:腕を曲げ伸ばせ
8:頭を曲げ回せ
9:胸を反らせ
10:直角捻転
11:横に曲げ
12:前後に曲げ
13:体捻転斜前屈振
14:直角上下振
15:腕回旋前倒屈振
16:4拍子飛び
17:腕振り膝を曲げ
18:腕前回し深呼吸
■取材協力:
海上自衛隊 第3術科学校 学生隊 第21分隊
■掲載動画URL:
ニコニコ動画⇒http://www.nicovideo.jp/watch/1386734650
YouTube⇒http://youtu.be/zu3wtKRE4Bg
※一部誤字を訂正いたしました。「腕⇒胸」
(宮崎美和子/咲村珠樹)