国際宇宙ステーションに長期滞在する宇宙飛行士。訓練風景を報道で目にすることがありますが、多くは実験や船外活動など、任務に関するものばかり。宇宙ステーションでの生活については、どうしているのでしょう。ロシア宇宙庁(ロスコスモス)が、2020年10月14日打ち上げ予定のソユーズMS-17クルーの宇宙ステーション生活訓練の様子を紹介しました。

 2020年10月14日に打ち上げが予定されているソユーズMS-17。国際宇宙ステーションに滞在しているクルー3名と合流し、第63次長期滞在(Exp 63)と、JAXAの野口聡一宇宙飛行士らとともに第64次長期滞在任務につく予定のクルー3名が搭乗予定です。

 国際宇宙ステーションで実験などの任務につくのは、1日のおよそ半分以下。多くの時間は「宇宙での生活」に費やされます。このため、宇宙ステーションでの生活で使われる設備についても、取り扱いに習熟しておく必要があります。

 9月17日、本クルーとバックアップクルーの6名は、ロシアで国際宇宙ステーションのロシア側モジュールの取り扱いについて、シミュレータ訓練を実施しました。ソユーズMS-17の本クルーは、セルゲイ・リジコフ宇宙飛行士(ロシア:2回目の宇宙)、セルゲイ・クド=スヴェルチコフ宇宙飛行士(ロシア:初)、キャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士(アメリカ:2回目の宇宙)の3名。ルビンズ宇宙飛行士は前回、JAXAの大西卓哉宇宙飛行士と長期滞在をしています。

 クルーは実物大の国際宇宙ステーション(ロシア側区画)を再現したシミュレータに入り、内部の機器について確認。訓練では、実際の長期滞在で予定されるスケジュールに従い、生活に使用する機材の取り扱いを学びます。

 私たちがよく目にする、宇宙での記者会見の様子。この時、宇宙に報道カメラマンはいませんから、ビデオカメラのセッティングなど、全部の用意をしなければなりません。もちろん、マイクなどの音響機器も宇宙飛行士が取り扱います。

 ちなみにアメリカ、ロシアともビデオカメラはソニー製、写真用のデジタル一眼レフはニコン製が採用されており、宇宙飛行士が操作に戸惑わないようになっています。

 宇宙で慌てないよう、地上のシミュレータで記者会見の手順も確認。まるでテレビ番組のリハーサルのようです。日本人で初めて宇宙に滞在した秋山豊寛宇宙飛行士が、宇宙からの第一声で「これ本番ですか?」とテレビマンらしい言葉を発したのを思い出します。


 シミュレータのエアロック側から撮影された写真を見ると、ソユーズ宇宙船から国際宇宙ステーションへ入っていく宇宙飛行士の気分が味わえそうな感じ。ドッキングした通路は、想像以上に狭そうなのが分かります。

 また、日々の食事も重要です。ロシア側モジュールにある宇宙食ラックと、折りたたみ式のテーブル、そして調理器具についてもマニュアルと照らし合わせ、手順を確認していきます。

 同様の訓練は、バックアップクルーのオレグ・ノヴィツキー宇宙飛行士(ロシア)、ピョートル・ドゥブロフ宇宙飛行士(ロシア)、マーク・ヴァンデハイ宇宙飛行士(アメリカ)も実施。記者会見の練習や宇宙食の取り扱い方、そして機器トラブル対処などの作業手順を確認していきます。


 教官チームは両クルーとも、宇宙ステーション内の生活機器取り扱いや、緊急事態対処の様子を高く評価。宇宙ステーションで「生活」する際の準備が万全であると太鼓判を押しました。

 宇宙飛行士たちは今後、9月22日・23日にソユーズ宇宙船と国際宇宙ステーションのロシア側区画に関し、より複雑なシナリオでの訓練をする予定。10月14日の打ち上げに向け、着々と準備を進めています。

<出典・引用>
ロシア宇宙庁(ロスコスモス) ニュースリリース
Image:ロスコスモス

(咲村珠樹)