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元検察職員が教える!自分や大切な人を守るための防犯5箇条

update:

 筆者は以前、検察事務官として検察庁に勤務しており、検察官の指揮の下さまざまな事件・事故の捜査に携わっていました。

 検察事務官として働き始めて驚いたのは、犯罪の多さ。「自分が知らないだけで、日々こんなに多くの犯罪が発生しているんだ」と驚いたことを今でも覚えています。私たちが日頃ニュースや新聞で目にする犯罪はほんの一部だったのです。

 しかも、事件は私たちの遠くではなく、実は身近なところで大半が起きています。あした、自分が被害者になっていてもおかしくないのです。とはいえ、ちょっとした防犯意識でいくつかの被害は防ぐことができます。

  •  検察事務官として事件を見てきたなかで思うのは、「基本的な防犯知識の重要性」。今から紹介する「防犯5箇条」は、基本的な対策を多く含んでいるため、知っている方が多いかもしれません。でもだからこそ、今一度強く認識してほしい点。「基本」とは、何度も事がおきその都度言われてきた反省点・対策を凝縮させた集合知でもあります。繰り返し聞くことで、自分の防犯意識を高めるものへと繋がります。

     「そんなの知ってるよ」「何度も言われてるじゃん」とは思わず、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

    ■ 2021年に起こった犯罪の数

     警察庁の統計によると、2021年に起こった犯罪(刑法犯)の認知件数は約56万件以上です。(※1)この認知件数は、一日あたりに換算すると平均1500件以上。なお認知件数というのは、警察が「犯罪を確認した件数」という意味なので「そもそも被害に気付いていない事件」などを含めると、実際に発生している犯罪件数はもっと多いということになります。

     また、覚せい剤取締法違反や銃刀法違反、痴漢や盗撮などの迷惑防止条例違反といった特別法犯も上記の数字には含まれていません。ちなみに、2021年の特別法犯の検挙件数(※2)は約7万件です。

     このように、日本では毎日多くの犯罪が発生しています。犯罪に巻き込まれないための防衛策をとっておくことは、自分や大切な人を犯罪から守ることに繋がります。

     決して「自分には関係のないこと」と考えずに、日頃から防犯意識を高めることが重要です。

    ■ 元検察職員が教える防犯5箇条

     冒頭でもお伝えしたとおり、筆者は検察事務官として検察官の指揮のもと、被疑者の取調べや被害者・遺族からの聴取に立ち会ったり、事件記録や証拠品の精査をしたりと、さまざまな捜査をおこなってきました。

     そんな捜査経験から得た、基本の防犯ポイントを5つお伝えします。ぜひ皆さんの防犯意識を高めるきっかけにしてください。

    (1)在宅時でも戸締りは厳重にする

     「子どもが帰ってくるから」「寝るときに暑いから」といった理由で在宅時や就寝時の戸締りを怠っていませんか?

     警察庁の統計によると、2020年に発生した在宅時・就寝時の侵入窃盗(忍込み、居空き)の件数は約7000件です。(※3)そのうち7割を超える約5000件がドアや窓などの戸締りがされていない「無締り」の状態でした。窃盗だけでなく、わいせつや暴行目的などの住居侵入も含めれば、無施錠状態での住居侵入はさらに多いでしょう。

     実際に私が検察事務官として勤務しているときも、無施錠のドアや窓から侵入された事件を数多く見ました。

     「マンションの高層階であれば大丈夫」「うちはオートロックだから大丈夫」と考えている人も多いかもしれませんが、同じマンションの住人が侵入してくる可能性もゼロではありません。また、高層階であっても、雨どいやベランダの手すりをつたって侵入された事件もあります。

     在宅時に侵入されると、犯人と鉢合わせる可能性があり非常に危険です。在宅時でも厳重な戸締りを徹底しましょう。

    (2)個人情報の取り扱いに注意する

     家に届いたDMハガキをそのまま捨てたり、SNSに個人情報を載せたりしていませんか?

     個人情報の取り扱いを間違えると、ストーカー被害などの犯罪に巻き込まれる可能性があり非常に危険です。また、家族構成や会社の場所などから留守時間帯を把握され、侵入窃盗の被害に遭う可能性もあります。

     「まさかゴミ袋を漁るようなことはしないだろう」と思っていても、その常識が通じないのが犯罪者です。常識では考えられないような手段を使って犯罪を実行します。念には念を入れておくことが大切です。

     個人情報が載っている書類はシュレッダーやセキュリティスタンプを利用し、個人情報が分からない状態にしてから捨てるようにしましょう。

     また、近年のSNSの発達により、SNSから個人情報を特定されて犯罪に巻き込まれるケースも増えています。

     例えば、制服姿の写真や動画を投稿すると学校から生活圏内が特定されます。ほかにも、家の外の風景を投稿することで周囲の建物から住所が特定されることもあります。

     仮に、個人情報を画像加工などで塗りつぶしていたとしても、明るさを変更すれば塗りつぶし部分を透かすことができる場合もあります。

     個人情報や個人情報に繋がるようなものはSNSに載せない、SNS社会の現代における重要な防犯対策の一つです。
     

    (3)隙を見せない

     犯罪被害に遭わないためには、隙を見せないことが大切なのは皆さんもご存知でしょう。中でも性犯罪から身を守るには、どのような場面で被害に遭いやすいのかという知識を頭に入れておき、隙を作らない・見せないことが大切です。

