アメリカ海兵隊は2020年9月23日(現地時間)、新しいハンドガン(サイドアーム)に選定された M18の部隊配備を9月より開始したと発表しました。全部隊が使用する新しいハンドガンはベレッタM9以来で、既存のM9、M9A1、M45A1、M007を置き換え、2022年末までには全ての部隊にM18の配備が完了する予定です。
新しいハンドガンに採用されたM18は、SIG SAUER P320をベースにした9mm×19の実包を使用するセミオートマチック式。グロックM007と同じくポリマー(樹脂)フレームを採用しており、様々なパーツの付け替えで幅広い手のサイズや任務に適応する「モジュラー・ハンドガン・システム」となっています。
M18はベレッタM9と同じく、海兵隊のほか陸海空軍でも採用される4軍共通のハンドガン。スチール(鉄)フレームでハンマー式の撃発装置を持つM9とは違い、ポリマーフレームでストライカー方式の撃発装置と、これまでとは全く異なったものとなります。
ストライカー方式の利点は撃発装置が内蔵されているため、ハンマーが服に引っかかったり、ハンマーが異物を挟み込んで撃てなくなる、ということがない点。そしてハンマーを起こしたシングルアクションと、ハンマーが落ちた状態から撃つダブルアクションの区別がなく、いつでも一定の力(トリガープル)で撃てる(その代わりファイアリングピンの作動する感覚を指で感じにくい)という点です。
バージニア州のクワンティコ海兵隊基地で、兵器訓練大隊のピストル・プログラム・マネージャを務めるランダル・マクレラン3等軍曹は「一部の海兵隊員にとっては、M9のように2種類のトリガープルがあると、その異なる感覚に慣れるのが困難だったりします。しかしM18であれば、いつでも一定のトリガープルで撃つことができます」と、ストライカー方式を採用するM18の利点を語っています。
モジュラー・システムを採用するM18は、グリップ部の部品を交換することで、女性のように小さい手から、大きな手まで、幅広い体格に合わせて最適なホールド性を確保できます。また、フレームにはレーザーポインティングデバイスや、タクティカルライトといったアクセサリーを装着するためのレールがあるのも大きなポイント。
アメリカ軍におけるM18の採用計画を主導した、アメリカ陸軍のトム・ヴァス氏は「全体的に見て、海兵隊がM18を採用したのは、非常にポジティブな判断だったと思います。これにより部隊全体に利益をもたらし、海兵隊が任務を遂行する際の安全性と有効性を高めることでしょう」と語り、現在部隊によってM9、M9A1、M45A1、M007と4種類のハンドガンが使われているのを統一できるメリットに言及しています。
これまでにM18の体験をした海兵隊員の反応も上々で、特に自分の手に合ったグリップにできることで、銃の取り扱いが楽になったという意見が上がっています。2020年9月16日には、トロイ・E・ブラック海兵隊最上級曹長がクワンティコを訪れ、M18の使い心地を射撃場で試しました。
海兵隊システムコマンドでM18計画を担当するブライアン・ネルソン氏は「現在のところ、訓練課程で変更されたのは(ハンマー式では必須だった)シングルアクションとダブルアクションの射撃、そしてハンマーを戻す“デコッキング”の部分だけです」と語っています。
30年以上前になる1980年代のベレッタM9採用以来、久々に全部隊を対象としたハンドガン刷新となるM18。アメリカ海兵隊では、2022年の配備完了を目指します。
<出典・引用>
アメリカ海兵隊 ニュースリリース
Image:USMC/USAF
(咲村珠樹)