2019年4月17日16時46分(アメリカ東部時間)、ノースロップ・グラマン(旧:オービタルATK)の国際宇宙ステーションへの無人補給船シグナス(NG-11)が、バージニア州のNASAワロップス飛行施設からアンタレスロケットで打ち上げられました。シグナスは4月19日に国際宇宙ステーションに到着し、第59次長期滞在(Exp59)のアン・マクレイン宇宙飛行士(NASA)とデビッド・サン=ジャック宇宙飛行士(カナダ)によって、ロボットアームで把持されてモジュールに取り付けられる予定となっています。

 毎回シグナス補給船には、過去の宇宙飛行士に敬意を表して、その名前が船名につけられます。今回のシグナスNG-11には、NASA第3期選抜の宇宙飛行士(14名だったので「ザ・フォーティーン」の別名で呼ばれる)で、1967年1月27日にアポロ1号火災事故で命を落としたロジャー・ブルース・チャフィーの名から「S.S.ロジャー・チャフィー」と名付けられました。「S.S.」は宇宙船(Space Ship)の略称です。

 ちなみにこの1963年10月に選抜されたNASA第3期のメンバーには、宇宙で初めて「自撮り(1966年ジェミニ12号)」をした上、アポロ11号で月面を歩いたバズ・オルドリン氏や、アポロ11号の司令船パイロットを務めたマイケル・コリンズ氏のほか、アポロ12号月着陸船パイロットのアラン・L・ビーン(2018年没)、アポロ15号コマンダーのデービッド・R・スコット氏、アポロ17号コマンダーとして月面に滞在した今のところ最後の人物であるユージン・A・サーナン(2017年没)と、月面に降り立った人物(ムーンウォーカー)が4名もいます。その反面ロジャー・チャフィーをはじめ、セオドア・C・フリーマン(1964年T-38の訓練中に事故死)、チャールズ・A・バセットJr.(1966年T-38の訓練中に事故死)、クリフトン・C・ウィリアムズ(1967年T-38の事故で脱出後死亡)と、4名が宇宙へ旅立つ前に命を落としているという、NASAの歴史でも栄光と悲劇に彩られた世代です。

 今回の搭載物資は食料や水(酸素は水を電気分解して作られる)のほか、いくつかの科学実験用機器となっています。医学生理学系の実験で用いられるカナダのバイオアナライザーは、細胞や分子が軌道上の微小重力環境でどのような変化や振る舞いをするのかを測定する装置。カナダではこのほかにも、血管の老化と微小重力環境との関係を調べる実験装置を国際宇宙ステーションに送り込みます。

 また、自立浮遊型の小型宇宙飛行士支援ロボット「Astrobee(アストロビー)」も搭載されています。これは以前に国際宇宙ステーションで実地試験を行なった小型ロボット「SPHERES(スフィアズ)」で得られた知見をもとに開発されたもの。一辺の長さがおよそ30cmほどの立方体(サイコロ型)で、各種センサーと小さなマニピュレータが取り付けられています。




 Astrobeeは宇宙飛行士に代わって定期的な実験観察や、ヒューストンの管制センターに情報を伝える機能を持っています。様々な実験で宇宙飛行士のスケジュールは余裕がないため、人間には変化に対応する必要がある仕事に集中し、急な予定変更に備えるように役割分担をする必要があります。JAXAでも「Int-Ball」のようなカメラロボットが国際宇宙ステーションで活躍していますし、各国で宇宙飛行士を支援するロボットが開発されているのです。

 シグナス補給船「S.S.ロジャー・チャフィー」が国際宇宙ステーションに到着するのは、アメリカ東部時間の4月19日5時半ごろ(ロボットアームの操作状況により前後する可能性あり)。NASAではYouTubeなどの「NASA TV」や、実況用の特設サイトで4時(日本時間4月19日17時)から生中継を開始する予定となっています。

Image:NASA/Northrop Grumman/CSA(カナダ宇宙機関)

(咲村珠樹)