おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

アレルギーは命の危機に直結する持病です!誰もが気を付け合える為に

 ネット上で「アレルギー持ちの1歳児が見知らぬ高齢者に手渡されたお菓子でアレルギーを発症した」という事例が大きな話題となっています。以前にもアレルギーやアナフィラキシーショックについて解説していますが、今回の事例を通して再度アレルギーについて考えていきたいと思います。(梓川みいな / 正看護師)

  •  今回話題となっているのは、卵アレルギーがある1歳の男児に善意のつもりでお菓子(どらやき)を渡し食べさせてしまい、結果アレルギーの症状が出てしまったという事例。

     作家の師走トオルさんの投稿した、
    「本日、母親から見えないところで一歳の息子にどらやきを一欠片食べさせた70歳ほどの見知らぬ高齢者の方へ。卵アレルギーの息子はそれから2度噴水のように嘔吐し、今もかゆみと下痢に悩まされております。何卒、アレルギーは簡単に子供を殺せることをご理解ください・・・。」
    というツイートが、今回話題の発端となっています。

     現在は息子さんの症状も落ち着いているそうですが、卵を含む食品を口にしてしまうとアレルギー症状が出てしまうので日々の食事やおやつなどには慎重になっているとのこと。また、このツイートには様々な声が寄せられており、あちこちで議論ともなっています。

     師走さんによると、この出来事は師走さんの奥様の体験。場所は沢山の幼児や高齢者など訪れている、あるコミュニティーセンターでのことでした。目の前で、別の幼児が段差から落ちるアクシデントがあり、ほんのわずか目を離したすきにそれは起こりました。ふと気づくと、息子さんが何かもぐもぐ。どうやら目の前にいた高齢の方が、何かをあげてしまったようす。すぐに何を渡したのか確認したところ、どら焼きを渡された事が判明したという流れだったそうです。

    ■救急外来にもよく訪れる「親以外に食べ物をもらってアレルギーを起こした子供」

     お菓子を渡した人は全く悪意のない行動であったと思います。よちよち歩きの幼児を見て可愛さのあまり何かあげたくなるというのもよくある事です。しかし、今回の事例では「アレルギーがあった事を知らずに」「善意のつもり」で結果として「重大な症状を引き起こしてしまう原因となった」わけで、悪意や故意による事件ではありません。

     しかし、アレルギーに対する知識や意識が薄いとこの件と同じ問題は何回でも起こりえます。
    では少しでもこの様な事故を減らすためにはどうしたら良いのか、リプライでも様々な意見が飛び交っています。

     アレルギーは風邪や骨折とは違い、時間がたてば治るとか慣れれば治るという類のものではありません。小児のアトピーや乳幼児期のアレルギーの中には成長とともに抵抗力がついて症状が出なくなる事もありますが、基本的にはアレルギーがある場合、その原因となるものを除去する必要があります。

     症状の程度も様々ですが、ソバや落花生、サバなどは激しい症状が出る事が非常に多く命にかかわります。それ以外の食物が原因のアレルギーも嘔吐や下痢、発熱、全身の激しい蕁麻疹などで入院治療が必要な状態になる場合もあります。

     筆者の看護師仲間で救急外来に勤務している者がいますが、やはりアレルギーで時間外に来院してくる小児は多くおり、親以外の人から食べ物をもらって症状が出現している子供が実に多いという事です。

    ■勝手な判断での「慣らすため」は危険

     親自身は子供のアレルギーを把握していたにもかかわらず、親族宅でトイレに行っている間に親以外の人にアレルギーの原因を含むお菓子を与えられたというのも時折みられます。「慣らすために食べさせてみた」という言葉をよく聞きますが、慣らそうとして食べさせては絶対にダメです。アレルギーの治療として経過を良く観察しながら少しずつ原因物質を与える方法は確かにあります。が、それは救命設備の整った病院でアレルギーの専門医が常駐している状態で入院しながら行う方法なので、専門医以外は絶対にやってはいけない方法である事と認識してください。

     食物アレルギーは様々な種類で起こり、一つが原因の場合もあれば複数の食物が原因の場合もあります。そして市販のお菓子や加工食品などには様々なアレルギーの原因物質が含まれていますがアレルギーについての認識が薄いと今回の様な事故に繋がります。

    ■最近では「アレルギーマーク」の登場も

     見た目ではアレルギーがあるかどうかなんて分からないので、自衛のためにも不特定多数の人がいる場所に自分でアレルギーがある事を申告できない子供などを連れていく時に有効なのが、食物アレルギーがある事を表示するマークを携行する事。

     現在、アレルギーの支援団体は全国に幾つも存在していますが、その中で個人や団体でアレルギーサインの缶バッジや名札プレート、モノや体のどこかに貼れるテープやステッカーなどを販売しているサイトもあります。また、2018年2月には食物アレルギー児向けのおでかけ情報サイトを運営している「アレルギーっ子の旅する情報サイトCAT」が、アレルギーマークの無償ダウンロードも開始しました。こうした活動はまだまだ周知が行き渡っていないのが現状ですが、自主的にアレルギーがある事を発信していく事は周囲への理解の助けとなります。

