ソニーが24歳以下の世代を対象とし、ソニーのノウハウを活用してアイデアを育てるコンペティション&ワークショップ「U24 CO-CHALLENGE 2021」で、グランプリが決定しました。グランプリに輝いたのは医療系学生チームによる、患者さんの心のケアをイノベーションする病院内サウンドデバイス「Ear Psychology」です。

 テーマを「Create the Beyond ~その先の世界を作るのは、君だ。~」として実施されたコンペティションには、83チームから応募があり93案のアイデアが寄せられました。この中から最終ノミネート作19点が選出、そしてファイナリスト3組による最終プレゼンテーションを通して、グランプリのチームがついに発表されました。

「U24 CO-CHALLENGE 2021」ロゴ
「U24 CO-CHALLENGE 2021」最終プレゼンテーション

 グランプリに選出されたチーム「MSW」の「Ear Psychology(イヤー・サイコロジー)」というアイデアは、ワイヤレスイヤホンとスマホアプリから構成されるシステムを使用し、病院内で患者さんの心のケアとなるサウンドを届けるサービスです。

「Ear Psychology」

 患者さんのことを一番理解している家族や友人が励ましのメッセージを吹き込んだ「声の寄せ書き」という機能や、患者さんが好む音楽をアップロードすると、病院内の様々な場所でワイヤレスイヤホンからそのサウンドが流れる機能を搭載。病院での面会時間が取れないなど、患者さんの応援機会が持てない人でも、この仕組みを通じてサポートが可能になります。

「Ear Psychology」

 受賞した「MSW」は、医療系学生の原留千依さんと久原彩花さんの2名で構成されるチーム。長期入院で家族と離れた小児科のお子さんや、手術前に不安を感じている患者さんを目の当たりにし、医療技術が格段に進歩する一方で、患者さんの癒やしやケアへのテクノロジーはあまり進んでいないのではないか、という気づきが構想の原点だったそうです。

チームMSWのプレゼンテーション

 チームMSWの2人は、このシステムにより病院に対する「怖い」「行きたくない」などのネガティブなイメージを変革し、医療に貢献したいという願いを胸に、このプログラムに参加したといいます。

チームMSWのプレゼンテーション

 審査員からは、医療従事者として病院の空間をより良いものにしたいというビジョンのもと、発想に「患者さんの心のケアに対する明確な問題意識」や「音の持つ効果に着目した創造性」、そして「利用する患者さん目線で設計されており、このサービスを必要としている人たちを幸せにするアイデア」という点が評価されました。

 グランプリ受賞を受け、チームMSWのお2人は「2人のチームで臨みましたが、お互いに意見を交換することで、発想を広げることができました」とコメント。また「「アイデアの育て方」の技術をメンタリングを通じて学ぶことができたのが大きな収穫で、このスキルは今後医療の仕事をしていく中で、役立てていきたいと思います」と、このプログラムで得たものの大きさに言及していました。

チームMSWの原留千依さんと久原彩花さん

 将来については「受賞したアイデアはプロトタイプに終わらせず、実際に病院で実用化させて、病院のイメージを変えることができれば嬉しいです」と語ったチームMSWのお2人。実現される日が待ち遠しいですね。

 ソニー株式会社 ブランド戦略部門の小堀弘貴氏は、ファイナリスト3組について「課題に対して理屈ではなく感覚的に捉える傾向がある。自分の根っこにある感覚を彼らはとても大事にしていて“頑固”だが、その頑固さがアイデアを発展させる中で花開いていった」と評していました。

 惜しくもグランプリを逃したファイナリストのうち、チーム「CODESSAY」のアプリケーション型履歴書「もう一つの履歴書「コド」」は、長年アップデートされていない履歴書に疑問を持ち「本当の自分を表現するには、表層的には見られない意識の部分、つまり心の中の“履歴”を可視化することも必要ではないか」という仮定のもと提案されたアイデア。

「もう一つの履歴書「コド」」

 無意識化に形成される内なる価値観と向き合い、整理(断捨離)することにも着目し、専用アプリ「コドアプリ」に音楽や動画の配信サービスなどを連携させ、視聴した画像・音楽・動画を履歴化します。これを定期的に断捨離し、選抜されたコンテンツ3点をギャラリーのようなアプリ内の空間に展示することで、心の中の整理とともに、他者とのコミュニケーションで理解してもらうためのツールとして役立てます。

「もう一つの履歴書「コド」」
チーム「CODESSAY」の今須詠美さん

 チームCODESSAYの今須詠美さんは、コンテストを振り返り「学んだことは「わかりやすく伝える」ことの技術です。メンタリングを通じてアイデアを深めるなかで、人の感覚に訴える言葉の選び方や、納得を得られる論理の両面を持ったプレゼンテーションにチャレンジする経験ができました。また、自分の強みを発見できたことも収穫の一つで、今後やりたい仕事についたときに、この経験をいかしていきたいです」と語っていました。

チームCODESSAYの今須詠美さん

 また、チーム「ミカンズ」のARアプリにより歴史上の人物を喋らせて表情を与え、歴史をエンタメ化する「lekishi kokoshi」は、ARアプリを使って歴史に登場する人物をコケシ人形としてスマホ上で制作し、セリフや表情を吹き込んで楽しめるもの。制作したコケシは自由にダウンロードでき、AR空間に配置して歴史上の人物を身近に感じることができます。

「lekishi kokoshi」

 勉強に取り組むという精神的ハードルを下げながらも、知らず知らずにアクティブラーニングとしての学習効果を促すことを狙ったアイデア。歴史だけでなく、他の教科にも応用できる発展性があり、話したり表情を見せたりするコケシにすることで、勉強をエンタメ化して学びをサポートすることを目的としています。

「lekishi kokoshi」
ミカンズの河野颯太さん

 ミカンズの河野颯太さんは「コンテストに参加してアイデアを深める中で、自分のやりたいことに対して向き合う時間を持つことができました。また、最終プレゼンテーションを多くの人に見てもらい、さまざまな感想や反応をいただくことができ、今後もアイデアをより深めていきたいと思いました」と、今回のプログラムを総括していました。

ミカンズの河野颯太さん

 最終プレゼンテーションの様子は、NewsPicks公式サイトからアーカイブ配信を視聴可能。U24世代の未来を変革するアイデアの数々、その将来性をそれぞれの視点から見てみるのも悪くなさそうです。

情報提供:Sony Creators Gate「U24 CO-CHALLENGE 2021」PR事務局

(咲村珠樹)