おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

アメリカ陸軍の次世代地対地ミサイルPrSM 3回目の試射に成功

 アメリカ陸軍とロッキード・マーティンは2020年5月1日(アメリカ東部時間)、次世代型地対地ミサイルPrSMの3回目となる実射試験を4月30日に実施し、成功させたと発表しました。実射試験の成功は3回連続で、今回は近距離での試射に成功しています。

  •  アメリカ陸軍がロッキード・マーティンと開発しているPrSM(Precisition Strike Missile)は、現在MLRS(多連装ロケットシステム)やHIMARS(高機動ロケット砲システム)で使用している地対地ミサイル、MGM-140“ATACMS(Army Tactical Missile System)”の後継となるもの。2023年の導入を目指して開発が進められています。

     これまでに、PrSMの実射試験はニューメキシコ州のホワイトサンズミサイル射場で、2019年12月と2020年3月に実施されてきました。2019年12月の試験では240km先の遠距離目標に対する性能が確認され、2020年3月の試験では180km先の中距離目標に対する性能がテストされました。

     今回の試験では、これまでで最も短い85km先の近距離目標に対する性能について検証がなされました。アメリカ陸軍の長距離精密火器合同チームのディレクター、ジョン・ラファーティ准将は「近距離での性能試験は最も困難なものです。というのも、発射されてから目標に命中するまでの時間が短いため、発射後すぐの加速段階で目標に対する軌道修正が必要になるのです。ですから我々は240kmから試験をスタートし、次に180km、そして今回ようやく85kmまで目標距離を詰めてくることができました」と、試験内容について語っています。

     PrSMの最大有効射程は、ATACMSの300kmを大きく上回る500km。その分、発射時の加速も強烈になります。ラファーティ准将によれば、85km先の目標に到達するのは約91秒後だとのこと。正確に目標を捉えるには、素早く的確な軌道修正が必要となります。

     発射されたPrSMは見事に85km先の目標を捉え、試験は成功。試験を見守ったアメリカ陸軍将来コマンド(Army Futures Command)司令官のジョン・M・マレー大将によれば「完璧な成果で、飛行の軌跡もまったく正常だった」とのことです。

     ロッキード.マーティンのミサイル・火器管制部門で、精密火力・戦闘機動システム担当副社長を務めるゲイリア・キャンベル氏は、試験成功を受け「今回のPrSMにとって非常に負担の大きい近距離射撃試験でも、3回連続の成功を収めたことで、PrSMは戦術の基本となるミサイルとしての高い効果と耐久性、信頼性を有していることを改めて証明したといえるでしょう」とのコメントを発表しています。

     アメリカ陸軍では、2021年に3回の長距離実射試験を追加で実施するとともに、2発のミサイルを連続で発射する試験も予定しています。PrSMはロケットランチャー6発分のスペースに2発入るので、HIMARSなら2発、MLRSでは4発の携行が可能。そのため、実戦でも想定される連続発射試験は必須といえます。

     陸軍将来コマンド司令官のマレー大将によれば、2023年に導入が予定される最初のPrSMは、飛行場など動かない地上目標を攻撃するものになるとのこと。2025年には移動目標にも対応するアップグレード版の導入を計画しているそうです。

    <出典・引用>
    アメリカ陸軍 ニュースリリース
    ロッキード・マーティン ニュースリリース

    Image:Lockheed Martin/U.S.Army

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 弾道ミサイル対処訓練を行う護衛艦あたごの乗組員(画像:海上自衛隊)
    宇宙・航空

    弾道ミサイルに対処する日米共同訓練「レジリエント・シールド2023」

  • LR-PGKの飛翔イメージ(画像:BAEシステムズ)
    宇宙・航空

    射程距離は「大和」主砲の1.6倍 BAEシステムズ長射程精密誘導砲弾キット実射試…

  • 衛星通信アンテナを展開するアメリカ海兵隊員(画像:USMC)
    宇宙・航空

    アメリカ国防総省 極超音速兵器を探知する人工衛星網構築計画を明らかに

  • スイス空軍の次期戦闘機に採用されたF-35A(Image:スイス連邦防衛・国民保護・スポーツ省)
    宇宙・航空

    スイス空軍次期戦闘機にF-35Aを36機調達 ペトリオット対空ミサイルも5セット…

  • ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられるGPS IIIの5号機(Image:SpaceX)
    宇宙・航空