     災害時にアレルギー物質を含む食品を口にせざるを得ない状況となる事を防ぐためにも、こうした周囲への分かりやすいアピールは有用と考えます。アレルギー対策がとられた防災食品は少しずつ増えてきています。今後はアレルギーの有無にかかわらずすべての人に行き渡っても安心な備蓄食品に切り替えていっている自治体も増えてきています。

     しかし、個々人のアレルギーに対する意識の改革はまだまだ必要である事が多く、より多くの周知が必要。特にアレルギーに対して馴染みが薄い人にはあまりピンとこない場合もありますが、テレビのワイドショーなど様々な媒体で権威のある教授などが発言する事でより多くの人が納得するのではないでしょうか。

     何気ない善意のつもりが原因となった今回のアレルギー発症の一件は、加害者にも被害者にもならない為のヒントを多く含んでいます。世界中のあちこちに潜んでいると思われる同様の事例がより少なくなる為にも、より多くの周知が必要であると思います。

    <記事化協力>
    師走トオルさん(@SiwasuToru)

    <参考サイト>
    一般社団法人エーエルサイン
    アレルギーっ子の旅する情報サイトCAT
    アスモスマイル
    文具道

    <画像>
    アレルギーっ子の旅する情報サイトCAT「アレルギーマーク」プレスリリースより

    あわせて読みたい関連記事
  • あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!
    インターネット, おもしろ

    あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

  • 「少し早い厨二病」……かと思いきや 小3男子のユーモアに脱力&爆笑
    インターネット, おもしろ

    「少し早い厨二病」……かと思いきや 小3男子のユーモアに脱力&爆笑

  • 「宝物が宝物を愛でている」兄たちが新生児をかわいがる光景にほっこり
    インターネット, 感動・ほのぼの

    「宝物が宝物を愛でている」兄たちが新生児をかわいがる光景にほっこり

  • 赤ちゃんがガンダム資料集に夢中? 父の「英才教育」ぶりに反響
    インターネット, おもしろ

    赤ちゃんがガンダム資料集に夢中? 父の「英才教育」ぶりに反響

  • アンパンマンポテトの「正解」?鼻と頬にケチャップで子どもに大ウケ
    インターネット, びっくり・驚き

    アンパンマンポテトの「正解」?鼻と頬にケチャップで子どもに大ウケ

  • ゲーム感覚の「ログインボーナス式ダイエット」が話題 痩せて貯金もできる!?
    インターネット, おもしろ

    ゲーム感覚の「ログインボーナス式ダイエット」が話題 痩せて貯金もできる!?

  • ゼニガメ希望のはずがピカチュウ!? 手作りケーキに起きた“育児あるある事件”
    インターネット, おもしろ

    ゼニガメ希望のはずがピカチュウ!? 手作りケーキに起きた“育児あるある事件”

  • 小学生の耳からシャーペン消しゴム 耳鼻科で無事摘出
    インターネット, びっくり・驚き

    小学生の耳からシャーペン消しゴム 耳鼻科で無事摘出

  • 絵本「ねずみくんのチョッキ」シリーズ、初のTVアニメ化が決定 誕生50周年の節目に
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    絵本「ねずみくんのチョッキ」シリーズ、初のTVアニメ化が決定 誕生50周年の節目…

  • 「男児を育ててるな」と実感する瞬間 廊下で壁登りする姿に共感続々
    インターネット, おもしろ

    「男児を育ててるな」と実感する瞬間 廊下で壁登りする姿に共感続々

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    2. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…
    3. 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前にリリースされたMMORPG「Dark Ages」をご存じでしょうか。年月とともに人口は減少…

    編集部おすすめ

    1. 英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      日本でうなぎといえば、甘いタレをつけて香ばしく焼き上げた「蒲焼き」が定番のスタイル。白焼きなどもあるにはありますが、うなぎといえばやっぱり蒲…
    2. たこばさんの「糸こんにゃく炒飯」

      えっ…これ糸こんにゃく!?目も舌も騙される“ヘルシー炒飯”を実際に作ってみた

      「糸こんにゃくで作った炒飯が本物そっくりに仕上がる」と聞いたら、信じられるでしょうか。大阪市のたこ焼き店「たこ焼たこば」の店主がSNSに投稿…
    3. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    4. あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      子どもにとってかくれんぼは、ハラハラドキドキのスリリングな遊び。自分だけにしか分からないであろう隠れ場所を見つけて「ここなら大丈夫」「絶対見…
    5. プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      アニメ映画「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」公式は9月12日、「キミプリ♪ぬりえコンテスト」において…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト