アメリカ国防総省は2020年3月20日(現地時間)、極超音速滑空体「C-HGB」の実射試験をハワイで実施し、成功させたと発表しました。この試験は3月19日夜に陸軍、海軍とミサイル防衛局(MDA)の共同で行われ、試験機は設定された着弾点に到達したとしています。
マッハ1を超える超音速(スーパーソニック)のうち、特に音速の5倍にあたるマッハ5以上の速度を極超音速(ハイパーソニック)といいます。この速度域に達すると、いわゆる「音の壁」を形成する、運動する物体の前方にある空気がさらに圧縮され、断熱圧縮(エアコンやエコキュートなどに使われるヒートポンプと同じ原理)により物体は非常に高い温度にさらされます。これを俗に「熱の壁」といいます。
このため、大気圏内で極超音速飛行するためには、超音速の時に比べ、耐熱シールドの開発といった技術的課題を克服する必要があります。アメリカでは極超音速兵器開発に向けたケーススタディとして、海軍と陸軍との共同で、極超音速滑空体C-HGB(Common Hypersonic Glide Body)を開発していました。
今回の試験は、2017年10月に実施された第1次飛行試験(Flight Experiment 1)で得られた知見を盛り込んだもの。ハワイのカウアイ島にある太平洋ミサイル発射場で実施されました。
現地時間の3月19日22時30分に発射されたC-HGBは、マッハ5以上の極超音速で飛翔。設定されていた着弾点に到達したといいます。この飛行試験では、アメリカミサイル防衛局(MDA)が飛翔するC-HGBの追跡観測を担当。極超音速兵器を探知・追跡し、迎撃するという技術研究にも貴重なデータが提供されました。
アメリカ陸軍では、2023年にも長距離極超音速兵器小隊を発足させる予定。M983 HEMTT(重高機動戦術トラクター)とM870(40トン低床セミトレーラー)を組み合わせて運用することを視野に、今後試験を続けていくこととしています。
<出典・引用>
アメリカ国防総省 ニュースリリース
アメリカ海軍 ニュースリリース
アメリカ陸軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)