2018年9月、航空自衛隊の航空中央音楽隊がヨーロッパへ演奏ツアーに出かけています。その中で、9月21日にドイツのデュッセルドルフで開催されたドイツ連邦軍主催の国際音楽フェス「MUSIKFEST der BUNDESWEHR」に出演。ドイツの人々に日本の音楽を届けました。
9月21日、デュッセルドルフにあるISSドームで、ドイツ連邦軍主催の国際音楽フェス「MUSIKFEST der BUNDESWEHR(ドイツ連邦軍音楽祭)」が開催されました。これはドイツをはじめ、各国の軍などに所属する音楽隊が集まって演奏を披露するというもの。ヨーロッパではこのような音楽フェスが各地で開かれており、音楽を通しても軍が交流を深めています。
2018年の「MUSIKFEST der BUNDESWEHR」は、ヨハネス・B・ケルナーさんを音楽監督に迎え、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、フランス、スコットランド、アメリカの7か国から、総勢800名以上の演奏者やパフォーマーが参加。自衛隊の広報イベントとして無料で行われる「自衛隊音楽まつり」とは違い、チケットは大人89ユーロ〜29ユーロ(約9000円〜3100円)と通常のクラシック音楽コンサート並みの値段がするのですが、この収益はドイツ連邦軍の外郭団体である社会福祉ファンドなどに寄付され、公共の福祉に役立てられます。日本でもこのようなことができる仕組みになるといいですね。
会場のISSドームには、ドイツ軍の広報車も出張して広報活動をしています。客層は落ち着いた大人が目立つ印象。プログラムを配布する係員も、退役軍人のような感じです。
会場内部は横浜アリーナや大阪城ホールのように、真ん中に広いアリーナがあり、それを取り囲むスタンドに客席が設けられています。軍の音楽隊といえばマーチングですから、そのパフォーマンスが存分に行えるようになっている訳です。
プログラムは前半と後半に分かれており、日本の航空自衛隊航空中央音楽隊の出番は後半、最後から2番目。前半にハンガリー国防軍中央音楽隊、フランス海軍音楽隊、オーストリア軍のウィーンガード音楽隊、スコットランドのパイパーズ・トレイル、タトゥーダンスカンパニーなどが登場。後半にアメリカ欧州陸軍音楽隊、航空自衛隊航空中央音楽隊が登場します。
各音楽隊は素晴らしい演奏はもちろん、マーチングやパフォーマンス、そして華麗な衣装が印象的です。特にスコットランドのパフォーマンスは華麗。タトゥーダンスカンパニーはタータンチェックのスカートをひるがえし、隊形を変えながら剣舞を見せてくれました。
後半最初に登場したのは、ドイツ連邦軍ウルム音楽隊。ドイツの伝統音楽などを披露しました。
アメリカ欧州陸軍音楽隊はボーカリストを揃えたミュージカル仕立て。映画「バンド・オブ・ブラザース」の曲やビッグバンドジャズ、さらにはアリシア・キーズさんやフル・サークルの曲も歌い上げました。
トランポリンや跳馬を使った変わり種は「フライング・グランパズ」のパフォーマンス。ハンブルク警察に所属する人々で結成された体操パフォーマンスグループです。グループ名の「グランパ(おじいちゃん)」というには少々若い感じもしますが、体操選手としては確かにもう引退を迎えた年齢に見えます。しかし華麗な演技を見せてくれました。
いよいよ航空自衛隊航空中央音楽隊の登場です。まずはドラムマーチでマーチングを披露。そして航空自衛隊の公式行進曲「空の精鋭」。
リオデジャネイロオリンピックの閉会式でも使われた「スーパーマリオブラザース」では、マリオとルイージに扮した隊員がコミカルなパフォーマンスも見せてくれました。
2017年に航空自衛隊初のボーカリストとして加入した森田早貴2等空士は、振袖姿で「ふるさと」を独唱。その周りを音楽隊がマーチングして盛り上げます。
今度は勇壮な和太鼓の響き。入間基地の入間修武太鼓による「八木節」が演奏されます。最後は再び「空の精鋭」でパフォーマンスを締めくくりました。
グランドフィナーレは音楽監督ケルナーさんの指揮によるビッグバンド。ゲストミュージシャンであるジョン・マイルズさんのピアノをフィーチャーして、今日の出演者が勢ぞろい。マイルズさんは上からピアノとともに登場し、クライマックスでは花火も。
観客の拍手の中、出演者たちが退場していきます。最後に参加各国の国旗が退場して、3時間にわたる音楽フェスは終演となりました。
ドイツ「MUSIKFEST der BUNDESWEHR」での演奏を終えたのち、航空自衛隊航空中央音楽隊は、オランダに移動。この週末、現地での演奏会に出演予定です。ヨーロッパで本格的な音楽フェスに出演し、各国のパフォーマンスを見て交流したことは、きっと今後にプラスになることでしょう。
Fotos:Midori Harada
(咲村珠樹)