アメリカとイギリスの潜水艦が合同で行う極地訓練「ICEX 2018」が3月7日、北極圏で始まりました。始まって70年以上に及ぶ、極地における作戦遂行能力を確立し、他国との連携を深める恒例の訓練です。

 ICEX(ICE eXercise)は2年に一度、北極圏でアメリカ海軍と同盟国海軍の潜水艦によって行われる訓練。極地で過ごすことで、その天候や地理的特徴を理解し、あわせて同盟国との連携を深めます。

 北極圏の永久海氷に浮上した潜水艦は、そこに訓練期間を過ごすための仮設キャンプを設営します。キャンプの名称は毎回異なり、前回の2016年はサーゴ(Sargo)、2018年の今回はスケート(Skate)という名称になりました。サーゴは北極海で活動したスケート級原子力潜水艦サーゴ(SSN-583)、スケートは北極海で初めて本格的な作戦行動を実施し、原子力潜水艦の能力を実証したスケート級原子力潜水艦のネームシップ、スケート(SSN-578)にちなんだ名称です。スケートはアイススケートではなく、英語で「ガンギエイ」を表す言葉。

 水上艦と違い、潜水艦、特に潜航したまま何ヶ月も大丈夫な原子力潜水艦の場合、不具合が生じて緊急浮上したそこは極地……ということが起こり得ます。そうした時、助けが来るまでそこでサバイバルする必要があります。極地での天候や特性を理解しておくのは、潜水艦乗りにとって重要なのです。

 今年のICEXは、アメリカ海軍からはワシントン州バンゴー基地所属のシーウルフ級攻撃型原潜のコネティカット(SSN-22)と、コネティカット州グロートン基地に所属するロサンゼルス級攻撃型原潜のハートフォード(SSN-768)が参加。イギリス海軍からは、プリマスのデボンポート基地に所属するトラファルガー級攻撃型原潜のトレンチャント(S-91)が参加しています。

 ICEXは、アメリカ海軍の極地潜水艦研究所(本部:カリフォルニア州サンディエゴ)のバックアップのもとに行われます。長年蓄積された、氷海における環境や、海氷下で発射した魚雷の軌道の特徴など、この環境ならではのノウハウを潜水艦の乗組員たちにレクチャーします。また、潜水艦で運びきれない物資は、アラスカから空軍の輸送機が空輸することになっています。これも物量傘での空中投下で、救援物資をどのように扱うか、という訓練にもなります。

 5週間に及ぶこの訓練では、氷から飲み水を作ったりと、極地ならではの過ごし方を学びます。夜は空にオーロラが現れたり、幻想的な光景も。


 5週間後、訓練を終えた頃には、春の息吹に包まれた母港が迎えてくれることでしょう。

Image:U.S.Navy(写真は前回のICEX 2016のものです)

(咲村珠樹)