     性犯罪というと、強制性交等や強制わいせつ、痴漢などを連想しやすいと思いますが、私が検察事務官として勤務しているときに「思っているよりも多い」と感じたのが「盗撮事案」です。(個人的な感想です。勤務地や担当検察官によって取り扱う犯罪の数や種類は変わります)

     盗撮の被害に遭いやすいのは、エスカレーターや駅構内、商業施設、スーパー、本屋などです。盗撮犯は、スマホや買い物、本の立ち読みに夢中になっている人を狙います。特に、最近はイヤホンを付けたまま行動している人も多く、盗撮されていることに気付かないケースも多いです。

     「エスカレーターに乗っているときは必ず脚を閉じる」「買い物や立ち読み中は背後に気をつける」など隙を見せない・作らない意識を持つことで被害に遭う確率は下がるはずです。

     また「夜道の一人歩きでは定期的に後ろを振り向く」「エレベーターで人と一緒になったときは背中を向けない」「玄関を開ける前に周囲に人がいないか確認する」といった対策も性犯罪から身を守るために有効です。

     日頃から隙を見せない意識を持っておきましょう。 
     

    (4)怪しい・不安なことがあったらすぐに相談する

     怪しいことや不安に思うことがあったらすぐに相談するというのは、防犯における定石です。

     特に、オレオレ詐欺のような特殊詐欺から身を守るには、すぐに相談する意識が重要となります。しかし、このような犯罪では、犯罪者は、被害者が誰かに相談する時間を与えません。「すぐにお金が必要」「すぐに支払わないと裁判になる」などと脅してきます。

     そこで、普段から怪しいことがあれば「必ず一度、家族や警察に相談する」という選択肢を持っておくことが大切です。お金の振り込みなどを急かしてくる犯人にも「一度家族(または警察)に確認します。2~3分で終わるので待っていてください」などと言うのです。

     相談することで詐欺被害を防いだケースは数多くあります。焦っているときほど、第三者に意見を求めましょう。
     

    (5)「自分は大丈夫」と思わない

     最後に、防犯において一番大切な心構えをお伝えします。

     それは「自分は大丈夫」と思わないことです。

     私が防犯について知人と話すと「私はオバさんだから大丈夫」「太っているから狙われない」など、自分は犯罪被害に遭わないと思っている人が多いことに驚きます。

     しかし、さまざまな事件を見てきて「〇〇だから大丈夫」ということは決してないのだと強く感じました。世の中にはさまざまな趣味嗜好がありますし、すべての犯罪者が理由をもって犯罪を犯しているわけではありません。無差別に人を狙った犯罪もあります。

     もし「男だから」「大人だから」「可愛くないから」「オートロックだから」「お金持ちじゃないから」などの理由で、自分は大丈夫と思っているのであれば、考えを改めることを強くおすすめします。

     「もしかしたら犯罪に巻き込まれるかもしれない」という意識を持つことは防犯において非常に大切です。そんな意識を持たなければいけない世の中であることは非常に悲しいですが、自分や大切な人を守るために忘れてはいけない心構えだと思います。

    ■ 犯罪から身を守るためには日頃の意識が大切!

     元検察事務官の筆者がさまざまな事件の捜査を通じて感じた防犯ポイントを5つお伝えしました。

     当然ですが、悪いのは犯罪者です。防犯意識を持っていても、被害に遭う可能性はゼロではありません。

     しかし、犯罪に巻き込まれる可能性を少しでも下げるには、日頃から防犯意識を高めておくことが大切です。ぜひ今回ご紹介した5つのポイントを意識して、自分や大切な人を犯罪被害から守ってください。

     そして、もし怪しいことや不安なこと、困ったことがあればすぐに警察や家族、友人などに相談しましょう。法テラスなどの相談窓口を利用するのもおすすめです。

    (※1)刑法犯総数、参考:警察庁刑事局捜査支援分析管理官「犯罪統計資料 令和3年1~12月分【確定値】
    (※2)自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び交通法令違反を除く
    (※3)住居を対象とした侵入窃盗に限る、参考:警察庁「令和2年の刑法犯に関する統計資料

    (上村舞)

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  • 上村舞Writer

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    福岡県出身。大学卒業後、検察事務官として検察庁で勤務。退職後はフリーランスのWEBライターとして、20年以上続けるバレエや法律、地元・福岡の記事を執筆している。今も週4回レッスンに通い、舞台に立つほどバレエが大好き。

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