    測位精度が3倍に向上 次世代GPS衛星「GPS III」5号機の打ち上げ成功

  • アルテミス計画での宇宙飛行士と月面車の想像図(Image:GM/Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    GMとロッキード・マーティン NASA「アルテミス計画」用の月面車を共同開発

  • 弾道ミサイル警戒衛星「SBIRS GEO-5」の打ち上げ(Image:ULA)
    宇宙・航空

    アメリカの弾道ミサイル警戒衛星「SBIRS GEO-5」打ち上げ成功

  • KF-21「ポラメ(若鷹)」完成披露式典での韓国・文在寅大統領(Image:KAI)
    宇宙・航空

    韓国の国産戦闘機KF-21「ポラメ」試作1号機をお披露目

  • F-35A1号機の前に立つデンマーク空軍パイロットら(Image:Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    デンマーク空軍がF-35Aの1号機を受領 非公式の愛称は「パンサー」

  • 初飛行で離陸するデンマーク向けF-35Aの1号機(Image:Lockheed Martin)
    宇宙・航空

    デンマーク空軍向けF-35Aの1号機が初飛行

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • YouTube、永久停止クリエイターに「再出発の機会」 新チャンネル申請を可能にする試験導入を発表
    インターネット, サービス・テクノロジー

    YouTube、永久停止クリエイターに「再出発の機会」 新チャンネル申請を可能に…

  • 南インド伝統のチキンカレー「ケララチキンカレー」
    商品・物販, 経済

    松のやが南インド伝統の味を再現 「ケララチキンカレー」新発売

  • 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)
    商品・物販, 経済

    ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」…

  • キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化
    商品・物販, 経済

    キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

  • 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言
    社会, 経済

    時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

  • ゴロっとチキンのカレーナポ
    商品・物販, 経済

    パンチョ初の人気投票1位「カレーナポ」が進化 期間限定で復刻登場

  • トピックス

    1. 藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      プロの声楽家として活動する傍ら、1時間1000円から自分の時間を「レンタル」している男性。キャリア豊…
    2. ドムドムが“カニまるごと”の衝撃バーガーを再販 新作コチュジャン味を食べてみた

      ドムドムが“カニまるごと”の衝撃バーガーを再販 新作コチュジャン味を食べてみた

      ドムドムハンバーガーは10月14日に、カニを丸ごと挟んだ「丸ごと!!カニバーガー」を販売開始しました…
    3. 丸山製麺が「ラーメン大好き小泉さん」とコラボ!小麦麺使用の新感覚「らーめん缶」を実食

      丸山製麺が「ラーメン大好き小泉さん」とコラボ!小麦麺使用の新感覚「らーめん缶」を実食

      丸山製麺が10月6日から、人気ラーメン漫画「ラーメン大好き小泉さん」とコラボした「らーめん缶」を、東…

    編集部おすすめ

    1. 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)

      ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」を発売

      マクセルイズミ株式会社は、ストッキングやタイツなどの繊細な衣類にも対応する毛玉取り器の新モデル、「毛玉とるとる Pro(KC-NW825)」…
    2. キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンが、バンダイの「ガシャポン」とコラボレーション。歴代のカメラとレンズをミニチュア化した「Canon ミニチュアカメラコレクション」を…
    3. 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信社は10月9日、自民党本部での取材中に「支持率下げてやる」などと発言した本社映像センター写真部の男性カメラマンを厳重注意したと発表し…
    4. 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      言わずと知れた人気コンテンツ「ちいかわ」。かわいくもハードなあの作品世界に入っていきたいと願う人は多いはず。筆者もその1人です。しかし二頭身…
    5. ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      キーボードに差し込まれたトランプのジョーカーと、その裏に書かれた「げぇむすたあと」の文字。Xユーザーの「たーけ」さんが、たまたま入ったネット…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト